大規模再開発で生まれ変わっていた場所
一つ前の東京マラソンの記事を書いているときに昔撮った写真をいろいろ観ていたらこんな写真が出てきました。
いまは無きGibson Brands Showroom TOKYOの写真です。撮影は2014年10月14日。
撮影した日に、ジェフ・バックリーの軌跡を描いた映画「グッバイ・アンド・ハロー 父からの贈りもの」の公開に先駆けて行われたイベント「Jeff Buckley Night」がこちらの会場で行われました。トークショー&ミニ・アコースティックライヴです。幸運にもこの日参加することができたのでした。
ギブソンといえばレスポール。レスポールを愛用しているギタリストはたくさんいますが、スラッシュもその1人です。Slash featuring Myles Kennedy & the Conspirators のニューアルバム「World On Fire」が同年9月にリリースされ、彼は10月にプロモーション来日していました。このイベントの一週間前には同じ会場でファンイベントを行っていたようです。ショールームにも新譜の宣伝ポスターがどーんと飾られていました。私としては、マイルス・ケネディが影響を受けているジェフ・バックリーを題材にした映画のイベント会場で、マイルスにも会えるなんてなんて幸せなんだろうと喜びを噛みしめていました。
私がこの場所に足を運んだのはこれが最初で最後。前を素通りしたことはあったかもしれませんがそのまま存在を忘れていました。そして、昨年の今頃に八重洲二丁目中地区再開発で取り壊されることなった八重洲ブックセンター周辺をウロウロした時に、この周辺にギブソンのショールームがあったような気がするんだけどどこだったんだろう?と思い出したものの、追求はせず終わっていました。
今更のように検索をしてみたところ、すでに取り壊され、新しいビルに生まれ変わっていました。それが東京ミッドタウン八重洲です。このスポットは、あの広大な街区にあったビルの1つだったんです。ショールームの閉館の理由も再開発ですし。東京ミッドタウン八重洲が建つ前に何があったか覚えているのは、何度も足を運んだことのある北海道フーディストくらいでした。小学校もあったのに全然気が付きませんでした。
Gibson Brands Showroom TOKYOがあったのは、オンキヨーが2000年に取得したオンキヨーの自社ビル「オンキヨー八重洲ビル」(東京都中央区八重洲2-3-12)でした。Gibsonがオンキヨーに資本参加したり、オンキヨーとTEACが資本提携したことで、3社の強みを生かしたショールームを当時のオンキヨー本社ビルにオープンすることになったのだと思います。
しかし2016年にはオンキヨーが自社ビルを売却、2018年にGibsonが破産してオンキヨーとTEACの業務提携も解消。その前の年にショールーも八重洲地区再開発のため2017年12月で終了とめまぐるしく変わっていきます。その後、オンキヨーも破産。企業名は残っていますが、祖業のAV事業を担っているのは複雑な経緯で生まれ変わった別会社です。
オーディオ業界は昭和こそ安定していましたが、平成になり状況が一転、衰退していきます。音響機器メーカーの相次ぐ経営難により、合併や撤退で消えていったメーカーやブランドが多数存在します。生き残るのがこんなに大変な時代になるなんて誰が予想したでしょうか。私も某V社に4年ほど携わったことがあり、退職後も陰ながら見守っていたので、その後の厳しい状況は残念でなりませんでした。時代の変化という言葉で簡単には片付けられないけど、技術の進歩やトレンドの移り変わりは世の中に多大な影響を与えています。自分も何気なく新しい物を採り入れ、古い物を使わなくなることが多いのですが、その何気ない取捨選択が遠回しに企業の命を奪っているかもしれないと思うと怖くなりました。
でも一番の番狂わせは自分の耳がおかしくなっちゃったことです。音楽を聴くのが好きでしたから、耳鳴りに悩まされて徐々に雑音が増えていき、自分耳で聴きとることのできない音階があることを悟った時は失望すら感じました。自分の体調の変化が音へのこだわりを捨てるきっかけになってしまいましたが、これはもうどうしようもないので、聴き続けられる体調を維持する事に意識を変えました。こだわって集めたレコードもオーディオ機器も、引越しの度に手放してしまっています。だから私は今、デジタルオーディオプレーヤー以外のオーディオ機器を持っていません。ちょっと矛盾しているのは、唯一だからこそSONYのウォークマンにこだわっていること。スマホで聴いても何も変わらないかもしれないけれど、そこはオーディオ機器にこだわりたいのです。
かつてGibson Brands Showroom TOKYOが存在した場所、そこは東京ミッドタウンに生まれ変わっていました。見出し画像はちょうどショールームがあったあたりの今の姿(駐車場出入口付近)です。手前の道路(八重洲二丁目北地区と中地区の間に位置するあおぎり通り)は、両街区の時間差の再開発でしばらく落ち着くことがなくなりました。
Googleマップでみるとこのへんです。
ちなみにお隣の八重洲二丁目中地区再開発の解体は、両端の比較的大きなビルにパネルが残っている以外はほぼ終わっているようです。八重洲ブックセンターの閉店カウントダウンをしていた頃からまもなく1年になります。
「かつて存在した場所の備忘録」という記事をいくつか書いていますが、あのシリーズは存在した時の写真を自分で残していません。今回の記事は自分がたまたま残していた写真から、それにまつわる思い出を書いてみました。