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いつも無表情のスゴいヤツ。”Seven Chances”(1925)
アメリカ・サイレント映画を代表するコメディアン バスター・キートンの「セブン・チャンス」。今回の彼に待ち受けるのは、諸星あたるばりの災難。
破産寸前の青年実業家ジミー(バスター・キートン)。彼の前に一人の弁護士が現れるが、裁判所からの呼び出し命令かと勘繰り、ずっと避けていた。そして、遂に弁護士から話を聞かされることになったのが、「27歳の誕生日の午後7時までに結婚すれば700万ドルの遺産相続ができる」という話。ちょうどその日が、ジミーの27歳の誕生日だった。
慌てて結婚相手を探すジミー、Seven Chance=7人の花嫁候補に求婚するも
Would you marry me?
とデリカシーもクソもなく。当然振られる、何度も失敗する、それでもめげずに落胆した表情見せず黙々とナンパを続行。要領が悪く生真面目なキートンらしさの、真骨頂。
やがて、ふとしたことから「ジミー、700万ドルの遺産相続」の話が漏れて、新聞を通して事態を知った金の亡者…もとい、花嫁たちが、教会にわらわら寄せてくる。
そんな事態もつゆ知らず、教会にたどり着いたジミー。
前半から後半に入ったことを意味するタイトルカード(字幕)にご注目。
Title Card: By the time Jimmie had reached the church, he had proposed to everything in skirts, including a Scotchman.
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<直訳>ジミーが教会に着くとき迄には、彼はスカートを履いている人なら誰にでも求婚していた、スコットランド人の男性含めて。
つまり、キルトを履いた男性にまで声をかけるほど、見境なくアプセットして路上を行ったり来たりしていたのだ、この男は!
そして、最も個性に欠ける女性にもてなさそうな映画映えしない男が、脚光を浴びるところにキートン・コメディの面白さがある。
つまり、キートンが700人もの金の亡者もとい花嫁たちに追いかけられる。本当に必死に逃げ回るのだ。
逃げる途中にも、行く手を阻むように、さまざまな困難が待ち受ける。すなわち、浅い川に飛び込んででんぐり返りするキートン。崖から木の枝に飛び移るキートン。坂を転げ落ちるキートン。岩石に降られるキートン。
加速、回転、大疾駆。とうてい人間業とは思えない軽快で悲惨で明快なスタントマンの芸の極致を、ご覧あれ。 必死に走っても無表情な(汗一つかかない)キートンのバイタリティに目を見張れ。 最後訪れる、ささやかなハッピーエンドを、お待ちあれ。
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