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“二重否定よ、(下品よ)ね?””そう!(下品!)”_”Born Yesterday”(1950)
邦題は「ボーン・イエスタデイ」。記憶を喪失したCIAのトップ・エージェントの活躍を描くシリーズの次回作じゃないよ。 当然、マット・デイモンの出番もないよ。
『マイ・フェア・レディ』の名匠(←ここ重要)ジョージ・キューカー監督作品。要は「ピグマリオン」をスクリューボール・コメディにしたもの。
億万長者ハリーの愛人ビリーは、美人でスタイルも抜群だが世間のことはまるで知らない無邪気な女性。ハリーは彼女に最低限の教養をつけさせようと、ジャーナリストのポールを家庭教師として雇う。ところがポールとビリーが次第に親密になってしまい・・・。
スタッフ
監督:ジョージ・キューカー
製作:S.シルヴァン・サイモン
戯曲:ガーソン・ケニン
脚色:アルバート・マンハイマー
キャスト
ビリー:ジュディ・ホリデイ
ポール:ウィリアム・ホールデン
ハリー:ブロデリック・クロフォー
結論から言ってしまうと、教育を受け自分の意志を持つようになったビリーは、デブった加齢臭するおっさんハリーの思うままにならなくなり、黒縁メガネでイケメンのポールと手に手を取っておさらばする。
「ピグマリオン」のヒギンズ教授は頭はいいが横暴で、そのため自分の"作品"であるイライザに逃げられてしまう。「マイ・フェア・レディ」は、言わずもがな、くっつく。本作はその中間点、つまりハリーはヒギンズ教授の横暴な面、ポールは教授は知的で繊細な面を負っているのだ。分裂した男。
さて、物語も終盤、横暴なハリーはもうビリーが自分の意のままにならないと知るや暴力を持ってジュディを従わせようとする。当然、手を挙げる男など、さらに軽蔑されるだけ。
そうこうしてるうちにポールがやって来る。愛し合う二人を罵るハリー、それに対するビリーの返しから引用。
Harry Brock: Shut up! You ain't gonna be tellin' nobody nothin' pretty soon!
Billie: DOUBLE NEGATIVE! Right?
Paul: Right.
焦るがあまりハリーが発したのは、初心者でもわかる否定形重ねすぎなヒドイ英語。ビリーが「二重否定、下品!」と笑うのも、当然かな。
ともあれ。
同じジョージ・キューカー監督&ピグマリオンな「マイ・フェア・レディ」を「3時間の長尺と聞くと、どうにも時間が足りない」「キンキン声でがなりたてるヘップバーンの冒頭で、見る気が失せた」「全然歌わないじゃん、退屈!」「レックス・ハリソンの話し方が、腹立つ」と、途中放棄してしまった方には、おすすめ。
マイルドで、ホッコリして、毒っけもあって、テンポが良くて、ハッピーエンドなコメディ・・・だぞ!
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