小説【316字】魔法陣の迷宮
『魔法陣の迷宮』
路地裏の古書店。私は一冊の本を手に取った。
開くと、そこには複雑な魔法陣が描かれている。
指でなぞった瞬間、世界が歪んだ。
気づけば、巨大な魔法陣の中心に立っていた。
周囲を見回すと、無数の扉が浮かんでいる。
それぞれに、見覚えのある風景が映っている。
「選びなさい」
声が響く。
「あなたの運命を」
恐る恐る、一つの扉に手をかける。
開くと、そこは別の私の人生。
扉をくぐるたび、私は変わっていく。
何度目かの扉の向こう。そこに現れたのは——
魔法陣を描いた本を持つ、もう一人の私。
「全ては、あなたが描いた物語」そう告げる。
私は誰なのか。これは現実か、創作の世界か。
選択を迫られる。作者か、登場人物か。
真実を求め、魔法陣の中心へと歩み寄る。