「子どもが子どもらしくいられる」場所を、日本中につくる。 【トーキョーコーヒー】が全国で始動。 教育システム変えるムーブメントに。 ▷▷▷吉田田タカシさんにインタビュー
現行の教育システムのアップデートを目指すプロジェクト、『トーキョーコーヒー』。全国で164の拠点が誕生し、活動を始めています。
発起人である、アトリエe.f.t.代表の吉田田タカシさんに、トーキョーコーヒーを立ち上げた経緯やプロジェクトにかける思いなどを聞きました。
【トーキョーコーヒーとは】
「登校拒否」のアナグラム(文字を入れ替えてつくる言葉遊び)。
学校に行っていない子どもたちは、全国で20万人以上に上ると見られる。そのアクションを受けて、「問題は不登校ではなく”大人の無理解”」という視点から、現行の教育システムをアップデートすることを目指すプロジェクトがトーキョーコーヒー。具体的には、全国の各拠点において『大人が楽しみながら学ぶ』活動を展開する。
内容は畑やダンス、編み物、料理…など拠点ごとに多彩。活動しながら、本質的な教育への考えを対話によって深めていく。
活動に参加する親などに"ついてくる”形で、子どもたちもそこに集まる。子どもたちは安心して自由に過ごす中で、主体性や意欲を育んでいく。
マイノリティの"生きづらさ"を減らしたい
Q.トーキョーコーヒーを立ち上げた背景には、吉田田さんのどういう経験や思想があるのでしょうか。
A.長い間、マイノリティ(社会的少数者)と呼ばれる人たちがどうしたら生きやすくなるか、を考えてきた。
世の中にはいろいろな特徴を持つマイノリティがいるけれど、生きづらさを抱えている場合が多い。そんな彼・彼女たちが個性を消し、”みんなと同じフリ”をして生きるうちに、その人なりの良さが失われていくのをたくさん見てきた。
中には「自分はダメなんだ」と思い込んでしまう人もいる。でも、ダメなのは本人ではなく、多様性を認めない社会の方。そう叫んでも、世間やマイノリティ本人にはなかなか自分の声が届かず、悔しさを感じてきた。
e.f.t.は「僕が行きたかった学校」
21歳の時、「僕が行きたかった学校」をテーマに、アトリエe.f.t.というアートスクールを立ち上げた。
e.f.t.のモットーは「つくるを通して生きるを学ぶ」。「『何かをつくる』ことから、自分らしく自由に生きていく方法を学び取ることができる」、という考え方がベースだ。
それから、「個性や特徴が認められて、安心して学べる」「"正解信仰”を捨てて、自分の答えにたどり着く」ことを大切にしている。
そんな環境の中で、マイノリティの子どもたちも含めて皆、生き生きと学んでいる。
ただ、e.f.t.を運営しながら、なかなか社会が変わらないことに対するもどかしさも感じてきた。
ずっとプライドを持ってやってきたけれど、僕らが関われるのは”たまたまe.f.t.に出会った子どもたち”だけ。
このままずっとe.f.t.だけをやり続けても”点”の動きでしかなく、(多様性が認められる社会へと)全体をひっくり返すことにはならない。
多様な個性が認められ、その子がその子らしくいられる場所を日本中につくるには、どうすればいいか。それをずっと考えていた。
『大人の活動場所に、”偶然"子どもがいる』状況が肝
Q.トーキョーコーヒーは『大人のための活動』ですよね。『子どものため』と打ち出していないのは何故ですか。
A.トーキョーコーヒーのアイデアは、昨秋始めたMITERI(ミテリ)という大人向けの活動をしている時に思いついた。
MITERIは、生駒市の山中にある古民家を敷地ごと、参加者の手で少しずつリノベーションしていく活動。参加者たちは作業に熱中する中で、抱えてきた苦しみを手放して自分を解放したり、『皆でつくる』一体感を感じ取ったりしている。
参加する親についてくる形で、子どもたちもMITERIにやって来るようになった。
子どもにとっては待ち時間のようなものだから、誰からも何も押し付けられることがない。
そのうち、石をひっくり返して虫探しに夢中になったり、焚き火にいろいろなものを放り込んでみたり、携帯ゲームをしたり…と自由に遊び始めた。
大人は自分たちの活動を楽しみながら、子どもたちが大きなケガをしないように、とそれとなく見守っているだけ。
中には日中に学校に行っていない子もいるけれど、「なんで学校に行かないの?」と聞いてくる人はいない。
安心して子どもらしくいられたら、自然に意欲は伸びる
それで、お昼ごはんを皆で食べている風景を眺めていた時に「これだ!」と思った。
『子どものための場所』ではなく、あくまで『大人が遊ぶ・学ぶ場所』であり、互いを尊重していることが分かり合えている空間。
そこに"偶然”子どもがいる、というシチュエーションで、子どもは安心して子どもらしくいられる。
そして子どもが安心して自分らしくいられたら、自己肯定感も意欲も伸びていく。
そういう場を用意すればいいんだ、と気づいた。これなら教育者でなくとも、お母さん・お父さんがスタートできる。
Q.今後の展望を教えてください。
A.全国500か所に、トーキョーコーヒーの拠点をつくるという目標を掲げている。
といっても、単にたくさんの居場所がある、という状態を目指しているわけではない。
世の中の人たちの教育に関する意識をアップデートして、現行の教育システムを変えるムーブメントを起こしたい。
「偏差値が高いこと」や「有名校へ進学すること」が幸せとつながっている、と信じられてきた時代は、もう終わろうとしている。大人は、まずこのことに気づく必要があると思うし、そのきっかけをつくりたい。