ヨルシカ「盗作」全曲レビュー①
7/29にリリースされたヨルシカのアルバム「盗作」について、キャンペーンに合わせて全曲感想を書いていきます!
*初回限定盤の小説は読んでいません。音源だけ聴いた立場からの感想になります。
*ですので背景の物語については、概要把握してる程度です。
まずアルバム全体を通して
n-bunaさんとsuisさんのお二人が、ずっと前のラジオ(?)でチラッと言及されていたこととか、発売前の試し聴き、クロスフェードなんかで判明していたのは、今回のアルバムはこれまでのヨルシカと比べて、ダーティな雰囲気に仕上がっているということ。このアルバムの大きな特徴でもあると思います。
果たして実際に通しで聴いてみると・・・初めの方は濁った空気感だったのが、後半へいくにつれてウェイトが軽くなっていくというか、どんどん憑き物が落ちていってる感じがしました。全編通してシリアスではないんですね(考えてみれば当然か)。
具体的には、『レプリカント』でヨルシカの通常運転・爽やか成分が足されます。その一曲前の『青年期、空き巣』で「レコードの片面はここで終わり」的な英語の音声があったので、やはりここが一つ区切れになっているみたいです(多分)。それから『思想犯』『逃亡』の間も曲調の変わり目という感じでした。『逃亡』以降はスローテンポで歌詞も綺麗になっていってます。
そういう移り変わりのようなものは感じていて、自分の中ではこういう解釈でした。つまり、
「このアルバムは曲順とは逆の時間の流れ方をしている。花に亡霊みたいなキレイな幼少期を過ごした人間が、盗作するようになってどんどんやさぐれていって音楽泥棒の自白に至る。現在の盗作男さんはやるせない思いで苦しんでいる」
と。そんなわけで、初めから最後まで通しで聴く度、「花に亡霊やっぱ良いよな~良い終わり方だ至上」という思いに浸っていたら「あぁでも音楽泥棒さん今は汚れちまってんだよなあ」みたいな切なさに襲われていたわけです。
そしたら、特設サイトのインタビューでn-bunaさんが
〝前半は勢いで書かれている曲たちが、後半になるにつれて理性的なものが見えるというか、冷静な視点の自分が出てくるようにしたくて。最終的には男の中の本当に書きたかったものだけが残る。それが「花に亡霊」という曲につながるんです。〟
と仰っていて、つまり、自分の解釈とは逆でした。
「盗作男、書きたいものを書けるようになってんじゃん!!」
「そうですよね、やっぱその方が良いっすよね、あざますっ!」みたいな転換がありました。それ以来、通しで聴いた後も安心して爽やかな余韻に浸れるようになりました。ハッピーな尾っぽの引き方をすることができるようになりました。「これが苦しみを経て生み出された、盗作男の本来書きたかったものだ!美しいではないか!」と。
なんかテレフォンショッピングCMの体験談じみた着地になりましたが、全体を通しての感想で強く印象に残っているのはこんな感じです!