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あなたへの手紙

拝啓。
いかがお過ごしでしょうか。
ここで一度、確認しておきたいことがあります。私は、T.M.Revolutionです。そして、あなたもT.M.Revolutionです。
なにを言っているのか、とあなたは驚くかもしれません。しかし、これは紛れもない事実なのです。
まだ私が子どもだった頃、テレビで西川貴教がこんなことを言っていました。
「T.M.Revolutionとは、僕と浅倉大介と、そしてみんながメンバーのプロジェクトなんです」
そこで語られていた「みんな」とは、つまりこの地球上のみんなのことです。
自分もT.M.Revolutionに含まれているという事実、それは幼き私にとって衝撃のものでしかありませんでした。泣きそうになりました。そして慌てて親に相談しようとして、そこではたと、
「……あ。ということは、そうか、親もT.M.Revolutionなんだ……」
と気がつき、絶望しました。
ゾンビに襲われ、息を切らしながら逃げ、ようやく街中で人影を見つけ「助けてください!」と声をかけたら、その人たちもみんなゾンビだった、みたいな感じでした。

世界中の人々が、気づけば全員、T.M.Revolutionだったのです。父も、母も、弟も、友だちも、先生も、近所のスーパーのレジのおばちゃんも、ムツゴロウさんも、ムツゴロウ王国のゆかいな仲間たちも、みんな、もれなく、T.M.Revolutionだったのです。
恐怖以外の、なにものでもありません。

そして、いま。
たとえば、深夜。ひとりでぺヤングの湯切りをしているとき。延々とソリティアで勝ったり負けたりを繰り返しているとき。あごの下にできた可愛げのないニキビをいじっている時。そんなとき、私はふと思い出すのです。
「そういえば自分って、T.M.Revolutionだったんだ……」
そして、すぐさま、その事実をもてあます自分がそこにいます。私はT.M.Revolutionとして、いったいなにをすればいいのだろうか、と。
なにせ「Revolution」、つまり「革命」です。
革命って、どんなことをすればいいのでしょうか。
無農薬によるリンゴの栽培に成功すればいいのかしら?
カンボジアに小学校を建設すればいいのかしら?
はたまた、映像化するのは不可能と言われていた伊坂幸太郎の原作を見事に映画化?
わかりません。なにをすればいいのか、まったくもって、わからないのです。
T.M.Revolutionの中でも先頭に立っていたメンバーである西川貴教ですら、その答えはいまだ、示してはいないのです。「消臭力」という単語を良い声で高らかに歌い上げる、という革命とはほど遠い活動をこちらに見せてくるだけです。
「自分は本当にT.M.Revolutionなのか?!」
存在意義を見失い、私は深夜にひとり、発狂しそうになります。
人類は現在、船長を失った「T.M.Revolution」という方舟に乗って漂流している、と言っても過言ではありません。

「みんながメンバーです」
あの日、宇宙人によって脳内チップを埋め込む手術を施されたがごとく、この地球のすべての人々はT.M.Revolutionへと姿を変えられました。恐ろしいのは、その手術にまだ気づいていない者がいるという事実です。
どうか、この手紙を、まだ自分がT.M.Revolutionであることに気がついてない知人に、まわしてはくださらないでしょうか。
私たちは、みんな、T.M.Revolutionなのです。
だからもう、争うことも、憎み合うことも、しなくていいのです。

引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

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※テレビブロスでやっていた連載『夜の墓場で反省会』より、コラムを転載しました。一部、加筆と修正を加えています。


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