ボートを漕ぐのが難しい理由
スポーツのスキルを身につけるのに、簡単にできる動作とやりづらい動作があります。
やりやすい動作は人の持っている自然な動きを伴っているものです。しかし、体の使い方に逆らう動きをする動作は習得に時間がかかるものです。
自然な動きというのは、意識しなくても自然にそうなってしまう動きのことです。
川の流れに対して、逆らって上流に向かうにはエネルギーが必要です。それと同じで、自然な動きに逆らうにはエネルギー(習得のために努力、時間など)が必要になります。
ボート競技はスキルを身につけるのが大変な競技です。
その理由に自然な体の使い方に逆らった動きをしなければならないことにあると、私は考えています。
自然な動きとスポーツ
口を大きく開けると背中は反りやすくなる。
背中を丸めておヘソを覗きながらあくびはやりづらいものです。
口を閉じると背中は反りづらくなります。
走り高跳びの背面跳びでは、バーに向かって飛ぶときには口は軽く開いて上を向くことで背中を反らせます。
バーを飛び越えて脚を抜く動作では、口を閉じておヘソを見ます。
目線の向いている方向に腕は伸びやすくなります。
逆にいうと目線と逆側の腕は縮みやすくなります。
弓道では、弦を引くのではなく、弓本体を押し出すといいます。
的の方向を見ながら、的に近い方の腕で弓を押し出し、反対の腕は小さく折りたたむようにしているように見えます。
ゴルフのスイングで壁を作る動きが難しいのは、自然な動きに逆らう動きを要求されているためです。
バットを振るときに、肩や腕の脱力するのが難しいのも、自然な動きをすればバットを振るときに、肩や腕に力が入るものだからです。
ボート競技の場合
(ここからは、ボート経験者でないと判らない話になります。)
ボートは背中を丸めてシートに腰掛けて漕ぎます。
自然な動作では、背中を丸めると首は下を向くものですが、ボートでは下は向かずに正面を見ます。目線に引っ張られてグリップを握っている腕が下に向かって伸びていくのを防止することが一つの理由です。
自然な動きを引き出すために、不自然な動きをしているのです。
また、キャッチ姿勢では股関節を小さく折って背中が丸まったしゃがんだような姿勢になります。そのとき腕も小さく折られるものですが、レンジをかせぐために前方に大きく伸ばす動作が必要になります。これも不自然な動きです。
ブレードを水に入れる(下げる)ときは、グリップを上に持ち上げる必要があります。
通常だと下げる動作のときは、腕も下げるものですが、逆の動きをしなければなりません。
力強く腕を引き付けるとき、普通は肩甲骨を背骨に近づけるように寄せるものです。しかし、背中を丸めて漕ぐため、肩甲骨は開いたままで漕ぐことになります。でも体は肩甲骨を閉じたいために、肩や首を変わりに緊張させるのです。
このように、ボート競技は自然な動きに逆らった動作をしなければならないため習得が難しいのです。
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