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Vol.2 日本と諸外国間に教育格差はあるのか?

「日本のアタリマエを変える学校たち」(新評論)が発売となる。2024年7月12日だ。あとひと月ほどとなる。私が本を書いた理由は、前章で書いたが、とにかく多くの方に知ってもらわないといけないため、前哨戦の意味でnoteを書いている。(特に戦うつもりではないのだが)


さて、日本と諸外国間に教育格差はあるのか、というのが今回のタイトルだ。諸外国、という表現はよろしくない。G7やG20といった先進諸国間での比較が良いかもしれない。が、詳細な教育格差比較をここでするつもりはない。「OECD生徒の学習到達度調査(PISA)」の調査結果の結果などをみたら良いと思う。(ベネッセ社のまとめページもわかりやすいのでどうぞ!)非常に重要なことは、残念ながら2025年度から始まるのPISAの英語力試験は日本は参加しない、ということにある。


なぜ日本人は英語が話せないのか?

私が驚いた話がある。息子がイギリスの高校に行っていた時、複数の友達から「日本と中国と韓国の人たちは、その3カ国語が話せるんだよね」と。「はっ???」と驚いた息子に聞いた話だが、ヨーロッパの人たちは国境のある大陸で生活していて、民族移動があったりなどで、複数の言語を使えることはとても有名な話である。私たち日本人のようなほぼ単一民族で、かつ、海で守られた島国だから方言はあっても、まあ、どこに行っても日本語が通じるし、地方の人がたとえば東京に来ても、若干のアクセントは残るかもしれないが、すぐに標準語になっていく。そしてヨーロッパの若者は英語が話せる人が多い。もちろん全員ではないが、どこに住んでいるかとか、小さい時から英語を使う習慣をつけている家庭は多いそうだ。その上、観光客もEU圏内の人の動きも含めて、習得したい言語を使える環境もある。日本では「しかたがない」という言葉でずっと諦めてきたわけだが、国際情勢の変化も含めて、小学校から英語を学ぶ・習うという事態になってきた。これはもう「これからの社会では英語ができないとまずい」と国が認めたと思って良い。これまでに、英語と日本語で文法が違うから習得が難しい、とか、いくつかの理由が言われてきた。それはどれももっともだろう。メソッドも色々あるし、インターネットを利用して海外に繋げることも無料でできる時代だ。そしてAIによる英語学習のサービスもどんどんできている。1960年代に教育の言語を英語に変えた国であるブータンやシンガポールは母語もある。しかし、国をあげて、国策を実現するために「全国民が英語が使えるように」と施策をとってきた。得たものも失ったものもあると思う。どちらが大きかったかはその国の方々に聞くしかないのだが、国の本気度であることは間違いない。英語を教えられる、英語の話せる英語教師が足りないというなら、育成している時間はないから、世界中から連れてくるなど「どうしたら実現できるか」を考えたら良いし、1県に1校ずつ作っていくでも良い。全員一緒にできるようになる必要はないのだ、徐々にでも良いから始めることが大切だ。

日本人が英語が使えないのは、国策の失敗ではないのか、と思うのは私だけだろうか?

国の発展を支えるのが教育(デンマーク、シンガポール、他)

もうデンマークで半年間留学したのがいつのことだったか思い出せない。4、5年前だと思う。その時、授業の一番最初に説明されて驚いたことがあった。デンマークの歴史のあとで、人口も領土も少なくなったこの国が先進国として生きていくために一番大切にしたことが教育だったということだった。日本では教育というと、どうしても学校教育が思い出されると思うが、この国では「教育は生まれてから死ぬまでの権利であり、義務である」というものであった。当然学校教育はあるし、EC諸国間の様々な大学にも行ける。エフタスコーレやフォルケホイスコーレと言った義務教育以外の子どもたちや大人の学校もある。何歳になっても成長したい人もあれば、新しいことを習得して社会の役に立ちたい人もいるだろう。自分らしい生き方ができるよう、国が成人に対しても学ぶ機会を保障している。デンマークの人たちは英語も話せる。しかし第一言語はデンマーク語だからみなさん「英語は外国語だから」と言う。しかし英語で授業をしている。私の第一外国語である英語力とはかなりの隔たりがある。よく「中学から大学まで英語を学んでいてなぜ話せないの?」言われたんだが、それは私が聞きたいほどである。

そして、最近はシンガポールとの仕事をしていて、現地の教育事情を色々知ることになった。一番驚いたことは「シンガポール国民は自国では必ず公立学校に行かないといけない」ということだった。国の血肉になるのは国民である。そして、最高の国民を育成するには最高の学校教育が必要だ。だから、この国では周りに数多あるインターナショナルスクールよりも公務員の教員の方が給料は高いし、公務員の中でも教員の給与が一番高いと聞いた。英語も中国語も話せる人の多いこの国では国内外への転職もしやすいので、良い人材を自国にとどめるためにもそのような政策がとられているそうだ。当然長所も短所もあると思うし、中国の言葉が話せない世代も出てきたと聞いた。一つの国がずっと同じ状況でいられるものではなく、国は生き物だからどんどん成長も衰退もする。成長の加速度をあげ、衰退が見えてきたら脱皮するなどして生まれ変わる仕組みが学校教育で調整ができる。40年前のシンガポールを見たことがあるだけに、こんなに短い時間で国が成長できることには本当に驚いた。その頃世界中にあったpanasonicやtoyotaの大きな看板を見ることは本当に少なくなった。

Leaner(学ぶ人)が大きく成長する環境で(マレーシア、カナダほか)

言わずと知れた他民族国家、そんな環境で生活したり学ぶことが今後の人生を大きく左右する。日本でも忖度が問題になったこともあったが、様々な人種が一緒にいると自己主張もしないといけないし、アタリマエの違う相手の意見を受け入れたり、断固反対したり、折衷案を作ったりと頭をフル回転させる必要がある。学校現場においていろんな人種がいることは、課題の解決策の広がりが大きくなる。(きっと課題も増えると思うけど)

相手も自分も同じような環境で生まれ育ってきた場合は、なんとなく相手の思っていることが想像できる場合も多いがそれがほとんどないのが、このダイバーシティの環境だろう。これからは日本も外国人がどんどん増えて、観光だけでなく共に生活することになるだろう。それは学校やビジネスの場もそうなるだろうし、教員が肌の色の違う人だったり、公用語が違う人だったりもするだろう。間違いなく、10年もしないうちに英語イマージョンの公立学校は日本にも増えると思う。それはこれらを見越して、多言語の人たちの真ん中に共通言語を作る必要があるからだ。日本語ができる人しか受け入れない、という社会はもう外国人が来てくれない国になってしまう。

マレーシアのようマレー系、中華系、インド系の国民で作り上げていった国に、現在海外からの大学留学、親子留学の人気が高いのは、その国で生活することのダイナミズムも影響している。

また、昨年「答えのない教室」(新評論)の取材でカナダの公立セカンダリースクール(中1〜高2)に見学に行った際、英語が全くできない外国人が授業に入れられるのだが、そこには授業を進める教師以外にサポート教員が付く。様々な国からの移民を受け入れられているので、学びを止めることなく、今ある環境に付加サービスをすることで全体最適化を図っている。

教育格差がつくとしたら、このような教育環境格差が諸外国の間でついているのだと思う。PISAで測れる学力は日本は高いかも知れない。しかし、レジリエンス、自己肯定感、共創する力はどうだろうか?そのうちそんなランキングも出てくるかも知れない。しかし、様々な国の人との共同作業は英語ができない時点で大きなビハインドとなる。それを大人や親にはわかってほしい。

バイリンガルとバイカルチャー(カナダ、アメリカ)

国の成り立ちの関係でどうしても複数の言語が必要になった国がある。それはシンガポールのように他民族国家から始まった国では母国語の授業はマレー、中国、インドの言葉で学ぶが、それ以外は英語で学ぶ。バイリンガルスクールという言葉を聞いたことはありますか?日本ではあまり聞かない言葉かも知れない。二つの言葉を使いながら学ぶのであるが、その二つの国の文化も併せて学び、二つの言葉と二つの国を好きにもなる学びでもある。一般的にはバイリンガルスクールではバイカルチャーも学ぶ。

友人の子どもたちはカナダでフレンチイマージョンのバイリンガルスクールで学び、英語とフランス語が生活言語として使えるようになっている。また、米国のポートランドには日本語イマージョンの学校があり、日本語と英語で学びを提供し2国の文化にも親しんでいく。探したことはないがチャイニーズイマージョンだったり、スパニッシュイマージョンといった学校もあるだろう。最近ではインターナショナルスクールという名前が古いのではないか、とも言われている。なぜなら、ほとんどの国が単一民族ではない社会情勢で、すでにnational がマルチな民族で成り立っているので、インターナショナル=国と国を繋ぐ、が形骸化しているという意味である。世界的にIntercultural School が増えていくのかも知れない。日本でもこの名称をつける学校ができたらいいな。外国人比率も高く、いろんな国の人がいるスクール。

ということで、教育格差というと試験結果、のように受け取りがちだが、「教育環境格差による格差」が日本から出ないとできてしまうような気がして仕方がない。





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