壊れた耳で聴く音楽
2002年の途中から耳の障害が発生しました。この頃はまだ聴こえなくなるほど悪化はしていません。耳鳴りが聞こえるようになった、耳管開放症になった、この程度です。この年はいろんな事がありストレス過多になったようで、帯状疱疹が出たり、体と精神に負担がかかったのかもしれません。この年を堺に、耳の症状に悩まされる毎日が続きます。一時的と思った耳鳴りが止むことはなく、加えて左右交互に難聴の症状が出て聞こえにくい状態を繰り返すようになりました。余裕のない性格も災いして追い込まれていったかもしれません。
早めに病院に行けばいつか治るだろうと最初は思っていましたが、自分の症状をどの医者も理解してくれませんでした。聴力は目にみえない「感覚」であり、それを見えるようにした検査結果では伝わらないことが多いのです。自分の説明の悪さも手伝ったのでしょう、どの医者の反応もほとんど同じ。「元のように聞こえない」と訴えても「普通に聞こえている」と言われ、果ては「あなたはもともと聞こえすぎだ」(慰めてるつもり?)と言う医者もいました。医者は元の状態を知らないし、元に戻りたいという患者の気持ちも理解できないから、このくらい聞こえていれば普通だと残酷な事を言う。通い続けてわかったのは、どの病院でもやることは一緒だし医者の診察もほとんど一緒だったこと。マニュアルに基づいて診察してるのかと思ったほど言われることも出される薬も一緒で、そして薬は効きませんでした。
いろんな病院に通いましたが、結局有効な治療法があったのかなかったのか聴力は落ち続けていきました。20年以上も患っているので今は治すことは諦めて聞こえを維持することを重点目標に、体調を崩さない努力をしています。日常的な散歩はその一環でもあるわけです。(定期的に体を動かさなかった前と今とでは、聴力の変化に差があります。今は極端に崩れることはありません。)
普段は補聴器を使っています。とはいえ補聴器を使えばはっきり聞こえるわけでありません。聞こえにくい音階の増幅というか、自分の聞こえていない部分を補うだけです。耳の調子によっても聞こえ方は違うし万全ではありません。それに私は伝音だけでなく多少感音難聴が入っているので、言葉を間違って聞き取ってしまうこともけっこうあります。イヤホンも付けっぱなしは疲れると思いますが補聴器だってそうです。耳が痛くなります。あと、着用によってはピーピーうるさいです。でも、聞こえているだけでマシと思うのです。
と、耳のことをちょっと話してしまいましたが、今回のテーマは私は耳が悪いことを言いたいわけではありません。耳が悪くなる過程で、左右の音階が違って聞こえたり(片方で補完しているからそこまで変には聞こえない)、極端に右耳の聞こえが落ちたり(つまり左しか聞こえない)その逆だったりしたことがあり、その時に聴く音楽というのは何か物足りなかったり、いつもと違って気持ち悪かったり、昔と同じように聴けなくなったことを悟って悲しくなったりということが何度もありました。落胆した感じというのでしょうか。
ですがその当時はまだ、少しは耳が治るかもしれないという希望を持っていた自分。落ち込んでばかりではダメだと新しい音楽に救いを求めたようです。こんなことを言ってはアーティストに申し訳ないかもしれませんが、そこまで細かく聴き込もうと思わないタイプの音楽を、おおざっぱに曲を捉えられればいいやという気持ちで聴くようになりました。とはいえスカスカな音は嫌いなので重低音重視です。
例えば、見出し画像でアルバムを並べたSlipKnoT(スリップノット)です。9人組のヘヴィメタルバンド(ジャンルは正直何に分類されるのか不明)で、初期のメンバーには0~8までナンバリングされていて、9人もいるけどメンバーの名前と番号とマスクを認識するのは早かったです。
#0 シド・ウィルソン(ターンテーブル)、#1 ジョーイ・ジョーディソン(ドラムス)、#2 ポール・グレイ(ベース)、#3 クリス・フェーン(パーカッション/コーラス)、#4 ジェイムズ・ルート(ギター)、#5 クレイグ・ジョーンズ(サンプラー)、#6 ショーン・クラハン(パーカッション/コーラス)、#7 ミック・トムソン(ギター)、#8 コリィ・テイラー(ヴォーカル)
**上の写真は左からミック、クリス、ジョーイ、クレイグ、シド、ショーン(クラウン)、コリィ、ポール、ジェイムズ(ジム)の順
出会いは彼らのデビューから遅れること6年の2005年ですから決して早くはありません。当時海外のネットラジオを聴くのがマイブームで、そのオンエアで知りました。スリップノットを直にというより、ヴォーカリストのコリィ・テイラーのサイドプロジェクトだったストーン・サワーの「Bother」がきっかけでバンドの存在を知りました。2000年前後は世の動きに鈍感で、音楽や新しいバンドの登場に疎くなっていました。
だから「スリップノット」という名前を聴いてもこんなマスク集団だとは知らず。調べて画像見てええっ!てなってたのですが、マスクじゃないけどメイク姿で一世を風靡したKISSのファンだったので、そこは音楽を聴かない理由にはなりません。むしろ、音楽で勝負したい人たちなのでは?と思うわけです(笑)。当時すでにサードアルバムがリリースされていて、ラジオでは「Duality」や「Vermilion」などが流れていたのですが、これなら聴けると試しにそのアルバムを購入。
当時はまだYouTubeはなかった時代で、音楽配信サービスはデジタルミュージックの販売だけで今のサブスク形式は始まっていません。アルバム全部を視聴するのはそんな簡単ではなかったのです。レンタルCDも必ずしもあるとは限らないし。だから昔は聴かずの「ジャケ買い」も多かったですよね。
このアルバムは前2枚と多少違い、キャッチーでメロディ重視なクリーンヴォイスの曲が増えたせいか、ファンによって評価が分かれるようです。私の場合、前2枚はこれ抜きでは聴こうとは思わなかったと思うので、ここから入れたことがむしろ幸いしました。ちゃんと歌える人なのになぜ咆哮するように歌うのかも興味を惹かれる理由となって、コリィ・テイラーへの興味がスリップノットのファンになるきっかけになりました。彼らのライヴDVDを観ているうちに、ライヴに参戦したいと思うようになったのですが・・・
幸か不幸か、2005年のサマソニに都合よくスリップノットの出演が決まっていたんです。気づいた時には1日券を買っていました。これまでフェスなど参加したことのない人だったんですが何故だろう、なんとかなると思ってしまったようです。そして当日はほぼマリンステージにいずっぱり。彼らの出番の1つ前(Deep Purple)でグランドに移り、前方エリアのうしろで待機してたら、セットチェンジの間に予想外に押されて左右の仕切りの近くに飛ばされました。近くには暴れる人もいたので本気で死ぬかと思いました。でもそれだけ激しい体験をしたせいで、ライヴハウスやフェスも大丈夫なのでは?と思うようになり、好きなアーティストの公演が決まったら会場は選ばずチケットを取ってライヴに足を運べるようになりました。
会話が聞き取れず人と接する機会を減らしていた人なので、こんな風にアクティブになるとは思っていませんでしたが、こういう変わり方をする人も珍しいかもしれません。それ以降は、iTunes Storeで自分の好みの傾向から曲を紹介してくれるサービスなんかもうまく利用して新しいアーティストを発掘していました。それをきっかけにこっち方面の音楽好きと知り合いになったり、音楽の幅は広がりました。代わりに、以前聴いていた音楽をしばらく休んでいました。最近は逆に古いのばかりで新しい音楽を休んでいるから、いろいろ聴くのって体力と時間がいるってことなんだな、と理解しました。
スリップノットもこの時とはだいぶメンバーが替わりました。もともとメンバーの脱退と加入を繰り返しているバンドではありますが、デビュー後のメンバーはしばらく安定していたのに、2010年にベーシストのポールが亡くなってからメンバーチェンジが続いてます。私がファンになった頃のメンバーでは、ドラムスのジョーイ、パーカッションのクリス、サンプラーのクレイグが脱退しています。ジョーイに替わり加入したジェイ・ワインバーグも既に脱退していますが、最近の彼らに多いのが、本人の意思ではなさそうな脱退なんですよね。彼らに言わせると「進化」らしいんですが、進化って何。
そんなのもあり、アルバムは変わらず買っていますが彼らへの興味は少し薄れています。メンバーの動向などは最近深く追わないようになってしまいました。あ、1999年にメジャーデビューした彼らは今年で25周年。そういう意味では嵐と一緒なのか・・・。
紹介がてらMVを貼っておきますが、苦手な方は観ないでください。こうやってみるとマスクもだいぶ変わってますね。
1stアルバム収録曲でライヴの常連曲です。シャイニングのパクリがちょっと笑えます。
Vol.3収録曲。MVで全員マスクを外しており、顔が見えそうで見えない感じが当時はすごく気になりました。
少し飛んでこれは最新アルバム「The End, So Far」の1曲目。オープニングが彼ららしくない曲でむしろ期待が高まりました。