【イワキ、オバマ埠頭倉庫:ブルーセイバー】
「いやあ!やめてぇ!」暗がりの倉庫に灯り、悲鳴、下卑た笑い声。「アッハハァ!効いたかァ?気持ちいいかァ?オイ!顔映せ!顔!アッハハァ!」男は二人がかりで制服少女を抑え込み、おぞましい行為に及んでいた。埠頭の夜は無法地帯。このような行為を咎める者も、止める者も、知る物もなし。ただ凶行は成される。
「アッハハァ!オイ!気持ちいいか?シャブキマッたろ?俺は気持ちいい!すっげ気持ちいい!」「ギャハハ!トジマ!ゲスい!」「いやあああ!」「ウルッセーゾ!顔上げろ!」「ンアーッ!」
トジマがファックし、相棒のクメジは少女の両腕をひざで押さえつけ、動画を撮っている。恐怖と屈辱と絶望に彩られた少女の顔は無慈悲なるスマッホン端末に録画され続ける。非道なる凌辱記録、殴られ腫れあがった少女の顔、あられもない体、その脇に放り込まれた生首……
「エ」それは見張り役モジキタの首であった。まるで自分が死んだことに気付かぬ間の抜けた顔で、モジキタはトジマを見た後、その後ろに立つ影を見、その瞳孔は広がっていった。
「ア」その様をトジマは落下しながら見ていた。顔の右側に床が張り付いている。何時の間に横になった?急に顔が寒くなってきた、「(クメジ)」声は出ない。切断面から流れ出る余命と共に視界が暗くなってゆく。
トジマは恐怖のあまり泡を吹き始める少女を見た後、少女の視線の先、主を失いゆっくりと傾き始める己の胴体、その背後に立つ青年の影を見、こと切れた。
影の青年は青く薄輝くカタナをもう2回振るうと、血振りを行い、電動開閉式鞘に納刀した。混乱と恐怖の顔がもう二つ、コンテナの隅へ転がって行く、無慈悲なるスマッホン端末がその様を録画し続けた、非道なる殺戮記録。ただ凶行は成される。
「おい、ブルーセイバーさん」倉庫の入り口からスーツの男達が剣呑な面持ちで入ってくる。「犬が4匹、盛っていただけです」ブルーセイバーはオレンジ色のアスリートサングラスを直し男たちに向き直る。「余計なことしやがって!皆殺しか!?バカ!」「なんだと?」「追い払えゃいいんだよ!クソッタレ!バカ!殺人現場になっちまったら取引にゃ使えねえじゃねえか!てめえがそのクソ片付けてモップ掛けすんのか?用心棒であるお前が!」
死体を指さしヤクザはまくし立てた。「なら、場所を変えればいいだろう」「先方にこれ以上手間かけさせらんねんだよ!ナーッ!」「なら、ここでやれ」「ザッケンナコラーッ!ナメッテラドッゾオラーッ!!」怒髪天を衝くが、ヤクザは暴力制裁をこらえた。不可能だからだ。
「ドースンスカ!?」「ヤバクネッスカイ!?」「ダラッシェーッ!!今考えとんじゃ!クソが、とりあえずクルルァ戻んぞ!お前、連絡せい」死体を残し、男たちは去ってゆく
「オウ、ブルーセイバーさん。ハケンのエージェントっつのはみんなお前みたくボンクラか?高い金払うて、エ?クレーム入れさしてもらうけんの」「好きにしろ。不満ならケチらずに☆5評価の奴を買うがいい」「クリムゾンブレードさんの弟子ゆうからお前買うたんじゃ!!クソボンクラ!なんじゃその態度。クライアントじゃぞ俺は!」「ア、アニキ!先方から…」「オウ、かせ」「い、切れちまいやして」「ナンデ?」「お世話になりました、サヨナラ、いうて…」。それを聞いたアニキ分は放心し、やがて震え始めた
「ブルーセイバー」アニキ分は淡々とチャカを抜いた!照準は当然、ブルーセイバーの眉間!!「イアッ!」青い閃光が走った!引き金を引く指示が指に伝達する前に、アニキ分の腕が椿めいてボトリ!「グワーッ!」「アニキ…!?テメーッ!!」「オドレナニサラシトッジャーッ!!」チャカを引き抜く!「イアッ!」再び短い型殺陣シャウトとともに閃光が走ると、シャテイ・ヤクザの首が椿めいてボトリ!殺伐!
「よ、よくも若ぇのを!!」「クライアントだからと言って、やって良いことと悪いことがある。」「オドレブチコロ…グワーッ!」峰打ち!「事務所までは送ってやる。契約通りにな」
ブルーセイバーは黒塗りの高級車に哀れなアニキ・ヤクザを放り込むと、容赦なく発進した。テールライトが見えなくなる頃。オバマ埠頭はいつもの重苦しい静けさを取り戻した。夜が明ければ一段と騒がしくなるだろう。それでも今は丑三つ時
埠頭の夜は無法地帯。このような行為を咎める者も、止める者も、知る物もなし。ただ凶行は成される。