小説【305字】壺の中の都市
『壺の中の都市』
都心の古道具屋。私は一つの壺に目を奪われた。
中を覗き込むと、小さな都市が広がっている。
驚いて顔を上げると、店主が不気味に笑う。
「お客様にぴったりの品ですよ」
気づけば、私は壺の中にいた。
頭上には、さっきまで自分がいた店内。
巨人のような店主が、壺を持ち上げる。
揺れる景色。私は転がるように逃げ出す。
そこは、縮小された都市。
人々は皆、私と同じく壺から落ちてきた者たち。
「ここから出る方法は一つ」誰かが言う。
「自分の中にある、もう一つの壺を見つけること」
私は誰なのか。これは現実か、幻想か。
内なる壺を求め、目を閉じる。
開けば、そこは元の古道具屋。
だが、手の中には小さな壺。
中には、もう一人の自分が——。