見出し画像

DAY4 太陽が恋しい

正直に言うと、アラスカでひどい嵐に見舞われたこの一週間のことはよく覚えていない。英語もろくに分からず、キャンプも初心者で、右も左も分からない状態で、私はアラスカの冷たく容赦ない嵐に投げ込まれた。
四日目のこの日は、人生で一番ハードな日だったと考えたことを覚えている。

容赦のない雨、風。手足の感覚がない。芯までずぶ濡れで、乾いた服はない。体感温度はどんどん下がっていく。
四日目はその状態で川を渡った。
川の水は凍るように冷たかった。渡るたびに残りわずかの体力が流されていく。
二人一組で渡るとき、ゴードンを転ばせてしまった。川はかなり深くて流れが速かった。
渡ったあと
「ゴードンほんとごめん。怪我はない?」
と聞いたら、
「大丈夫、問題ないよ。good job」
と笑顔で言ってくれた。彼は体力的にも精神的にも余裕がありそうだった。

最後の川を転びながら渡って、渡り切ったところでもう動けないと思った。
バックパックに座り込んで震えていたらインストラクターのアンドリューが来た。
「乾いた服はある?」
「ない」
「レイヤーは全部着てる?」
「これで全部」
「ダウンは?」
「濡れてる」
「よし、体を動かし続けて。ピーナッツバターをなめるかチョコレートを食べてカロリーを摂って。暖まるし味もいい」
彼のアドバイスに忠実に従った。
ただただ早く晴れてほしいと願った。
日本に帰りたかった。
頭が働かなくなって、この先やっていけるだろうかとぼんやり考えた。

いいなと思ったら応援しよう!