対魔人・アキ ◆型殺陣orトリート!ハロウィン仮装幻魔を討て!◆ 3
「わあ、やっぱり混んでるね」「ここでカウントダウンするんだ、当然だろ?」「日付が変わるまで外にいるのはじめて!」「オレも!」10月31日のウネメストリートは前代未聞の活気に満ち溢れていた。
SNSで拡散したハロウィン仮装行列の呼びかけは、22時現在で7000人もの人々を集結させるに至った。受験や仕事のストレスを発散したい者、インスタグラムで閲覧数や良いを増やしたい者、或いはそれらの浮かれた人々を狙い違法性交や違法小遣い稼ぎを狙う者。様々。そしてそれを取り締まる者
この事態を察知していたコリヤマ市警は555名の警官を動員し警戒に当たった。スリ、カツアゲ、チカン・レイパーから酔っ払いまで。仮装行列が始まってからの逮捕者は38人に上り、中には違法ドラッグの密売人も居た。
「二人もですか?売人が二人も捕まったんですか?」「奴らはゴキブリと同じだ、一匹見たら十匹はいる」「はぁー。」仮装行列を見やる警官二人、先ほどまでは四人だったが、目の前で起こった喧嘩の仲裁に入ったのちに男性一人を公務執行妨害で逮捕した為、連行するに二人の人員が割かれた。
「シダ、応援が来たら路地裏を見て来よう」「ハイ。でももう少し人手が欲しかったですねー」「仕方ないよ、最初の見立てが1000人集まるかどうかだったろ。土壇場でよく集めた方じゃないかな?」「ソウデスネー」「その顔ヤメロ。いやな仕事だが嫌々やるもんじゃない」「アッはい」「12時までの辛抱だ」
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「少し人減ってきた?」「帰ったんじゃない?次逃すと終電だし」「モッタイナイよな、せっかく来たのに」「でも帰りたい感じはするネ、みんなどうやって帰るの?」ミクが何気なしに問うた。「親が迎えに来るからダイジョブ」と答えたのが一人だけ・・・・「他は?」「考えてない」シヅキが答える
「おまえ地元じゃないだろ?ダイジョブ?」「歩って帰るさ、お金も持ってきたしタクシーにも乗れる」「警察に送ってもらえばいいんじゃない?未成年は保護されるから、そっちの方が実際安いかも!」「ワラ!」「それだ!」「送ってもらおう!」
終電も近づき人は減ったが、熱気は増していた。カウントダウンに向けて。
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「テロを中止に?」「はい」ウネメストリートに面したランドマーク、オオメダマビル。その二階に位置する大フロアに今、緊張が走る・・・・
フロアに置かれたソファーを挟み向かい合う影二つ、一人はハオリめいた濃緑色チェックのロングコートを着た幻魔、ジャックオランタン。対するは藤色の耐型殺陣ボディスーツを身にまとう長髪の少年、対魔人・アキ「このテロを失敗したことにしてほしい」「・・・・それで?そうすることでワタシにはどの様なメリットとデメリットがあるのです?」
交渉がはじまった。思いのほか会話のラリーに応じるジャックオランタンに、油断なく言葉を選ぶ。アキが考える戦術プランAはこうだ、アキが幻魔との話し合いでの解決を図る。もし解決するならばそれでよし、だが主目的はそこではない。アキはいわば囮、会話で注意をひきつけ隙を見出す。その瞬間、レオがアンブッシュ(不意打ち)をかけ致命傷を与えるというものだ。
これはレオとアキ、二人の折衷案だが・・・・((ジャックオランタン、ヤツの心根が読めない・・・・だが、おそらく、諦めてはくれまい))元よりそれをさせるだけの交渉材料などはなから持ち合わせていないのだ。故にアキは本心のみを話すことに徹する
「貴男に殺されるはずだった大勢の人が死なずに済みます。」「アー、アキさん、残念だがワタシはそれをメリットとできる倫理観を持っていません、ほかには?」「おれと戦わずに済みます、おれは転生幻魔と渡り合えると自負しています。戦えば貴男は痛い目に合う」「アー、確かに面倒なイクサになりそう・・・・ですがそのデメリットは別の方法で補填できる。」
「アナタを半殺しにした後、辱めるという個人的なメリットがありますから」時刻は11時を回った、仮装行列のピークは過ぎ、11時30分発の終電に向け帰路に就く人々もいる。もうそろそろ限界だ。いつ一方的に会話を切られてもおかしくない、アンブッシュの前に事を起こされては本末転倒。だがそれは、レオもわかっている!アキは拳を握った
「おれの要求に応じることで、正直貴男にはデメリットしかない。ハケン・エージェントとしての評価も下がるし給料も出ないかも・・・・」「それで?」「それでも、やめてくれとお願いしたい!」アキは己の根源を吐き出した。幻魔と対するうえで、礼節よりも大切なこと・・・・「ぼくの両親は8年前の幻魔の災禍で死んだ!だから、もう幻魔によって悲しむ人を見たくない!」「気の毒に、さぞ憎かろう」
ジャックオランタンの湛えていた、不自然なほどの丁寧さが薄れてゆく・・・・そして幻魔は苛立ちとも、愉悦ともつかぬ表情で、アキに問うた「幻魔に、何を、期待するかね?」
「貴男の、良心が見たい」「いいエゴだ小僧ッ!!」フロア全体が震える!!そして!!
「ウオリャァァァァァァァァァァァッ!!!」BAGOOOOOOOOOHHM!!通り沿いの大ガラスを貫通し飛び込んだ二つ尾の弾丸は、後を追う衝撃波に10馬身差をつけ発火しながら、ジャックオランタンの正中線に蹴り込んだ!!「グワーーーッ!!」PAGGRRAAAAAAAAM!!続くシンカンセンめいて去来した衝撃波はフロア内のソファや調度品、案内標識などを轢き飛ばし、天も地もなく荒れ狂った!!イセワン!!
オオメダマビルの1階から8階までのガラスは全て砕け散り、周囲の建物のガラスも軒並み砕け散った!「ウワアアアアアアアア!」パニックの大衆!何名かは鼓膜も破裂している!南無阿弥陀仏!仮装行列は一転、アビ・インフェルノ地獄と化した!
なんたることか、これがレオのアンブッシュなのか!読者にはお伝えせねばなるまい、これは古代ローマ時代に魔界より伝わったとされる幻魔武術の一つ冥府魔道拳その奥義、
レール・ガン・キックだ!!
・・・つづく