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【忙しい方向け】 『ダイバーシティは洗脳か?』『女性幹部はなぜ増えない?』PIVOT 動画内容まとめ

こんにちは。6 月になり本格的な夏日も増えてきましたね。この時期のエアコンは除湿か冷房か、それとも自動運転にすべきか頭を悩ませている WAKKA プロジェクトのイケダです。

この note ではざっくりと、

  • 人としてより豊かになりたい

  • 社内の風通し・働く環境をよくしたい

  • 日本の企業を盛り上げたい

といったところをゆるくゴールに設定し、もっと日本の企業をクールで働きやすく面白くしたい方向けに、企業のダイバーシティ推進LGBTQ 取り組みをサポートするための記事を書いています。

さて、突然ですが今回は担当者は気になったコンテンツを紹介させていただきたいと思います。

皆さんは PIVOT という動画サービス内で、経済学者の成田悠輔さんがMCをされている、『日本再興ラストチャンス』というシリーズがあるのをご存知でしょうか。

このシリーズは、成田さんが起業家や企業のトップの方達と、日本の抱えるさまざまな社会課題の本質的な部分に切り込み、討論する番組です。この中で最近ダイバーシティが取り上げられている回があり、なかなか興味深かったので、今回はお忙しい方向けに、動画の概要とまとめをご紹介させていただきたいと思います。

特にダイバーシティについて、なんとなく周りがそういう流れだから支援している、という方も多いのではないかと思うのですが、この動画では:

  • ダイバーシティの推進はともすると洗脳や逆差別になるのでは?

  • ダイバーシティは業績向上に直接的な因果関係があるのか?

というような本音の部分に切り込まれていて、その辺りの考え方の一助になるなと感じました。賛否はさまざま出てくるないようかもしれませんが、あくまで議論のきっかけになればいいなと思いますのでお時間のある方はぜひ、ご自身の意見と照らし合わせながら動画の方をご視聴ください(リンクは下より、それぞ25分、19分程度の動画です):


1. 多様性は本当に企業の競争力向上につながる?

近年、ダイバーシティ/多様性/DEIという言葉が合言葉のように溢れ、なんとなく良いものとして受け入れられ、企業は施策推進を求められています。しかし実際のところ企業業績に貢献するかどうかは、研究者間でも意見が分かれています。

  • 業績向上に直接的な因果関係があるという意見

    • 小さい範囲の研究では、1) チーム内の男女のバランス、2) チームの中での会話の往復の回数、が業績がいい傾向があるという報告がある

  • 業績向上には関係ないという意見

    • 会社や国という単位では、多様性を持つことが経済指標に良いということはまだわかっていない

その中でも、企業は成長をし続けるもの、という観点から、多様な価値観を持つ人材がイノベーションを起こしやすく、企業の競争力を高めるという考え方が主流になっています。

  • 人材獲得競争力の強化:マイノリティ層への積極的なアプローチによって、優秀な人材を獲得しやすくなる

  • 顧客ニーズへの対応:多様な顧客層のニーズを的確に把握し、より良い商品やサービスを提供できるようになる

  • リスクマネジメント:人権問題への対応や、ESG投資家からの評価向上など、企業の社会的な責任を果たしやすくなる

多様性を持たないことのリスクについては下記の記事でも取り上げていますので、ぜひご参照ください)

一方、近年では、能力よりも属性で優遇される「逆差別」への懸念など、DEIが行き過ぎているのではないかという批判もあります。
能力や成果を重視しつつ、多様な価値観を尊重する環境を作るという、真のDEIが求められているのです。

2. 「見えない」忖度と非公式なコミュニケーション

- 「見えない」忖度

日産自動車は、2004年からダイバーシティ経営戦略の柱の一つとして、女性活躍推進に取り組んでいます。

ダイバーシティ推進をおこなう上で、特に課題としてあげられているのが「見えない」忖度です。男性/マジョリティ中心の企業文化では、様々な先入観によって女性が昇進しづらい状況が生まれていることがわかりました。例えば、子供がいたり、介護が必要な親がいる女性は、時間的、環境的な拘束のために、負担の大きい役割につくことや海外赴任などはできないだろう、という忖度のもと人事がおこなわれ、それらの役割が男性ばかりに回され、結果、女性の昇進の機会がなくなってしまう、ということが起きていることがわかったのです。

このような課題を克服するため、日産自動車は『Be Tough on Woman』という合言葉のもと、女性社員にも平等に負担の大きい役割を与えていく方針に切り替えました。ここで重要なことは、本人の意思を確認することで、本人が望めば、海外赴任や負担の大きい仕事も積極的にやらせて経験を積ませる。日産はそのようなアプローチで、優秀な女性のマネージャーや、幹部クラスの育成に成功しています。

- 非公式なコミュニケーション

また、非公式なコミュニケーションの重要性についても取り上げられています。ビジネスにおいては、実は会議以外でのコミュニケーションの中で、すでに意思決定に関する重要な会話がなされていることが多いことがありますよね。例えば、飲み会、ゴルフ、廊下での立ち話など。

問題は、マイノリティの人たちが非公式なコミュニケーションから除外されてしまう、ということです。例えば、ゲイのカミングアウトをした途端、合コンに呼ばれなくなってしまい、非公式の会話をする機会が激減する、というようなことや、女性だからといってゴルフの誘いを受けない、ということが起こりえます。

LGBTに関する施策を早い段階から推進してきたゴールドマンサックスでは、社内で意識的に非公式なコミュニケーションの場を提供しています。このような場を設けることで、気軽に社員同士がコミュニケーションを取ることができ、信頼関係を高めあい、自然と非公式の会話の輪の中にいられるようにしているのです。

3. 男女の能力差とは?女性がトップに立つことのメリット/デメリットとは?

動画の中で、視聴者から寄せられた質問として、上記の質問が紹介されました。

このような質問を考える際にまず気をつけなければならないのは、歴史的にそうであったからといって必ずしも科学的根拠があるとは限らない、ということです。
例えば、日本においてトップに立つ男性の数が多い、ということは、必ずしも男性の優位性を示している、ということではなく、これまでに女性に機会が与えられてこなかったから、ということや、上に挙げたような非公式なコミュニケーションが男性のみでおこなわれた結果、男性が優位になるようなバイアスがかかった、ということが考えられるためです。

また、周囲の固定観念や無意識的なバイアスのために、個人の能力に制限がかかってしまう場合もある、ということにも十分に注意が必要です。例えば、女の子は数学が苦手だよね、と言われた上で女の子がテストを受けると、数学の成績が下がってしまうという研究があるのです。これはもちろん、男の子の場合も同様です。

同じ質問を、女性から男性に置き換えてみましょう。「男性がトップに立つことのデメリットは?」全く同じ質問が成立しますよね。

  • 大切なのは能力ではなく、個性を活かすこと

男女間、もしくはいかなる属性間の能力差よりも、個性を活かしてそれぞれの強みを活かせる環境を作ることが重要です。女性やマイノリティが組織のトップに立つことだけが重要なのではなく、男性も女性も、それぞれの能力を発揮できる組織を作ることが求められているのです。

4. どうすれば日本は変わるのか

最近アメリカなどの国では、DEIが行き過ぎているのではないかという反発の声もありますが、日本においてはまだその議論をする入り口にも立っていません。

  • ジェンダーギャップ指数: 日本は121位(2023年)

  • 女性役員の割合: 日本は8.4%(2023年)

  • LGBTQ+に関する理解: 十分ではない

まずは、これらの課題を克服して初めて、真のDEIを検討するためのスタートラインに立てるのです。
それでは現実的にどのように日本は変えられるのか。動画では下記3つの戦略が語られています。

  1. 7割の世論を味方につけ、オセロの駒のように変化を起こしやすいところから攻める

  2. マイノリティ側が攻撃的な戦い方ではなく、建設的な対話を通じて理解を得ていく

  3. 企業や自治体、NPOなど、様々な主体が連携して多様性を推進していく

また、企業においては、このような施策におけるトップダウンのコミットメントの重要性についても語られています。

5. 成田さんの総括

近年、「ダイバーシティ/多様性」という言葉が頻繁に使われるようになっています。しかし、この言葉の裏に潜む危険性について注意する必要があります。
まず、「多様性」という言葉自体、明確な定義が定まっていません。性別や人種、性的指向など、様々な属性が考えられますが、どの属性を重視すべきなのか、一概には言えません。

特定の属性に偏った多様性を追求すると、かえって画一的な組織になってしまう可能性があります。例えば、男女比や性的指向の比率ばかりを重視すると、能力や経験、価値観などの多様性が失われてしまうかもしれません。
ある特定の属性にばかり注目することで、他の属性への差別や区別が助長される恐れもあります。例えば、アメリカにおける人種問題のように、英語が話せない人々が能力不足とみなされるような状況は、明らかに問題です。

「ダイバーシティ/多様性」という言葉は、使い方によっては人を傷つけたり、問題を矮小化したりする可能性があります。
重要なのは、今日的な文脈の中で、具体的な人々と制度について議論することです。「多様性」という言葉を単なるスローガンとして掲げるのではなく、具体的な行動につなげていくことが求められます。

以上、今回は PIVOTの動画内容の概要・まとめをお送りしました。
WAKKAプロジェクトは映画を通じてLGBTQについて考えるきっかけを作る活動を行っています。
これからも情報発信をする上で、皆さんにお役立てできたら嬉しいです。
次回の記事をお楽しみに。
それでは皆さん、良い週末を!


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