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#538 熱燗の魅力
熱燗の歴史は古く、平安時代までさかのぼります。当時の日本酒は現在のように清酒ではなく濁り酒が主流でしたが、寒い季節にはこれを温めて飲む習慣が生まれました。温めることでアルコールの刺激が和らぎ、飲みやすくなることが理由の一つです。また、熱燗の普及は、江戸時代以降にちろりや徳利などの酒器が普及したことにより、庶民の間でも手軽に楽しめるようになりました。徳利が普及したことで、日本酒を簡単に温められるようになったことから、一年を通して燗酒が親しまれるようになりました。
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さらに、熱燗はその場の雰囲気を和らげる役割も果たしていたため、居酒屋や宴会での振る舞い酒として、心を通わせる手段としても用いられていたのです。このような背景から、熱燗は単なる飲み物を超えて、日本人の文化や生活に深く根付いた存在となりました。
また、昔は現代のように暖房設備も整っていない時代でした。そのため、寒い冬に体を温める手段としても熱燗は重宝されていました。外から帰った人々が家族や仲間とともに熱燗を楽しむ姿は、まさに当時の暮らしの一部だったのです。
#熱燗の歴史
熱燗とは何か
熱燗とは、日本酒を適度に温めたものです。湯気とともに立ち上る香りは、まるで酒そのものが息を吹き返したよう。冷酒とは異なる奥深い味わいが広がり、心も体もじんわりと温めてくれます。一口含むたびに「ほっ」と息をつく、そんなひとときが楽しめます。
では、なぜ熱燗はこんなに人を引きつけるのでしょうか?
1.暖かさがもたらす安らぎ
冬の寒さの中で飲む熱燗の暖かさは、心身ともに安らぎを与えてくれます。暖かい飲み物はどこか特別で、日本酒を熱燗にすることでその効果がさらに増幅されます。また、飲むことで内側からじんわりと温まる感覚は、何ものにも代えがたい癒やしです。
2.味わいの変化
熱燗にすると日本酒の味わいが大きく変化します。冷やして飲むと爽やかさが際立つお酒でも、温めることで甘みや旨味が引き出され、より深みのある味わいに変わります。例えば、辛口の酒が驚くほどまろやかになったり、米の香ばしい香りが強調されるなど、温度による変化はまさに発見の連続です。
3.心地よいリラックス感
熱燗は、その適度な温かさによって、リラックスした雰囲気を生み出します。冷酒や常温酒と違い、ゆっくりとしたペースで飲むことが多く、自然と心が落ち着いていきます。このリズムの変化こそが、熱燗が愛される理由の一つなのです。
温泉で飲む日本酒の至福
温泉に浸かりながら飲む日本酒ほど贅沢な瞬間はありません。体が湯で温まり、心がほぐれた状態で味わう日本酒は、まさに格別です。特に熱燗は、温泉の湯気と共鳴するように香り立ち、その柔らかな味わいが一層引き立ちます。
温泉地では地元の酒蔵が醸した日本酒が提供されることも多く、その土地ならではの風味を楽しめるのも魅力のひとつです。湯上がりの爽快感とともに、心地よい酔いを感じる瞬間は、旅先の思い出として心に残るでしょう。
#温泉と日本酒
僕のお気に入りの熱燗
僕が好きな熱燗は八海山の特別本醸造です。新潟の名酒である八海山は、そのキリッとした辛口の味わいが特徴的。冷酒としてももちろん素晴らしいですが、熱燗にすることでまろやかさが増し、まるで別のお酒のように楽しめます。
特に寒い夜、湯気の立つ八海山を一口含むと、体だけでなく心まで温まるような気がします。これぞ、熱燗の醍醐味だと感じる瞬間です。
熱燗を最大限に楽しむためには、お酒の種類や温度設定が重要です。
たとえば、軽めで香りが高い酒は人肌燗(30〜35℃)が適しており、まろやかさと香りを引き立てます。一方で、コクのある純米酒や古酒は熱燗(50℃程度)がその特徴を最大限に発揮します。温度による味の変化を楽しむためにも、湯煎でじっくりと温めるのがおすすめです。
#八海山
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風邪のときの熱燗にはご用心
「風邪のときに熱燗を少々飲むとよい」という話を耳にしたことがある方もいるかもしれません。この説には一理あるものの、飲みすぎには注意が必要です。
熱燗は体を内側から温める効果があるため、寒気を感じる際には一時的にリラックスできることがあります。また、アルコールには血行を促進する作用があり、これが体を温める助けになる場合もあります。しかし、風邪で体が弱っているときにアルコールを摂取すると、脱水症状を引き起こしたり、免疫機能を一時的に低下させるリスクがあります。特に発熱中や喉の痛みがある場合は避けるべきです。
もし熱燗を試したい場合は、少量に留めるのが無難です。そして、何よりも風邪の際には十分な水分補給や栄養のある食事、休養が重要です。熱燗は体調が完全に回復してから、冬の楽しみとして堪能するのが安心です。
#一口くらいがちょうどいい
熱燗と料理のペアリング
熱燗は料理との相性も抜群です。たとえば、甘辛い煮物や、しっかりとした味付けの肉料理と合わせると、料理の旨味を引き立てながら酒自体の味わいも深まります。焼き魚や塩辛のようなシンプルな味付けのおつまみでも、熱燗のふくよかな風味が一層楽しめます。
具体的には、ぶり大根や肉じゃがといった家庭料理とも驚くほど相性が良いです。また、冬の味覚である牡蠣や鍋料理に合わせると、さらに季節感を楽しむことができます。料理の種類によって選ぶ日本酒を変えるのも、熱燗の奥深い魅力を引き出すポイントです。
#料理と味わう
熱燗の作り方のコツ
自宅で熱燗を楽しむなら、湯煎が基本です。お酒を徳利に注ぎ、沸騰しない程度のお湯(60〜70℃)に浸けてゆっくりと温めます。電子レンジで加熱する方法もありますが、温度が急激に上がることで香りや味わいが損なわれる可能性があるため、じっくりと湯煎するのがおすすめです。
温度計を使って、好みの温度(例えば、40℃のぬる燗や50℃の熱燗)を正確に測ることで、自分だけの最高の一杯を作る楽しさが広がります。
#湯煎
結論
熱燗の魅力は、言葉では語り尽くせないほど多くの喜びを秘めています。温かい酒が体に染みわたり、心に安らぎをもたらす。そんな瞬間を味わうために、この冬はぜひ熱燗を試してみてはいかがでしょうか。新たな日本酒の楽しみ方を発見できるかもしれませんよ。
熱燗が温泉や冬の料理とともに生み出す贅沢な時間。それは忙しい日常から解放される、小さな幸せのひとときです。この季節ならではの楽しみを、どうぞ満喫してください。
#寒い夜だから
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![菅野 大輔 (ワインテイスター/食クリエーター:かんの だいすけ)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/88959211/profile_5632b618db8d9e5dbe812e0e447b2932.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)