橋づくし
もと川・もと橋の記事、現在築地川を書いています。前回の「築地橋」のことを書く時にネットを検索していたら、「三島由紀夫も小説の舞台にした築地橋を走る都電」という見出しで、築地橋の雪景色の写真が出てきました。その写真に趣があっていいなと記事を見ているうちに、小説自体に興味をもちました。「橋づくし」という短編なのですが、恥ずかしながら三島由紀夫は読んだことがなく全く知りませんでした。これは何に入っているのだろうから始まって、手にした文庫本がこちらです。
この文庫本にはいくつも短編が入っています。予想外に楽しめました。(まだ全部読んではいませんが。)
「橋づくし」は、中秋の名月の夜に誰とも一言も口をきかずに7つの橋を渡りきることができれば願い事が叶うという願掛けのチャレンジをした4人の女性のお話です。喋ってはいけないこと以外にも、同じ道を二度通ってはいけないし、知っている人から話しかけられてもだめ、祈念のために橋を渡る前と渡り終えた後に一度ずつ手を合わせないといけません。橋めぐりに出てくるのは、三吉橋、築地橋、入船橋、暁橋、堺橋、備前橋の6つ。すべて築地川の橋なんです。自分にとっては橋の跡地を見てきたばかりだから、すごく馴染みがあったのでした。7つの橋を渡る必要があるのに橋が6つしか出てこないのは、中央で3つの橋が繋がっている三吉橋から始めているからです。効率がいいのは隣の橋との距離が近いか、渡る橋が短いことでしょうから、更に三吉橋が架かっている築地川は最良の選択のようにも思えます。
「橋づくし」は文藝春秋の昭和31年12月号で発表されたものだそうで、まだ川が埋立てられる前の作品です。その時代の川、橋を想像しながら読むとタイムスリップできそうです。
見出し画像は三吉橋ですが、小説には鈴蘭燈も出てきます。この鈴蘭燈本当にかわいらしい。夜に点灯するととてもいい感じに橋を照らしてくれます。
小説としてはコメディタッチで面白かった。でも現実的に考えて、深夜に川の近くを通るって怖いと思うんですよね。しかも女性4人でですよ。いくら都会でも静まりかえっていると思うし。昼間の川に比べて、夜のどんよりとした暗さは恐怖さえ感じてしまうものですが・・・
そういえばginger.tokyoのマスター高山さんに、こんなのがありますよと橋が出てくる小説を教えていただいたことがあります。それが橋本紡さんの「いつかのきみへ」でした。こちらに出てくるのは江東区にゆかりのある橋ばかりなのですが、「清洲橋」「亥之堀橋」「大富橋」「八幡橋」「まつぼっくり橋(石島橋)」「永代橋」の6つです。亥之堀橋とまつぼっくり橋は大横川、大富橋は小名木川、八幡橋は富岡八幡の近くに移設された旧弾正橋(もと八幡堀に架けられた橋)、清洲橋と永代橋は隅田川に架けられています。亥之堀橋はすぐ近くを通ったことがあるけど渡ったことはなく(隣の扇橋止まり)、まつぼっくり橋も隣の(清澄通り上の)黒船橋なら渡ったことがあるくらいにローカルな橋です。こういうのが橋めぐりのきっかけになってもおもしろいですよね。