家とテントと、おじいさん
庭に祖父とおじいさんがいた。
祖父の友人らしく、よくうちに遊びに来ていた。
笑うと銀歯が光るおじいさん。
二人は網の上でお肉を焼いては笑い、煙の中で楽しそうにしているなぁなんて、幼心にぼんやりと思っていた。
前にはテント、後ろには家があって。
日常と非日常の間で、緑にかこまれて皆賑やかにしていた。
テントに入ると秘密基地の様な空間が楽しくて、外に出ても楽しい空気はずっと続いていた。
時々出入りする家の中で煙の匂いがしていることすら、楽しかった。
大人にはバーベキューだったのだろう。
私にはキャンプだった。
あの頃テントの側で強く香った金木犀はバッサリ切られてしまったし、二人はもういない。
庭を見ると思い出す光景。
何か少しでもお役に立てますように。