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突然出会ったストーリーテラー

あの日 私は花束を抱えていた

友人と遊びに出かけた帰りに
リンドウなどの美しい花束をもらったのだ

帰りのJRで ちょうど空いていた席に座った
地下鉄のように向き合うスタイルの車両だった
すると
向かいに座っていた60代ぐらいのご夫婦が
何やら話を始めた

「この人はね、きっとプロポーズされたんだなぁ
だから 幸せそうに花束を抱えている」

最初は私のことを話しているとは思わなかったけれど
5分ほど座っていると
私に限らず 同じ車両に乗り合わせた人を見て
様々ストーリーを考えて話し合っている様子だった

聞こえるか 聞こえないかの微妙な声の大きさに
私の耳は ダンボになっていった

あいにく1駅で下車したので
ストーリーの続きは聞けずじまい

今日も あのご夫婦は
周りを通る様々な人に ストーリーをつけて
楽しんでいるのだろうか

ちょっぴりセレブな雰囲気のする
サングラスがよく似合うご夫婦
とても 印象的だった

ただ座っていることが 退屈だったのか
ストーリーを作ることが好きなのか
どんな思惑があるのかはわからないけれど
ストーリーと現実は異なるという点は伝えたくなった


使用画材:透明水彩・鉛筆

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