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Coordinate: お部屋の壁紙を響かせるカラースキーム
1. 壁紙の組み合わせ爆発
新築、リノベーションを問わず「壁紙は最後に決めます」と言われた施主さんや「最後にアクセント壁面だけ決めに来ました」という施主さんも少なくなく、場合によっては《構想》からやり直しとなることもあります。
今回は、なんらかの柄を壁に求める方へも、色や質感のみを求める方へも、そもそも壁面は白ければなんでも良いという方へも \壁紙を響かせる/ 楽しさをお伝えします。
その楽しさを前に、多くの似たような色、似たようなエンボスパターンが各所に点在している壁紙見本帳を手にすることになります。
標準的な上代千円/mクラス(サンゲツ社ではAA級と呼ぶ)の国産ビニル壁紙で、恐らく最も全国で配布される見本帳冊数が多いのがサンゲツ社のリザーブRéSERVE。2024-27年版の壁紙収録点数が795点。
住宅では水回りなどに使う、塩ビフロアタイル2023-26年版見本帳への床材収録点数が434点。これだけで、壁と床の組合せは 795✕434=34万通り。さらに空間を構成する他の様々なアイテムの選択肢をかけ合わせると無限の組み合わせが発生します。
こういった「組合せ爆発」問題をカラースキームが解決します。
2. 構想段階から施工段階まで使える判断基準「壁紙カラースキーム」
デザイン=色✕柄✕質感の分解を考えるとき、その空間で過ごす、ひとりひとりの住まい手や利用者の感情に訴える基準として、色(カラースキーム)が最も汎用的です。センスがある、無いに頼らず、客観的な基準となります。
最初から間取りや住設などの具体的なものを3Dパースで見るとわかりやすいです。しかしながら、そこにある沢山の要素を3次元のどこに配置するか、という条件が増えていくため、構想を進めて判断基準を定める上では難易度が上がります。
間取りが決まる前の早い段階《構想段階》において、柄や質感、立体感からいったん離れ、そこで過ごす方にとって包まれると幸せになるカラースキームを定めると、それがひとつの判断基準となります。
建材最大の色の選択肢があり、かつ室内最大の面積を占めるのが壁紙。壁紙を使えばカラースキームの具体的な材料表現ができ、その仮説検証が可能。得られた判断基準をもって、その後出てくる様々な材料の仕様を決めていくことができるため、生産性が上がり、空間づくりが楽しく、高まっていきます。
3. 壁紙を響かせるカラースキーム
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表紙のカラースキーム図は、左半分のモダンなブルーベース、右半分のクラシックなイエローベース、その中間のタイムレスなグレージュベースに分かれます。ざっくりと左右どちらが好きか、から、細部に入っていきます。
1点1点の壁紙は、主にサンゲツリザーブp.9-18掲載の無地壁紙「デイリーパレット Daily palette」をカラースキーム分類しており、デイリーパレットに欠落していたGNグリーンカラースキームについては、モリスやEDAから採用しました。チップ最下段の英語名は参照した🇬🇧ファロー&ボールペイントの色名です。
デイリーパレット壁紙は全て同じ穏やかなエンボスのまま、46色もの多色展開を実現したシリーズ。エンボス違いに悩むことなく色を探すには他に無い素晴らしいシリーズで、その質感もビニールっぽさを抑えた安心できるものです。
4. 壁紙の尺角サンプルをカラースキーム分類して実体験
WALLPAPERHOUSEではカラースキームを7つに分類。記号として、左半部のブルーベースにLL(ライラック、コンテンポラリー)、BL(ブルー、ピュアグレー)、GY(グレー、リラックス)。中間のGG(グレージュ、タイムレス)。
そして右半分のイエローベースにRD(レッド、ウォーム)、YL(イエロー、ナチュラル)、GN(グリーン、トラディショナル)。同じか近いカラースキームグループ内ほど、壁紙が互いに響き合うことが尺角サンプルを並べると感じられます。
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5. カラースキームは世界地図
海外旅行の行先を探す際には世界地図を広げます。米国か欧州か、アジアか中東かと大雑把に「モレなく」選択肢の広がりを眺めます。色を探す場合は、ヒトが認識できる全ての色を含んだ色相環を網羅した、7つのカラースキームを眺めます。ちなみに色相環は17世紀にニュートンが万有引力や微分積分と並んで考案したもので、新しくはありません。
欧州へ旅するなら、例えばドイツとフランスはどう違うのか、国の文化の違いを「ダブリなく」比較したいでしょう。カラースキームを比較するなら、RDレッドがクラシックでウォームであることに対して、LLライラックならモダンながらアットホームな印象を受ける、といった違いとなります。
6. 壁紙の色における和音と不協和音
・・・古代ギリシア時代や17世紀科学革命から
2千年前の古代ギリシア、アリストテレスの時代から音楽の響きと色や光の響きには関連があると考えられてきました。だから300年前にニュートンがプリズムを使った光の屈折分解から色相環を考案した際にも、音楽の1オクターブにならい「7色」としたのでしょう。
和音が響き、不協和音が響かないように、光に導かれる色にも美しく眼に響くときと、そうでないときがあります。波長の長い赤から緑と、波長の短い青から紫では、それぞれが別々に響いているように感じます。
波長の長い赤を感じる視神経(L錐体)が受け止めるイエローベースの暖色で揃えると、その中で響き合うような印象を受けます。波長が短い青を感じる視神経(S錐体)が受け止めるブルーベースの寒色でも同様なのは、同じ視神経で受け止める近い波長の色が同時に脳に導かれ共に響いて感じるから、と考えても良いのではないでしょうか。
響き合う色たちをカラースキームとしてグループごとにまとめると、無限にある色数を7つのグループにまとめて判断できるようになり、世界に存在する全ての色を「モレなく」並べて「ダブリなく」比較ができようになります。
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上記左「響く例」画像の左側のブルーベース{LLライラック、BLブルー、GYグレー}の色たちの中に、LLライラック寄りの茶色(ひみつきち)を置いても、ブルーベース{LL,BL,GY}グループ全体の中で響き合います。
上記右「響かない例」画像の右側のイエローベース{RDレッド、YLイエロー、GNグリーン}の中へ、先程と同じLLライラックよりの茶色(ひみつきち)を置くと、イエローベース{RD,YL,GN}グループの中で響かず、浮き上がります。
アクセントデザインとしていかに浮き上がる色を採用していくかはデザイナーの付加価値であり、イノベーターやアーリーアダプターの方々がご自身で表現される個性です。そこに至る前段階としてマジョリティ層を含めた万人が簡単に、ベーシックに響くカラースキームを選定できることは壁紙の価値、生活の価値を高めていく礎をつくります。
7. 壁紙とともに床材やドア面材を響かせる
最後にアイテムを増やし、塩ビフロアタイルとクッションフロアHOMEFLOOR、Panasonic ベリティスのフローリングとドア面材をカラースキーム分類した例をご覧ください。互いに同じ/近いカラースキームで、床とドアと壁紙を選ぶと、セミオートマティックにざっくりと響き合う空間を構成することができます。
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構想段階でカラースキーム基準を仮説として、机の上で尺角サンプルを並び替えて検証する作業。アイテムが増えてきても、7つのカラースキームを行き来しながら、ここだ、という組み合わせ見つけ出す作業は簡単でコストもかかりません。「組合せ爆発」からも解放されて楽しいものとなります。
【ご案内】WALLPAPERHOUSE(ウォールペーパーハウス)は、施主さんから設計・工務店さん、ICさん、内装工事店さん、通りがかりの方まで皆様にご利用いただけるショールームです。構想段階から施工直前まで《壁紙キュレーター》が適切な選択肢を用意することで壁紙やペイントの選定ガイドを行います。
【四国4県各店の所在地・営業日など】
【WALLPAPERHOUSEの使い方】ウォールペーパーハウスでの品番決定後は、内装工事店さん経由の卸売りが多く、状況に応じて小売価格による施主支給もあります。設計・工務店さん向けの勉強会も都度開催しています。