「君たちはどう生きるか」感想
おはよう。この記事読んでる暇があったらおまえは今すぐ映画館に行って「君たちはどう生きるか」を見て来い。わかったか?行け
生きるか鳥!
生きるか鳥とは
主にTwitterで散々話題になったあの鳥。事前情報が99.9%制限されたこの映画において表出を許された0.1の鳥である
様々なコラ画像や怪文書が氾濫し、おれも
「ようし!あの奇怪な鳥の正体を確かめに行くぜ!アマゾンの奥地へ…!」
と言うテンションで劇場へ向かった
そして焼かれた。
ピクニック気分で一歩踏み出した途端、待っていたのは宮崎駿からの機銃掃射である。ノルマンディー上陸作戦めいて、無邪気に飛び出した我々を想像もつかない作画枚数の地獄のアニメーションが薙ぎ払った。
完全におれが間違っていた。認識が甘かった。相手はあの宮崎駿なのだと気づいた時にはもうもう遅かった。ハヤオが作画で人間をぶん殴る腕力は1ナノも衰えていなかったのだ。劇場で見てよかった
冒頭5分、サイレンと半鐘で戦時の日本が舞台という事が分かった。母親のいる病院が火事になり、主人公が駆けつくと、それは炎だった。まさしく燃え盛る炎だった、人間の都合など一切意に介さない災害然としたその姿は炎そのものだった。病院が炎となっている。
火垂るの墓のような母親の焼身遺体が映る事や炎に消えゆく陰などの描写は一切ない。だが
「これは助からない。絶対に助からない」
と視聴者に確信させるに余りある強烈な炎の描写は見た者にしかわからない。母親の声も姿も一切映らないが、母親が死んだんだな、と全人類に確信させる作画である。このシーンだけでも1800円払った元は取ったと思う
主人公は父と共に疎開し、新しい母との暮らしが始まる。
そして出たぞ。鳥だ
種類は鷺だ。到着早々主人公を煽る。屋敷の端に立つ絶対に異界的な建物に誘ったり、あげく喋り始める。煽り散らす。
翻って主人公の少年、学校に行くことになったが、親父が「ダットさんで着けてやる!みんな驚くぞ!」と車で敷地内までこれ見よがしに送迎するもんだから当然目をつけられ、ケンカになる。馬鹿だろ親父、絵に描いたような親バカ
そして少年、ケンカ後の帰り道に石を拾い、自分で頭を割って大事にするという捻じ曲がった根性が座っている。
親父が有力者なので大事になるとそりゃ大事になるのだが、そうやって憂さ晴らしするために自分で頭を割るという本当に捻じ曲がった男気をお持ちだった。小物ムーブの為にジョジョみたいな覚悟を見せるとんでもない奴である。お前は小物なのか、大物なのかどっちなんだ。ただ物でない事だけは確かだ
そしてまた少年、あの鳥が人語を話し「母親に合わせてやる」などとほざく怪異的なんかだとわかるや否や「母は死んだ!」と木刀で叩き落としにかかる。頭割った後遺症で熱出した病み上がりにだ。血気盛んにもほどがある。やはりただ物ではない。
そして鳥もタダ物ではない。少年に向かって高速で滑空し、思い切り振りぬかれた(ちょっとは躊躇え少年)木刀を嘴で破砕してもぎ取り噛み砕くという強者ムーブを披露する。
その後、怪異の誘い的ジブリ展開をした後、少年はつわりで寝込む義母を見舞い、ナイフをくすねて鳥を威嚇するのであった。オイオイだんだんと得物が物騒になるなと思っていたらコイツ、ナイフを研いで木や竹を工作し弓矢を作り出した。間違いない、アシタカとサンの子孫だ。殺意が高すぎる
そして矢の羽に例の鳥の羽を使った結果、射た後勝手にぶっ飛び高威力で突き刺さる呪物となった。アシタカ見てるか、お前の子孫も弓矢で人の首とか腕飛ばすかもしれんぞ
ファンタジー
義母がフラフラと例の異界的建物に入っていったようなので殺意MAXアローと住み込みのおばあちゃん一人を携えて、いよいよあからさまにこの世のものではない建造物侵入だ。「罠です坊ちゃん!」「わかってる。行こう」キマってるよコイツ
そこで鳥とのラストバトル。そう、ここでの戦いを最後にこの鳥は「なんだかんだ協力せざるを得ない立場に置かれた不本意な味方」となる
鳥の中身はオッサンだった。ケモナー、ハウス。
そして大オジサマなる概念が現れ主人公たちは異界に落ち、ファンタジーする。ご武運を
ペリカンに襲われたり屈強な女にこき使われたりしながら座礁船タウンみたいなとこに着いた
何か小さくてかわいい奴が現れた
そう、何かちいさくてかわいい奴としか言いようがないコダマ的概念がワラワラと出てきたのである。その名もワラワラ。主人公が夜便所に起きて甲板にある掘っ建て厠で用を足すと月明かりが世界を照らし、世界一神秘的な便所であった。するとなんか小さくてかわいい奴がやって来てカービィめいて空気を吸い込むとぽよぽよと月夜の空へ浮かんでいく。バイバーイってやるのかわいい
するとなんかいっぱい来て同じように空へ昇っていく。サンゴの産卵めいた光景だが、屈強な女が「ああやって生まれに行くんだよ」と説明してくれた。ガチじゃん。何か小さくてかわいい奴ら、現世に降誕する命だった
と思ってたらペリカンがやって来てちいかわを喰い始める。やめて、そんなとこまでちいかわじゃなくていいんだよ。みんな喰われちまう…ってコト!?その時である!火柱を上げ花火が撃ちあがる!それは実際見た目は花火だが、花弁は対空焼夷弾のごとくペリカンを焼き落としていく(ちいかわもちょっと巻き込まれ火だるまになって消える。やめてそうゆうの)
この破道の三十番台みたいなヒサツワザを出した少女は船でどっかへ行った。これでペリカンは当分寄り付かないらしい
その後寝に戻ったが物音がして起きる。撃墜された血まみれのペリカンが甲板の隅に横たわっていた。マジかよちょっと焙って追い返す技じゃなくてガチの対空砲だったんかあの花火、いや~乱世乱世
ペリカンも何かこの地獄で必死に生きてるっぽいままならぬ話をして事切れた。あのサギが来て「母親探さんの?www食われちまってるかもよwww?」とまた少年を煽るが「いい、自分で探す」とスコップ取りに行きながらの岩塩みたいな対応。ペリカンを埋めて弔い、鳥(以後アオサギと呼称)とひと悶着あり、腐女子が喜びそうないがみ合いを屈強な女に「仲良くやれよ」と一笑に付され、ともに義母を探し旅立つ
インコの群れに遭遇。
人を食う。そう、インコは人を料理して喰う。古事記にも書かれている。身の丈160㎝ほどのインコ。包丁や取り皿を用意して人間を食す気満々である。民家に巣食う見張りをアオサギが引きつけて家の中に入るが、中もトッポ並みにインコたっぷりで主人公捕まる。マナ板に案内されたが、まな板が突如発火してペリカン撃墜爆炎魔法少女が顔だけ出現。インコが火を食らって散り散りに逃げていく。おれは永井豪作品を見ているのかもしれない
少女の手を取り爆炎ワープすると少女の自宅に到着。アホほどジャムを塗りたくったバカみたいなパンを食って二人で義母のいるという怪異建造物に向かう。救いの塔めいて異界にも同じ見た目の建造物があるが、中がめっちゃ広い。
そこはインコの支配する狂気の世界だった。いや、インコたちの暮らしぶりは至ってフツーの人間の営みだが、インコがやっているというだけでもう頭おかしい
義母を見つけ助けだそうとするが色々あってダメだった
一方その頃、妻と息子が行方不明になって心配しまくってた親父は異界建築物が怪しいという情報を得てポン刀を携えて異界建造物に向かう。殺意しかねえのかこの一族。
アオサギがもう完全に腐れ縁相棒ポジになって厨房インコを撲殺して少年が助かると、同じく色々あってインコに捕まった少女を助けようと異界建築の最上階を目指す。インコの王様が威風堂々と喋りながら歩いている。インコ・リアリティショックで失禁してる視聴者もいるかもしれない
大オジサマだ。こいつはこの異世界の理を作ったすげー奴だった。
明治だか大正だかに空から降って来た異界物質を改造物で囲み、塔のようにして異界建築を作り行方知れずになっていた主人公の先祖である。「主人公を異界を保つ後継者にしたいけど、まあ本人の意思を尊重するよ」というリベラルな気風の持ち主で、インコで歪み切ってそろそろ自壊しそうな世界を怪異石の積み木で保っている。
インコキングは世界作り直すなら俺等がやりてえよなぁと言った感じで少女を渡してオジに談判するが「後継者居るんでねぇ」って感じだったので少年を始末しようとする。
少年は「世界を作るその積み木だけど悪意含んでるよね」とか「無垢な積み木渡されたけど俺のこの頭の傷は俺の内包する悪意の証明だから奇麗な世界は作れねえ」といった創作全体でも類を見ない壮絶な自意識でもって「わりいけど帰るわ」となり、それを見てブチ切れたインコ大王が癇癪起こして積み木をめちゃくちゃにすると異世界がバルス並みに終わって食人インコはみんなフツーのインコになり現世に帰った。
少年らが帰る時、対空火焔魔法少女が少年の実母だと完全に理解し、別々のドアから異なる時間の現世へ帰還することになる。少年は「戻ったら焼け死ぬ未来だぞ!」と止めたが少女は「あなたを産めるなら上等じゃねえの」と令和一燦然と輝く黄金の意思で母親としての使命を選択し拒否。フェミが聞いたら縮退して中性子になるだろう
大量のインコと共に現世へ帰還した少年、義母、住み込みのおばあちゃんは降り注ぐ鳥の糞と共に親父と再会した。もう顔中糞まみれや
アオサギは少年に「何であっちの事覚えてんだ?まあそのうち忘れちまうだろうがな、あばよ友達」とかもう完璧な相棒オブザ相棒なセリフを残し消えていった。
総括
ハヤオ、アンタやっぱすげえよ
少年、間違いなくアシタカの系譜
アオサギ、お前結局なんなん…ああ、友達か
自作品ジャンルとしてはダークファンタジー
ハヤオが監督したゲド戦記ならこんな感じだったんだろうか
追伸、
この映画には一つだけ失敗がある。平沢進を呼ばなかったことだ。あの世界、あの話に合う音楽は久石譲でも米津玄師でもなく、平沢進だと断言しておく。エンドロールでMOTHER流すべきだった