「マヨネーズだよ!マヨをくれよ!」French Connection 2(1975)
70年代のハリウッドでは珍しい続編もの(あと有名どころでは「猿の惑星」くらいしか思いつかない)である、1975年の映画「フレンチ・コネクション2」より。前作で逃がした麻薬密売組織のボス、シャルニエ(フェルナンド・レイ)を捕えるため、単身、 フランスのマルセイユに乗り込むジミー・ポパイ・ドイルの活躍を描いている。
続編と言っても、ハックマンとシャルニエ役のフェルナンド・レイ、音楽のドン・エリス以外、キャストとスタッフ は一新。監督はウィリアム・フリードキン…ではなく、フランスが堪能である&ヨーロッパロケを数多くこなし仕切りが分かっているジョン・フランケンハイマーが務める。
原作に忠実にリアリズム重視のドキュメントタッチだったフレンチ・コネクションに対して、本作はとかく豪快な活劇だ。そりゃ悪の巣窟真っ只中まで足を運んでウジウジしてちゃいけないよな。
本作ではアメリカ=ハックマンは、フランスにとって、招かれざる客、少なくともよそよそしい存在として描写されるのが印象的だ。当時、シャルル・ド・ゴールの路線を引き継いだジョルジュ・ポンピドゥー政権下のフランスと、ポスト・ニクソンのアメリカの間の、微妙に不和な緊張関係をも反映している、ともいえるか。
見るからにどうも悪徳刑事としか思えなから敬遠されるのか。フランス語もイタリア語も話せない、英語オンリーで外地に乗り込んだ傲慢さが見え隠れするのか。マルセイユの人たちにどこかよそよそしくされるポパイは、孤立無援すれすれ。ハックマンが足を棒にして各所足を運んで行う捜査は大体が空回りして終わり、言葉の壁もあって現地の捜査組織との協働作戦もうまく生きやしない。
それでも、ハックマンもといポパイはタフな男なので、己の身一つで、構わず、戦うのだ。一筋縄ではいかない正義漢として、マルセイユで一大暴れする。
本作のハイライトは、ものがたりも中盤、組織に捕まり麻薬を打たれたボロボロのポパイがリハビリしていく様子がひたすら 描かれる様だろう。
実際に麻薬中毒者をリサーチして演じたハックマンの壮絶な演技は見事。脈絡をまるで感じさせない、過去と現在の分別がつかない、ヤク中らしい支離滅裂な台詞回しでしびれさせてくれる。すなわち、突然ガキの頃観戦したヤンキースの延々とし始めたり、ジャック・ダニエルを飲みたいとせがんだり、出された食事にマヨネーズが足りない!と、まるで子供のように泣き喚いたり。
スクリーンで見るならともかく、ながら見だと、 正直クド過ぎて疲れ来るのだが、ここでためにためたからこそ、終盤からポパイの逆襲、暴れっぷりで、存分に晴 らしてくれるというもの。すなわち、ヤクの製造拠点にガソリンを撒いて火を付けたり、機関銃で敵アジトに殴り込んだり。
船で逃亡を図るシャルニエを、埠頭のほうに向かってポパイが痛々しく見えるほどゼイゼイ言いながら延々走り続けるクライマックスは、本作第二のハイライトだろう。もちろん、最後は、「ちょっと逸れるかもな」という絶妙な距離から、動く標的をみごとに撃ち抜いて「END」だ。
マルセイユの港町、街の名物ケバブサンド、なにより、車好きのフランケンハイマーとあって惜しみなく画面内にちりばめた、同時代のヨーロッパを代表する名車たち:
が、ハリウッド映画でありながら、あたかも、ヨーロッパ映画であるかのようなオシャレな印象を与えてくれる。
結論から言えば、アメリカン・ニューシネマらしい折り目正しさを期待すると辛いかもしれないが、猥雑でお金のかかったユーロクライムとして見れば最高水準の出来の本作。
Disney+において配信されている、「ロッキー・ホラー・ショー」や「ヤング・ゼネレーション」と並んで、数少ない尖った70年代らしい映画。同じく配信されている「クリムゾン・タイド」他と並んで、ジーン・ハックマン爺の大暴れを楽しもう。