配信狂宴 ストリーム・ホリック! No.3 「未来のライブストリーミング」(前編)

身近な娯楽の一つとなったライブストリーミング。前回の記事ではその歴史を振り返ったが、この先の未来にはどのような進化が待っているのだろうか?最新のストリーミング事情を追いながらこれからのライブストリーミングについて考える。

VTuberの隆盛

最近賑わっている動画コンテンツの一つにバーチャルYoutuber略してVtuberというものがある。YoutuberというYoutubeで活動する動画投稿者の呼称があるが、Vtuberは生身の人間ではなく、3Dモデルや2Dイラストのキャラクターである。仮想のキャラクターに声や動きをつけ、そのキャラクターがYoutuberとして活躍するという形式の動画コンテンツがここのところ急激に人気を集めている。

最も有名なVtuberといえばキズナアイ氏だろう。2018年3月現在160万人を超えるチャンネル登録者数を誇る。彼女を始めとしVtuber四天王ー四天王だが5人いるーと呼ばれる輝夜月氏、ミライアカリ氏、電脳少女シロ氏、「バーチャルのじゃロリ狐娘Youtuberおじさん」ことねこます氏はそれぞれが二桁万人のチャンネル登録者数を持ち、その数字がVtuberの人気を物語っていると言えよう。

当然Vtuberはこの5名だけではない。正確な数は明らかではないが、すでに数百人のVtuberがこの世に存在すると言われている。

仮想現実の世界にダイブ!VRライブストリーミングの可能性

当初Vtuberのコンテンツは収録・編集して動画をアップするという形から始まり、その後ライブストリーミングも行われるようになった。これは言ってしまえば、登場人物が生身の人間から仮想のキャラクターに変わったこと以外に従来のYoutuberと違いは無い。(制作面ではモーションキャプチャー機材の進化など様々な技術革新があったのだが、ここでは割愛する)

ところが近頃、Vtuberの特性を活かした特殊なライブストリーミングが密かに人気を集めている。その名はVR LIVE。電脳少女シロを制作した株式会社アップランドが開発している、バーチャルリアリティ(VR)を利用したライブストリーミングサービスだ。

VRとは専用のヘッドマウントディスプレイ(HMD)やスマートフォン等の機器を通して仮想空間の中に入り込んだような体験ができるというものだ。VR LIVEはそのVRの技術を利用して、ユーザーはVtuberがいる仮想空間に観客として参加し、Vtuberが喋っている様子を360度好きな方向から見ることができる。今までも3Dモデルのキャラクターが踊る様子などを好きな方向から鑑賞できるVRコンテンツは存在したが、VR LIVEはその名の通りリアルタイムに体験するVRコンテンツだ。残念ながらVR LIVEはまだアルファ版で、誰もが利用できるものではないが、それができるようになるのは時間の問題だろう。

自由な視点で観戦!全天球ライブストリーミングの可能性

VR HMDやスマートフォンを使って楽しめる新しい動画コンテンツの一つに、全天球動画というものがある。特殊なカメラで全方向の映像を撮影し、視聴者は好きな方向に視線を向けて視聴することができるというものだ。最近はYoutubeを始めとし様々な動画投稿サイトにたくさんの全天球動画が投稿されており、気軽に楽しむことができるようになっている。

先日の平昌冬季オリンピックでこの全天球動画のライブストリーミングが行われた。これによってユーザーはVR HMDを通して、家に居ながらにしてコース脇で競技を観戦しているような体験を得ることができた。もちろん、リアルタイムで。

実はオリンピックの全天球動画を配信するという取り組みはこれが始めてではなかった。2016年のリオオリンピックでも一部の競技で全天球動画の配信が行われていたのだ。しかし、それは収録した映像を後日放送するというもので、リアルタイムの配信ではなかった。

全天球動画は今までの動画と比べ非常にデータ量や計算処理が多くなり、当初は安定してライブストリーミングを行うことは難しいものだったが、ほんの2年の間に業務用として信頼できるレベルにまで到達したのだ。一般ユーザー向けにもRICOHのTHETA V等、全天球動画のライブストリーミングが行える機材が登場しており、全天球動画のライブストリーミングは「誰もが」行える時代が到来しつつあるといっていいだろう。


かつて音声のみのストリーミングから始まり、ネットワーク技術の進歩によって映像の配信にも発展、いまでは誰もが気軽に音声と映像をライブストリーミングできる時代である。次の進化はVR、全天球動画、そしてその先は?最新のホットなライブストリーミングはこれだけにとどまらない。後編ではさらなる先進的なライブストリーミングの事例を紹介する。

Walker gaming映像担当 オカノ -大地- ダイチ

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