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アートによって、世界の境界をとりはらいたい! | 猪子寿之
今朝のメルマガは、チームラボ代表・猪子寿之さんによる連載『猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉』の第16回です。今回のテーマは、今年1月25日からロンドンで開催される個展「teamLab:Transcending Boundaries」について。そこで発表される、スクリーントーンに着想を得た新作と鳥山明の意外な関係とは? そして「境界のない世界」をテーマにしたアートを、いまこのタイミングにロンドンで発表することの意味について、語っていただきました。
◎構成:稲葉ほたて
【お知らせ】
この連載が元となった猪子寿之×宇野常寛『人類を前に進めたい チームラボと境界のない世界』が好評発売中です。
ロンドンで開催する「境界のない」展示会
猪子 今年の1月25日から3月11日にかけて、ロンドンで「teamLab: Transcending Boundaries」という展示をやるんだけど、今日はその話をしたいんだよね。去年、同じタイトルの個展を表参道でやったんだけど、今回はクオリティもだいぶ上げて、もっと「境界のない世界」というテーマを強く押し出したものになってる。たくさん作品があるんだけど、その作品の間には境界がないの。
▲チームラボは、2017年1月25日から3月11日まで、PACE LONDONにて「teamLab: Transcending Boundaries」を開催。
宇野 これは以前に表参道で展示した作品のアップデート? あの作品の境界を無視して……。
猪子 そう! 作品同士の間を、容赦なく蝶が行き来するんだよ(笑)。たとえば、人がいると、そこに花が咲いていく作品があるんだけど、花が咲いたら蝶が集まってきたり、そこに水の作品が流れてくれば花が散ったりしていく。蝶と花と水の作品、それからディスプレイのいくつかの作品が、それぞれ独立しつつ、境界が曖昧な世界になってるんだよ。
宇野 展覧会全体としては、どんなものがあるの?
猪子 会場には部屋が三つあって、いま語ったような作品たちが展示してあるメインの部屋と、二つめは、『Dark Waves』という作品の部屋、そして三つめに『Flowers Bloom on People』という作品を展示した部屋がある。
表参道で実験的に展示した作品をだいぶアップグレードした『Flowers Bloom on People』は、空間には何もない真っ暗な部屋なんだけど、人が部屋に入ってじっとしていると、人の体に花が咲いていき、やがては足元の床に広がっていく。近くに別の人がいると足元の花々が他の人々の花々とが繋がっていくんだ。
宇野 今回は、他者と繋がるようになってるんだね。
猪子 そして、シリコンバレーで展示した『Black Waves』の新しいシリーズである『Dark Waves』。これは暗い波をあらわした作品なんだけど、今、イギリスは世界に対して再び境界をつくろうとしてるから、太古からの境界の象徴として、海の作品を展示した。
▲『Dark Waves』
猪子 最後に、メインの部屋では『境界のない群蝶、儚い命』、『憑依する滝、Transcending Boundaries』、『花と人、Transcending Boundaries - A Whole Year per Hour』、『円相』、『The Void』、『Impermanent Life』という、全く違うコンセプトの作品たちが同じ空間に展示されている。それぞれ独立しているけれども、それぞれの作品の境界が曖昧になっているんだよ。
▲『境界のない群蝶、儚い命』
▲『憑依する滝、Transcending Boundaries』
▲『花と人、Transcending Boundaries - A Whole Year per Hour』
▲『円相』
▲『The Void』
スクリーントーンの概念を更新!? 新作での試み
猪子 全く新しい作品もやるんだよね。ただこれ、超マニアックなビジュアル実験としてつくったものなんだ(笑)。
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