夕焼け声
昨日、とある音声配信者さんと収録をした。沢山話をしたが、その中で私は、その方の日々の投稿を見聞きして思っていた印象を口にした。
「なんだか夕焼けみたいです」
するとその方は困ったように言った。
「どこがですか?」
収録を終え、そんなに困惑するかな?と思い、その方の過去の投稿をさらってみたら、確かに夕焼け的要素は見当たらなかった。どうしてそう思ったのか、自分でも不思議だった。そしてしばらくして、ふと気付いた。
声だ。
どこか懐かしく、切なく、それがなんだか夕焼けみたいなのだ。
同じような声の人がいるなと思った。あの新作の落語家さんだ。
落語家さんにしては粗い声の持ち主で、愛想もない感じだが、私はいつも笑わせてもらっていた。ところがある日、その方の落語を聴いて泣いてしまった。それは両親との思い出を描写した話。
お母さんの作るホットケーキ
家族で歩くスーパーの駐車場
夕焼けの帰り道
落語会が終わったのも夕方だった。電車に乗って席に着くと、おばあちゃんと過ごした日を思い出した。
お豆腐の入ったカレー
日曜の夕方に見る笑点
やわらかな笑い声
涙がこぼれないように、ゆっくりそっと瞼を閉じた。失礼ながらあの落語家さんに泣かされるとは思いもしなかった。なんてことない普通の一日を、ただただ淡々と語っていた落語家さん。でももしかしたらそれは、照れかなにかのせいで、ほんとはきっと、あったかい人に違いない。
そういえば、あの配信者さんが書くお話、夕焼けは出てこなかったかもしれないけれど、お母さんが作るお弁当の話があったっけ。