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京都精華大学〈サブカルチャー論〉講義録第3回 〈週刊少年ジャンプ〉の終わりなき日常

今回の『京都精華大学〈サブカルチャー論〉講義録』では、京都精華大学で行われた宇野常寛の講義をお送りします。今回からは少年漫画がテーマ。敗戦国のマチズモの否定と〈アトムの命題〉の影響下にある少年漫画は、トーナメントバトルという成熟なき成長の形式を生み出しました。80〜90年代の〈週刊少年ジャンプ〉黄金期とその終焉から、戦後日本人の男性性の内実を解き明かします(この原稿は、京都精華大学 ポピュラーカルチャー学部 2016年4月29日の講義を再構成したものです)。

戦後日本と男性性の問題

 今回の講義は「少年漫画」がテーマです。みなさん、少年漫画というと何を思い出しますか? 今時の学生だと『ONE PIECE』『NARUTO』『名探偵コナン』といったあたりですかね。『ドラゴンボール』も再編集版アニメを放送しているので馴染みが深いかもしれませんね。
 これらの作品を産んだ週刊少年ジャンプ、週刊少年マガジン、週刊少年サンデーといった週刊少年誌は、発行部数を見れば一目瞭然だと思いますが50年代末から現代に至るまで日本の漫画シーンの中心にあり続けています。老舗の〈サンデー〉はこの10年で大きく部数を減らして潰れかけていますが、〈ジャンプ〉と〈マガジン〉は最盛期にくらべればだいぶ減りましたがまだまだ健在です。ざっというと〈ジャンプ〉が約245万部で〈マガジン〉が115万部くらいかな? これは同じ漫画週刊誌でも〈モーニング〉が約26万部、〈ビッグコミックスピリッツ〉が17万部くらいなので、どれくらい週刊少年誌が大きな存在か分かると思います。そして、これら週刊少年誌の人気漫画はだいたいアニメ化されるので、より大きなポピュラリティを獲得することが多いです。とくに、60年代から90年代まではテレビの支配力が今とは比べ物にならないくらい大きかったので、この時代に子供だった世代は最大の共通体験が少年漫画だと言っても過言ではありません。戦後社会において漫画はある時期からずっと雑誌を基点とした少年少女文化の中核に位置していました。

 そこで出てくるのが、「成熟」をいかに描くかという問題でした。戦後日本では1960年代頃すでに漫画文化が普及していたのですが、多くの場合は少年少女向けの雑誌に掲載されていたことになるのだけれど、それは媒体の対象読者の年齢層的に登場人物の成長を描かざるを得なかったことを意味します。その結果、「成熟」をいかに描くかという問題が戦後漫画の、とくに少年漫画の中核には存在し、その性格を決定づけたと言えます。

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