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2020年、押し寄せる大量の中国人観光客にどう対応するか?6年後の東京に迫られる課題――社会学者・張彧暋(チョー・イクマン)インタビュー(PLANETSアーカイブス)

今朝のPLANETSアーカイブスは、香港出身の社会学者・張彧暋(チョー・イクマン)氏のインタビューをお届けします。2020年の東京オリンピックの課題は、「外国人にどう東京の・日本の魅力をアピールするか」ではなく、押し寄せる中国人観光客にどう対応するかであるという張氏。そして、日本ポップカルチャーの東アジアでの「実際の受け取られ方」とは――!?(聞き手・構成:中野慧)
※本記事は2014年7月29日に配信された記事の再配信です

2020年、東京には大量の中国人観光客が押し寄せる

ーー張さんは、2020年の東京オリンピックの開催についてどのようなことを考えていますか。

 私は香港人なので、やっぱり観光客としての目線で捉えていますね。2008年に北京オリンピックがあって、2012年にロンドン、その次に2016年にリオ・デ・ジャネイロがあって、その後が東京オリンピックなわけですよね。たとえば2008年の北京オリンピックって、かつて1964年に開かれた東京オリンピックと性格が似ていたと思うんです。チャン・イーモウさんの劇場型の開会式に見られるように、工業化と経済発展のさなかの中国にとっては、ナショナリズムが盛り上がるクライマックスの時期でした。

それに対して2020年の東京って、すでに工業化自体は完了しているわけですよね。宇野さんが「PLANETS vol.9」でやろうとしているプロジェクトも、工業化社会ではなくサービス・エコノミーやクリエイティブ・エコノミーの側面を打ち出していこうというものだと思います。

▲『PLANETS vol.9 東京2020 オルタナティブ・オリンピック・プロジェクト

その一方で面白いのは、2013年に日本に来た観光客の数は年間1000万人ぐらいで、一番多いのは韓国で、次に台湾、中国、香港で、やっぱり東アジアの国々が大半なわけです。そして東アジアのなかでも、韓国・台湾・香港と日本の経済構造は近似性が高い。すでに製造業が衰退し、新しいサービス、新しい体験が発展している。経済構造が近いということは観光に求めるものも近いということで、これらの国から来る観光客は、たとえば秋葉原に代表されるようなサブカルチャーであったり、いろんな温泉体験であったり、美味しい食事であったり、カフェ巡りだとか、ファッションだとか、美術館に行くことを目的にしていたりする。香港の例を出すと、5-10年前までは東京に来ても日用品などを買っていたわけですが、今は韓国や台湾からの観光客と同じように、消費だけではなく文化体験のほうにゆっくりと方向性が変わっていっています。

ですが中国からの観光客はまだ工業化時代のメンタリティが強く、ナショナリズムと経済の成長と国の誇りを一緒に考えています。たとえば香港には去年、年間5000万人の観光客があのちっぽけな島に来て、大半が中国大陸からの観光客でした。彼らが求めているのはサービスではなく、ブランド品と日常用品の買い物です。そしてその5000万人の観光客はそろそろ香港には飽きてきて、今は台湾に進撃中です。そして台湾ではたくさんの中国人観光客が溢れて、マナーが悪いということで非常に問題になっている。

で、2020年の東京オリンピックを考えるとやはり、韓国・台湾・香港やヨーロッパ人、アメリカ人はともかくとして、そういう中国の観光客に対してどう対応するかが課題になってくると思います。たとえば、彼らが求めているのは必ずしも秋葉原のサブカルチャーだけではなくて、薬品を買いに来たりとか……。

ーーえっ。薬品って、何のことですか……?

 香港でいま一番多い店は薬局なんです。観光客がいろんな美容品とかサプリメント、もしくは赤ちゃんのための粉ミルクを求めるからですね。中国はとにかく社会に対する信任(Trust)があまりにも低くて、信頼性の高い、体に良い製品を買い求めるんです。

ーー「外国人にどうやって興味を持ってもらうか」ということだけではく、むしろ中国の人たちがたくさん押し寄せるのはもう確実だから、どうやって対応するかを考えないといけないということですね。

 そう。対応といってもホテルの数のようなインフラの話や、サービスをどう充実させればよいかという問題ではなく、とにかくすごい人数が来るから、そこにどうやって対応するかということですね。

年間数千万の観光客が東京に溢れて薬局で薬を買ったり粉ミルクを買ったりとか、もしかするとホテルでダブルベッドに10人が寝ているとかそういう光景も繰り広げられたりするかもしれない。おそらく東京の生活リズムを破壊されていくし、都市の景観自体もすっかり変わってしまいます。

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