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色のついているおもちゃを与えても“色彩教育”にならない。

 玩具店には色とりどりのおもちゃがところ狭しと並んでいます。

 たしかに色がつけば目立ちやすく、子どもの遊びのきっかけになるでしょうし、色の名称を早く覚えるという効用もあるでしょう。そのため、色つきのおもちゃが子どもの色彩教育になると信じ、買い与える親や保護者が多いようですが、かえってこれが子どもの色彩感覚に悪影響を及ぼしている場合があります。

 色が美しいということは、決して多くの色を使ってハデハデしくすることでも、赤や黄や青などの三原色をつかって目立たせることでもありません。

 こうした色をつければ、目立つことが決まりきっているのは、チンドン屋さんの衣装や街のネオンサインの色と変わるところはありません。つまり、目をひく宣伝用に効果のある色が、やっぱりおもちゃにもつけられているのです。祭りの縁日で売り買いがはじまった起源にも由来しているのでしょう。おもちゃの色は祭りの色でもあるのです。

 小学生の絵を例にとるとおもしろいことに気づきます。小学生の絵はよほどきちんとした指導者がいない限り色の使い方がきまりきっています。葉っぱといえば緑、木の幹は茶、海や空は青という具合です。ところが自然をよく見てみると、決してそんな色ではありません。では、どうしてこんなことになったのでしょう。

 ひとつの原因はおもちゃにつけられた色にあります。おもちゃに描かれた海や空や木には、きまって青や緑や茶の色がつけられているからです。屋根の色はほとんど赤です。小さいときの影響がいかに強いかは、大学生に絵を描かせても、ほとんど疑いもせず小学生と同じような色づけをしていくのを見ると分かります。

 色彩感覚というのは、子どもの生活空間すべてに配慮してはじめて育つものです。例えば、子どもや両親が身につけている衣類、そして、食器、カーテン、テーブルなどの身の回りのモノとモノとの色彩のハーモニー、つまり配色や組み合わせによって育っていくものです。

 色つきのおもちゃが、この配色や調和を崩す存在にならないという保証はなく、極端な場合、子どもを“色オンチ予備軍”にしている恐れがあるとも言えるのです。



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