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勇者シリーズ(7)「勇者警察ジェイデッカー」|池田明季哉(中編)
デザイナー/ライター/小説家の池田明季哉さんによる連載『"kakkoii"の誕生──世紀末ボーイズトイ列伝』。
今回は『勇者警察ジェイデッカー』について分析します。人間と同じ「心」を持つ、デッカードをはじめとしたブレイブポリスたち。もはや人が「乗り込む」ロボットとして存在する必然性が薄れた結果、本作が直面した課題とは──?
「人間」になっていくロボットたち
ダ・ガーンは地球の意志ともいえるような超存在にその人格の根拠を置いていた。しかしジェイデッカーのブレイブポリスは、あくまで超AIという人間が生み出したテクノロジーである。これ自体はマイトガインの勇者特急隊にも存在した設定だったが、それはあくまで旋風寺舞人が所有する旋風寺コンツェルンのテクノロジーのひとつにすぎず、超存在「ではない」意志の根拠として設定されただけで、掘り下げられることはなかった。
しかしジェイデッカーは超AIによって生まれた人格そのものを主題にしていく。デッカードをはじめとしたブレイブポリスは、主に人間たちとの絆を通じて「心」を獲得していく。単なるAIではなく、人間と同じ「心」を持つがゆえに、ブレイブポリスはスペックを超えた能力を発揮する。「心」を獲得することで、デッカードたちは「成熟」していくのだ。
ところがこれは難しい問題を呼び込んでしまう。「心」は勇気や愛といったポジティブな感情を通じて力を与えるが、同時に怒りや嫉妬といったネガティブな感情ももたらす。となれば、警察組織に所属するロボットという暴力装置が、そうしたネガティブな感情を持ってしまうことになる。実際に、ビクティムやフォルツォイクロンといった敵となる犯罪者たちは、超AIを持ちながら悪の心を持ったロボットを創り出す。デッカードたちは自らと同じ、心を持ったロボットたちと戦っていくことになるのである。
ロボットが心を持つとき、そこには人間と同じように善悪が生まれる――サイエンス・フィクションとしては、これは論理的で正当な展開といえる。ジェイデッカーはこの主題をベースにして、これまでの勇者シリーズと比較してもシリアスで重厚なエピソードを多く展開している。このような物語構成が玩具の販促としてどれほど効果的であったかを正確に検証することはほとんどできない。しかし少なくとも玩具を契機にしたアニメーション作品としては、シリーズの中でももっとも完成度が高いシナリオを持つもののひとつであるといって差し支えないだろう。
スコットランドヤードからの使者
そしてジェイデッカーは、デュークという「2号ロボ」、そしてレジーナというヒロインの存在を通じて、この問いを深く掘り下げていく。
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再び物語を見ていこう。勇太と絆を育み「心」を得たデッカードはブレイブポリスとして活躍するが、やがて強敵「チーフテン」と対峙することになる。チーフテンは2体1組のロボットで、デッカードたちブレイブポリスと同様、超AIに心を宿している。しかし異なるのは、彼らが宿しているのが「悪の心」であるという点だ。本作では、心を宿すゆえにブレイブポリスはそのスペック以上の性能を発揮すると説明されてきた。同様に心を持った敵は、同格の強敵として――むしろ「悪の心」によって純粋に戦いを好むゆえに、ブレイブポリスを上回る力を持った存在として立ちはだかるのである。デッカードたちは敵が心を持つ自分たちと同じ存在であるがゆえに、戦うことを躊躇する。しかしチーフテンは「ブレイブポリスを倒して最強になりたい」という競争心・闘争心から戦い、ゆえに投降することはない。そしてデッカードは戦いの末チーフテンたちに敗北し、殉職してしまう。デッカードを倒されたブレイブポリスたちは怒りと悲しみを抱き、冷静さを失っていく。
自らが心を持つゆえに、同様に心を持った相手を思いやってしまうこと。そして怒りや悲しみゆえに、ときに判断を誤ること。それはデッカードたちブレイブポリスの脆弱性――「未成熟さ」として描かれる。
「2号ロボ」となるデューク、およびそのパートナーとなるレジーナ・アルジーンは、そのことを鋭く指摘する存在として現れる。デューク(と、その強化形態であるデュークファイヤー)は、デッカードを破ったチーフテンをあっさりと破壊し勝利する。
レジーナは12歳にして博士号を持ち、デュークを開発した天才研究者として現れる。ショートカットにイヤリング、勇太より高い身長、肩が出たタイトなボディスーツというデザイン――明らかに勇太と比較して「大人っぽさ」を与えられたレジーナは、勇太とブレイブポリスを正面から否定する。曰く、人間は怒りや悲しみなど、ネガティブな心を持ち合わせるがゆえに、不完全な存在である。暴力装置であるブレイブポリスは、そうした悪しき心を持たない完全な存在であるべきだ。そして勇太やレジーナといった人間はその手本となるべきであるから、怒りや悲しみを表に出してはならない。これを聞いた勇太はこう悲鳴をあげる。「じゃ、じゃあ、僕がデュークの悪い見本だっていうの!」
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