対魔人アキ

これまでのあらすじ
師匠の言いつけで単身、コオリヤマ中心部におつかいにやってきた対魔人・アキは、幻魔の狩りの標的となっていた!それを知ったアキは人口密集地での戦闘を避ける為、敵を路地裏に誘い込む。しかしそれは、幻魔・ウォータージェットの狡猾な戦略でもあったのだ!

「ドーモ、俺はウォータージェット。あの距離から俺に気付けてたのか?手間は省けたが…対魔士にしちゃあデキルな、エ?」 「どうも、ウォータージェットさん、対魔人・アキです」手が汗ばむ。これ程の緊張は経験が無い。対魔人としての、初めての実戦!

「あ?お前もしかして男か?マジかよ、そのツラでか?こりゃあ殺す前に付いてるかどうか調べなきゃなあ」軽口を言いながらも眼は油断なき狩人の眼。常人であれば見ただけで腰を抜かし失禁するだろう。「スゥ…ハァ……」師匠に教わった林の呼吸がニューロンとボディを冷却し始める。

「幻魔、退散!」「はいはい」最初の一撃が勝負。対魔人といえど人間だ、幻魔のように銃弾を目視で避ける瞬発力も無ければ、鉄棒を蝶結びにするパワーもない、幻魔と殴り合えるタフネスも。さりとて勝機は有り。最初の一撃、これだ

「イヤーッ!」斬魔刀を引き抜きウォータージェットに斬りかかる!イアイ!「遅い」躱す。当前だ、「じゃあな、イヤーッ!」「グワーッ!」ウォータージェットの裏拳が胸部にめり込む!南無阿弥陀仏!肋骨はカワラ割めいて内側に押砕け両肺は破裂!ショックで心筋は硬直し…

アワレ若き対魔人は物言わぬ血袋となる。そう、この耐型殺陣(カラテ)ボディースーツが無ければ今頃は、「何ッ!!?グワーッ!」光る斬魔刀が邪悪な幻魔を捉えた!左顔面から臍の右側にかけて血潮が弾ける!やったか!すべてが1秒に満たない間の出来事、勝負はついた、半分は…

「グワ…ヌゥー!」ウォータージェットはよろめき、三歩さがった。「グ、ゲボー!」アキは裏拳を食らった衝撃で六歩ほど後方に押し飛ばされていた。「イ…ヤーッ!」再び斬りかかるアキ!(二度目はスーツに守られていない首から上を狙ってくる、ボクがそう読んでいる事がわかっていたとしてもだ!)

「調子づくなよ!イヤーッ!」ウォータージェットの反撃!アキの斬撃に対して倍以上の速度で一歩半を踏み込んでのチョップ突き!狙いは眉間だ!アキの斬撃の間合いから僅かに外れるにに対してウォータージェットの突きの間合いは直線上から外れることはない完璧なカウンター!幻魔瞬発力の成せる技か!

「グワッ!?」刹那、ウォータージェットの右手が斬魔刀の柄頭で弾かれた。斬撃は…ブラフ!

ボクには奥の手があった、全部で3つ。幻魔の型殺陣(カラテ)衝撃を90%緩衝する師匠秘蔵のボディスーツ、束の間だが幻魔のニューロンにバグを与える数少ない本物の斬魔刀、全身の細胞に均等に負荷をかけ瞬間的に幻魔に匹敵するパワーを出力する奥義…

「イイィヤアアアアーーーーッ!!」「バカナ、グワーーーーーーッ!!」フルフォースだ!

「ハァーッハァーッ」対魔人としての最初の戦いは、勝利。しかしそんなことはどうでもいい、ウォータージェットはただのチンピラにすぎない。街にはじゃあくな幻魔組織に属した、手練れの幻魔が潜んでいる「おつかいは…諦めよう…センセイ…怒るかな」

今回はビギナーズラック。あのウォータージェットにも奥の手はあった、幻魔特有の超能力、実だ。彼の水=実は狭所で最もその効果を発揮するが、アキは師匠の教えに倣いその隙を与えなかった。

自分の命が一番大事、師匠の言葉だ。ボクは夕暮れの街を走る。寒気がするほどの空腹に、持っていたHRタブレットを全て口に入れた。「もっと、強くならないと」ボクは駆け出しの対魔人、幻魔の本当の恐ろしさを僕はまだ知らない。


                      つづく

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