【柿沼優志】音楽経験なしからCL出演バンドのアレンジャーになるまで
はじめまして、12期の柿沼優志です!
大学生活もあと少しで終わってしまうと思うと涙がちょちょぎれそうな今日この頃です。
なのでぼくがこの4年間アカペラをしてきて得たことなどを後輩の皆さんに少しでも還元できたらなと思っています。今回は自分自身4年間で得たこととしてかなり大きかったアレンジ面のお話を、経験を交えて時系列に沿って書いていきたいと思います。
1. はじめに
さてさて、まずは4年間のアカペラ生活において、アレンジできるようになって思うメリットとデメリットを簡単に挙げるとするならば、
【メリット】
・自分からバンドを誘いやすい
・新しい1つのコスパがいい趣味になる
・より深くアカペラを知ることができて、自分の能力向上に繋がった
【デメリット】
・他にやるべき事との時間配分やバランスを取るのが難しい
・同時にいくつも抱え込むとすぐキャパる
こんな感じでしょうか。
まぁつまり、アレンジできたらアカペラがもっと楽しくなっていくのは確かだと思いますが、何事も程々がよいですよということでした。
アレンジができるできないに関わらず、そんなことを念頭に置いておくといいかもしれません。
それでは本題に入っていきますが、とても長くなると思うので僕のバックグラウンドについてあんまり興味のない方は編曲編から読んでいただくといいかもしれません!
2. 経験編
○ アレンジを始めたきっかけ
パーカスをしていた初期の頃のぼくは、楽譜に自分のパートなんて無いし、その楽譜自体も自分以外の誰かが作ってくれていたということもあって、楽譜の重要性をまっっっったく理解していませんでした。なんなら楽譜はあって当然のものとして捉えていたように思います。失礼極まりない。
でも1年生の秋以降になるとバンドでやりたい曲の楽譜を作る必要が出てきて、頑張って楽譜をつくって忙しそうな同期を目の当たりにしました。このときに初めて「あっ、大変そうだなぁ〜」と感じました。
そういった少し期間が続いて、自分も何か手伝えることはないか、自分にも楽譜をつくれるのかなぁとか思い始めるようになりました。
○初挑戦
当時の先輩にどうやってアレンジをすればいいのか聞くと、
まずは4声の耳コピとかしてみれば?
と言われました。先輩曰く、コーラスが2つしかなくて比較的聞き取りやすいから、そしてその耳コピをして楽譜に起こすとどうやって構成されているかわかりやすいからという理由らしく、ぼくはピュアなので言われるがままに挑戦してみました。辛うじてミューズスコアの使い方を簡単にではあるけど習得し、耳コピを始めました。
無理でした。
音楽経験のないぼくにとって耳コピなんて敷居の高い話で、1小節打ち込むのに1,2時間かかったこともありましたし、苦労して打ち込んでも半音違うなんてのもザラにありました。
こんなの1曲耳コピするのにどんだけ時間かければいいんや!
楽譜を作る大変さを経験できた反面、耳コピしようとした4声の曲は途中で挫折してしまい、ミューズスコアとは一時的に別れを告げることになりました。
〇 再挑戦
挫折してから長い時間が経ち、再びミューズスコアとご対面したのは2年生から3年生になろうとしていたとき。楽しくアカペラをしたくて、一緒にアカペラしたい人を集めてバンドを作っていた時期でした。しかしメンバーを集めたはいいものの、アレンジできる人がだれもいませんでした。事実上のバンマスだったぼくは、必要にかられて再びアレンジに挑戦することになったのです。ですがこのときは、あくまでただ自分が組みたい人たちと楽しくアカペラをするという目的であり、自分の楽譜でCLを目指すことなんて考えてもいませんでした。
○知識はゼロ、コードを知る
耳コピに挫折したり、コードというものが敷居の高い話だと感じていたぼくでしたが、蓋を開けてみれば【コード=和音の鳴らし方】のことで、Google先生に聞けば曲のどこでどういう和音が鳴っているかは一瞬でわかることだと知ったのでした。文明の利器ですね。
そんなこんなでネットにある通りとりあえずパートごとに一音ずつ割り振っていくとなんかそれっぽいものができました。頑張って耳コピをしていた自分がかわいそうになるほど簡単でした。そして先輩方からもアドバイスを頂きながら、2年生の終わりになんとか初めて一曲をアレンジすることができたのでした。
○ できた自信、成長
アレンジに再挑戦し、意外とこんな自分にでもできるものなんだなぁと正直驚いていました。これがきっかけで今までアレンジに対して抱いていたイメージを一新することができ、積極的な姿勢になれました。1曲完成させたことが自信に繋がり、その後もいろんな曲をアレンジし、1つのアレンジにかかる時間もだいぶ短くなっていき、成長を実感しました。
こうして数ヶ月前までミューズスコアとご無沙汰していたものの、圧倒的な成長を遂げたことに嬉しさや楽しさを感じ、いつの間にか熱中していたのです。ここからぼくのアレンジャーとしての道が始まります。
○ CLを経験
アレンジを再開し、だんだん楽しくなってきた3年生の最初の時期にたまたま先輩からバンドに誘われました。そのバンドで誰がアレンジするかとなった時に、自分が2曲のうち1曲をやると思い切って言うことができたことも、早い成長ができた要素の1つでした。
このバンドを組めたことでより先輩から自分の楽譜に対してコメントを貰える機会が増え、アレンジを直していくたびによくなっていくのを自分でも感じていました。それに加えて練習で先輩から歌ってて楽しいと言われたりしたことも、楽譜を作るモチベーションになっていました。
みなさんもアレンジャーには日ごろから感謝の気持ちを伝えるとお互いとてもいい気分ですよ!
そして演奏などの技術的な部分を始め、様々な面でバンドメンバーに助けられながら、このバンドで初めてCLに出演できたのでした。自分が作った楽譜が多くの人前で歌われること、その演奏をみんなが楽しんで聴いてくれることに喜びや快感、達成感などいろんな感情を覚えました。
○ CLを目指して
3年生でバンドとしてCLに出演することができたため、今まで遠くに見えていたステージがかなり近くになり、普段から自然とCLを意識するようになっていました。3年生の終わり頃までに、様々な曲のアレンジをしたり、CLなどを通じて経験を積むことができたことでアレンジに対してかなり自信を持てるようになりました。
そして4年生になり、CLを目指すバンドのアレンジャーとして楽譜を作るようになったのでした。
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僕のいままでの経験を見てもらえればわかる通り、CLを意識して本格的に編曲を始めてからまだ1年半くらいです、たぶん。なのでまだミューズスコアなんて触ったことないよぉ〜〜って方も1年後もしかしたらガンガンにアレンジしちゃってるかもしれません笑
何が言いたいかっていうと、とにかくアレンジに対して敷居高いなって感じちゃってる方は何事も挑戦、やってみないとわからないぜって話です笑
3. アレンジ編
ここからはこれまでの経験で得た具体的なアレンジのお話ができればなと思います!
上に書いた通り今でもほとんど音楽についての知識はありませんので、あまり間に受けずふーんくらいに思ってください。
○ まずアレンジする(PCに向かう)前に!
PCに向かって編曲を始める前に、編曲する曲をどう演奏を聞いてもらいたいか(バンドカラーなどを意識して)具体的なイメージを持って原曲をよく、とてもよーーーく聞くこと。この作業がとてつもなく大切です。
人に聴いてもらうことがゴールであるため、第三者の目を常に意識することはアレンジに限らず言えることですよね。でもやっぱりステージングではまかないきれない音楽面のバンドらしさというのはアレンジがかなり大きなウェイトを占めるのは間違いありません。なので編曲を始める前にどうやって聴いてもらったらバンドらしさが伝わるか、どうしたら自分たちは楽しく歌えそうか、どこで盛り上げたら歌ってて気持ちいいか、、、などなどイメージすることが編曲する前の大事な作業です!
(僕の場合原曲を聞く時間の方がPCに向かう時間よりも長かったりします笑)
○いざ編曲!
イメージがだいたい固まってきたら今度はそれを楽譜に落とし込んでいきます。(このとき、前の段階での”イメージ"がより具体的であればあるほど編曲はしやすいと思います。)
また、ここで編曲するにあたって大事なポイントとして大きく次の3つがあげられるかなと思います。おそらくどのアレンジャーに聞いてもこれらは大事だということでしょう。
① 曲全体を通してどう抑揚をつけていくか。
→ やはり、アカペラという音楽形態は飽きが来やすく、すこしでもそれを解消するために抑揚をつけるのです。アカペラサークルに入ると耳が痛くなるほど聞くことですよね笑。
② 聴かせどころをどこに入れるか、そしてどのような聴かせどころにするか。
→ これも①と関係してきますが、飽きがこないように、そしてそれ以上に聴いていていて楽しんでもらえるように、"聴かせどころ"を作ります。これがあると緩急がつけやすくなると思います。
③ バンドやメンバーへの思いやりを持つこと。
→ これもとても大切。一口に思いやりと言っても色々ありますね。無理のない音域、音取りがしやすい、歌ってて気持ちいい・楽しい、楽譜が見やすい、メンバーの良さをうまく引き出す、などなど。こういったことに気を付けて編曲ができている人は少ないのかなと思います。自分もまだまだだなぁと感じることがよくあるので笑
こんな感じで大事な3つのポイントを挙げてみましたので、今度はそれぞれについて詳しく見ていきます。
それでは①から順に見ていきましょう。
①抑揚のつけ方
基本的にアカペラアレンジされた曲の構成は
イントロ→1AB→1サビ →2AB→2サビ→Cメロ→落ちサビ→ラスサビ→アウトロ
みたいに展開されていくと思います。(Cメロがない曲や、間奏を入れたりする場合、2サビを落ちサビにしたりする場合など、一概にこれではカバーできませんがこういうパターンが多いですよねって話です笑)
そして普通、音のボリュームは
1サビ<2サビ<ラスサビ
って感じですよね。アカペラを少しでもしたことがあればこれくらいのことはわかるはずです。
なので、実際に出す声での調節も大切ですが、楽譜の上でもこういった緩急をつけていきます。
この時に大事なのが"音域"と"音の積み"、そして"スキャット"です。
・音域
まず知っておきたいのはメンバーそれぞれの音域。無理なく歌うことができる音の範囲をアレンジャーがしっかり把握することは大前提です!(出せると歌えるは別!)
参考までに、top, 2nd, 3rdの一般的に使う音域を示すとこんな感じになるでしょうか。
>混声(女2男1)のとき
一般とは並外れた例外的な人がバンドにいる場合もあるかと思うので、あくまで参考です。
これを知った上で次にある"音の積み"を考え、抑揚をつけていきます。
・音の積み
アレンジの際、和音をコード通りに打っていく訳ですが、同じ和音でも高さを変えて色々な高さで和音を響かすことができます。
例えばコードがAmであれば、和音を構成する音はラ・ド・ミなので、
左から①、②、③の音の高さとします。
こんな感じで3種類の高さで同じAmの和音を鳴らすことができます。
この"高さの違い"をうまく使って音量差をつけていくのです。低くて出しやすい音よりも高くて張って出す音の方が盛り上がって聞こえますよね?はい、そういうことです。
基本的にですが、1サビでは①くらいの積み(高さ)、2サビでは②、ラスサビでは③のようにラスサビに向けて盛り上がって行けるように積みを上げていけば、自然と音量差のある演奏になるはずです。
・スキャット
上の音の積みだけでなく、コーラスに歌わせるスキャット(言葉)によってもかなり音量に差がでます。例えば同じ高さの音を出す時、uh〜とoh〜で比べたらそれはoh〜の方が大きく出すことができますよね。
なので積みの高さが同じコーラスラインであっても、スキャットが変わるだけで聞こえ方も違ってくるわけです。
イントロでfuと歌っていたフレーズを間奏やサビの裏メロなどでも使いたいときは、スキャットをohやahなどの開口系のものに変えるだけで意外と勢いを保つことができるものです。
また、これは特にミドル〜アップテンポの曲で言えることな気がしますが、シンプルなスキャットだけでなく、あまり聞いたことがないような面白いスキャットを使うとかなりメリハリのある演奏になったりもします。こういった面白いスキャットの使い方というのは②の聴かせどころにも繋がってくると思いますのでとても有効ですね!
②"聴かせどころ"を作る
こちらも①同様、お客さんを飽きさせないための緩急づけの一環。ただ、それのみでなく、それ以上の「楽しんでもらう」というもう一段階上のところにゴールを設定するといいと思います!(①の抑揚は単に飽きさせない緩急づけのためだった)
それではどうやって聴かせどころを作ればいいのか。
こればかりは演奏する曲やバンドの強みなどに左右されてしまうので一概には言えませんが、いくつかパターンを例示するのであれば、
・リード力(エモい/パワフル/フェイクがうまいなどなど)を前面に押し出す
・全字ハモで歌詞の強調をする
・ラスサビ前に転調したり溜めたりする
・印象的なイントロで聴き手の心を掴む
・スキャットで遊ぶ(→①)
・リズムを変える
・マッシュアップにする
他にもまだまだ出てくるものがあると思いますが、こういったところかと思います。
簡単に書き連ねはしましたが、いざ編曲する段階でどれを選べばいいのか、どうやって組み込めばいいのか、なかなか難しいですよね。
それでも前半の3つについては割とわかりやすく、素敵な歌詞を全員で歌って伝えたいと思えば全字ハモすればいいですし、リード力を押し出すのならベーパのみ残してコーラスは消えるorかなり引いて歌うとかできそうですよね(落ちサビ、1,2AB(ミドル/アップテンポの場合)、サビひと回し目後半などなど)。
しかし、後半の4つは難しい!それこそアイデア力や閃きが関わってきそうなところです。ですが、どれをどうやって入れたらいいのかがわからなくても、「どこに」組み込めばいいのかは結構わかりやすいはずです。
客観的に聞いて飽きを感じるところです。
一回すごーーーーく冷めた目で自分の楽譜や自分のバンドの演奏を聴いていると、飽きが来やすいところというのがだいたいこの辺っていうのは見えてくるはずです。
特にスキャットやリズムで遊ぶようなことを念頭に置いてみるといいかもしれないです。
スキャットには別に正解はないので無限の選択肢があります(あくまで曲にマッチするもの)し、リズムについても1つの曲の中の同じセクション(A,Bメロなど)に対して2,3のリズムは考えられるはずです(雑)。
それでもリズム的に限界を感じるのであれば、曲自体のリズムをStraight→Swingのように変えてみることをちょっと考えてみるのもアリかもしれませんね。(これは割と最終手段的にぼくは考えてますが、有効に使えるととても素敵な楽譜ができると思います!)
前回のCLの漏斗6の「I can’t wait to be a king」はかなり聴きどころの多いアレンジでしたね。もう一度皆さん聞いてみるといいと思います!
③バンドメンバーへの思いやり
ここまで①②がボリューミーで読むのに疲れてしまったかもしれませんが、これが結構大事なことですのでもう少し頑張って読んでくれたら嬉しいです笑
まず、この根底にあるのは、
音楽は楽しくあるべきだ
という考えです。みなさんも同じやるなら楽しい方が何倍もいいですよね。
そのためにも一緒に歌ってくれるメンバーのことを思って、
・楽譜が見やすい
・無理のない音域
・歌ってて気持ちいい
・歌ってて楽しい
・音取りがしやすい
・メンバーの良さをうまく引き出す
こういったところに気をつけられるといいと思います!
やっぱり一番初めの音の積みの話ともリンクしますが、適正な音域がメンバーそれぞれにあって、それを理解してあげるのがアレンジャーとして欠かせないことだと思います。
それに応じて「この人はこの辺の音をラスサビのロングトーンに使えば気持ちよく張って出してくれる」みたいに考えて楽譜を作るとお互いが気持ちよく歌えるのかなと思います。
また、音取りのしやすさというのはかなり大事で、
音取りがしやすい=メロディーとして綺麗で覚えやすい
という風にぼくは捉えています。
ですので、編曲の際、コードに囚われて縦のラインに目が行ってしまいがちですが、各パートの横のライン、つまりコーラスのメロディーラインを意識するとよりよい楽譜になっていくと思います!(音がすごく飛ぶみたいなことがおそらくなくなるはずです…!)
特にtopのラインはコーラスの中でも最も目立つので、メロディーラインには注意です!
あとはメンバーの良さを最大限引き出せるとよいのではないでしょうか!
topの高音が綺麗なら、2nd,3rdが"コーラス"しているときに裏メロをlululu〜と歌ってみたり、歌が上手いコーラスがいるならリードにハモらせたり、もしくはダブルリードにしたりなんかも、それぞれの良さを引き出す手段の1つですよね。
そんなことをいろいろ考えて、メンバーみんなで同じ曲を演奏するっていう楽しさを噛み締めながら練習・演奏できればそれはもう優勝ではなかろうか。
今回の記事はかなりボリューミーでしたが、かなり抽象度の高いものだったかと思うので、次回の記事で今回のこの話は楽譜で具体的に言えばここのこういうこと!っていうのを紹介していければなと思います!
こんな長文を最後まで読んで頂きありがとうございました!
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