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クヌギの木

冬枯れのクヌギの木立ちに立つ

ひび割れた幹は数十年の齢(よわい)を数えている

そしてお前はこれからも人の世を見続ける

私がこの世から消え去ったあとも

この世のあらゆることを見るだろう

私は少し切なくなった

けれどもまた私は気付いた

私にはこのクヌギに代わるだけの何かはない

私が見る世はクヌギよりも短いものであっていい

この世を見続けることはときに辛い

私はクヌギの木立ちを出てゆく

後ろから誰かが落葉を踏む音が聞こえる

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白鳥和也/自転車文学研究室
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