故障の連絡をしたところ、メーカーの対応が「神」だった!
最近、アマゾンでBluetoothイヤホンを初めて購入した。(写真はイメージ。実際に購入した製品とは異なる。)
念願のワイヤレス・イヤホン・デビューを果たし、快適なオーディオライフを満喫していた矢先、なぜか充電ケースを通じた充電ができなくなった。おそらく故障だろう。仕方なくメーカーに連絡して交換を依頼することにした。
<自分が送信したメール>
このメールを送信した直後、すぐに返信がきた。これは好印象だ。きちんとしたメーカーで良かった。しかもメールの文面が秀逸すぎる。こんな神対応は初めてだ。これは多くの人にぜひ参考にしてもらうべきだと思い、この記事を書くことにした。
<メーカーからの返信1>
【神対応1】「このたびはご連絡をいただき」とか「ご迷惑をおかけして」などの社交辞令は一切なく、単刀直入に本題に切り込む神対応!
【神対応2】症状を詳しく確認したり、使用方法に誤りがないかなど、客を疑う素振りは一切無く、いきなり新品を送る神対応!
【神対応3】普通なら「2、3日でお届けできる見込みです」と書くところだが、あえて「2-3日のお届け予定」という短縮形の言い回しを使う神対応!
【神対応4】普通なら「不具合品につきましては、恐れ入りますがお客様のほうで処分をお願いいたします」と書くところだが「自己処理してください」という上から目線の神対応!
【神対応5】普通なら「不具合品につきましては返品は不要です」と書くところだが、「返品をご遠慮ください」と、遠まわしに拒否する言い方を使う神対応!
【神対応6】普通なら、返品が不要であることを伝えた上で処分方法に言及するところだが、あえて倒置法を用いることにより、返品不要であることを強く印象付ける神対応!
【神対応7】普通なら「以上、どうぞよろしくお願いいたします」で本文を結び、会社名や部署名や担当者名、連絡先などで構成される署名を記載するところだが、それら一切を省き、「お願いします」という渾身のひと言に思いを凝縮する神対応!
いや凄い!たった5行のメールをこれほど何度も読み返したのは生まれて初めてだ。たった5行のメールにこれほど感心し感動したのも生まれて初めてだ。これからのIT社会におけるコミュニケーションとはこうあるべきなのではないか。きっとこのメーカーは「メールは5行以内で完結させる」という「5行ルール」が徹底されている最先端企業に違いないと確信した。そうであれば、こちらからも短文で返事をしなければ失礼に当たる。早々に次のメールを送信した。
<自分からの返信1>
冒頭に「ご担当者様」と記載したが、これを削除すべきかどうか非常に迷った。先方の手本を見る限り、そのようなものは間違いなく不要である。しかも、つい従来のクセで「いただけた」とか「よろしいので」などという回りくどい言い回しも使ってしまった。これでは、相手の最先端企業に対して失礼に当たる可能性が高い。先方の作法に従えば、次のように書くべきだった。
「新品の発送ありがとうございます。不具合品は返品しなくていいですか?」
実にシンプルだ。しかし、自分には長年の習慣が深く染み付いており、最先端企業の作法をすぐ取り入れるのにはもう少し時間が必要だ。そんな感慨にふけっていると、またすぐに返信が来た。
<メーカーからの返信2>
凄い!やはり神だ。
【神対応8】今度は2行だ。一切の無駄を省いた完璧なメールだ。
【神対応9】こちらからの問いかけ(本当に返品不要かどうか)には触れず、なにはさておき注文番号をダブルチェックすることで、やり取りの完全性を担保しようとする姿勢が素晴らしい。この徹底振りから推察するに、日頃から業務品質の向上を徹底している優良企業であることに、もはや疑いの余地はない。
【神対応10】このメールの目的(注文番号の再確認)だけを考えると、「注文番号はXXX-XXXX-XXXXで間違いないですか?」の1行で済むはずだ。しかし、あえて過大なコストをかけて2行のメールを送信してきたところに、注文番号の確認に対する担当者の強い使命感がにじみ出ている。そうであれば、こちらからも真摯に返事をしなければ失礼に当たる。次のメールを送信した。
<自分からの返信2>
今度こそ勇気を振り絞って冒頭の「ご担当者様」は省略した。短期間に自分が成長したことを自覚した瞬間だ。反面、2行目の「ご確認お願いします」を省略できないあたりはまだまだ未熟だ。深く反省している。ただし、今回は先方の熱い使命感に適切に応えるべく、Amazonのサイトで注文履歴のスクリーンショットを撮って貼り付けた。こちらの精一杯の誠意が伝わるに違いない。そんな達成感に酔っていると、またすぐに返信が来た。
<メーカーからの返信3>
【神対応11】本文が4行もあるではないか!この企業にとっては超・高コストなメールである。「了解しました」「ありがとうございました」「お願いします」という、この期に及んで過剰とも思える丁寧な文面を送ってくるあたり、礼節をわきまえた超優良企業がゆえの神対応と言わざるをえない。
【神対応12】冒頭の「了解しました」が、何に対する了解なのかは明記されていない。しかし、こちらから送信したメールをすべて読み返せば、その対象は明らかである。そう、注文番号についてだ。すべてのやり取りを確実に踏まえた上での論理的かつ無駄のないメール。まさに、最先端かつ優良な企業としてのゆるぎない自信と自覚の現れである。
【神対応13】最も注目すべきは3行目である。これは「自分からの返信1」で問いかけたことに対する返答であるが、こうして少しだけタイミングをずらして回答するテクニックこそ、質問者をギリギリまで焦らした上で一気に安心感を与える高等テクニックである。心理学にも相当に造詣が深いことの証しである。おそらく恋愛の駆け引きにも強い企業であるに違いない。
【神対応14】3行目の文末を見逃すことはできない。今回のやり取りで初めて「!」エクスクラメーション(通称ビックリマーク)が登場した。これまで徹底してメールの簡潔さを重要視してきた企業が、ここまで強調する姿勢に、相当の覚悟と決意を感じずにはいられない。「返品いただかなくて構いません」や「返品の必要はありません」ではなく「返品しないでください!」という強い文言である。注意や禁止の表現である。その上下では「了解しました」「ありがとうございました」「お願いします」という優しく穏やかな表現を用いながら、突然「しないでください!」という厳しい表現を織り交ぜるあたり、コミュニケーションにおける「アメとムチ」や「ツンデレ」の手法にも熟達していることが伺える。そのお陰で、こちらはもうメロメロである。
以上、たった数回のメールのやり取りで、気がつくとすっかりこのメーカーに魅了されてしまったではないか。商品を不良品扱いしたことを恥ずかしく思う気持ちさえ沸いている。これはもしや最新の企業プロモーション手法なのかもしれない。非常に多くのことを学ばせてもらったので、最後にお礼のメールを送ることにした。
<自分からの返信3>
今回は冒頭の「ご担当者様」を自然に省略できた。1行目で返品不要を理解した旨を記載し、2行目で処分について記載し、3行目で最もシンプルな礼を記載した。これほど無駄のないメールを自分は今まで書いたことがない。こんな短期間でこれほどまでに成長を自覚した経験もない。
その後、メーカーからの返信は来ていない。しかし、すでに我々は心で通じ合っているのだ。何の問題もない。究極のユーザーサポートというのはそういうことなのだ。(完)
【ご注意】 善良なメーカーや販売店に対し、故障や不良品と偽って返品や交換を求める行為は絶対にやめましょう!