小説【335字】魂の収穫祭
『魂の収穫祭』
雑踏で、私は足を止めた。
行き交う人々の影が、突然消えたような気がして。
その日から、人々の影が気になり始めた。
歩く度に揺れる影が、少しずつ薄れていく。
ある日、自分の影を見ると、それも薄くなっていた。
そこへ、影のない老人が近づいてきた。
「収穫の時期です」老人は私に告げる。
「あなたの魂も、もうすぐ熟します」
気づけば、私は見知らぬ祭りの中にいた。
人々は踊り、歌う。だが、誰も影がない。
「さあ、収穫祭の主役です」もう一人の私が現れる。
「魂を捧げるか、それとも新たな種となるか」
私は誰なのか。これは現実か、魂の夢か。
選択を迫られる。消滅か、再生か。
真実を求め、自分の影を見つめ直す。
その瞬間、全てが光に包まれ、目が覚めた。
……だが、枕元には見知らぬ種が置かれていた。