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[廃校活用訪問]きららの楽校(鹿児島県さつま町)

平成28年3月に廃校となった「白男川小学校」をリノベーションする形で平成31年4月に開業したのがきららの楽校。今回、さつま町で仕事があったので宿泊施設もあるこちらに前泊させていただきつつ学校も案内をしていただくことができました。弊社でも廃校活用をしているので共通している部分や違っている部分、また勉強になった部分や魅力などを整理していきます。

きららの楽校とは

きららの楽校<概要>

「きららの楽校」は、平成28年3月廃校になったさつま町の白男川小学校を みんなの笑顔があふれる楽しい施設にするために作られました。
さつま町の里山を流れる近くのきらら川から名付けられた楽校では、遊ぶ、学ぶ、泊まる、食べるの楽校体験があります。(きららの楽校HPより抜粋)

住所 鹿児島県薩摩郡さつま町白男川1501-1(旧白男川小学校)
HP https://kiraranogakko.jp/

きららの楽校

廃校から施設活用までのざっくり経緯

2016年  3月 白男川小学校閉校(136年の歴史に幕)
      ※さつま町で同時に7校中、5校が廃校に
2018年10月 管理運営団体発足及び施設改修
2019年  4月 うましき里きららの楽校開業

「町の考え」と「地域の考え」を融合させた施設へ

同施設は「交流拠点施設」としていつでも誰でも集える場所となっているのだが、その事業形態となるまでには地元の方々とのワークショップによる話し合いなどを何度も開催して方向性を決めたとのこと。学校があるさつま町としては、近隣の人工芝のグラウンドや大きな運動施設を有することから合宿の宿泊施設として活用をしたいと考えていたようだが、地元の方々からはそれだけだとこれまで同校で行われてきていた運動会や行事などが開催されなくなる不安もあり、また合宿だけでは平日が閑散としてしまう恐れなどもあったことなどを提案。結果として合宿対応が出来る規模の宿泊施設(最大54名宿泊可能)でありつつ、カフェや貸しスペース、フリースペースなども併せ持つ施設となったそうです。
しっかりと話し合いと双方の落としどころをうまく1つの事例に活かしてるのは素晴らしいですね。

運用は地域主体の活動団体が指定管理制度で実施

同施設の管理は「うましき里きらら協議会」というのを立ち上げて運営をされているそうで、町の様々な団体の代表や行政職員ら21名の協議会会員から成り立ち、別途運営スタッフが現場を回しているとのこと。運営にも地域の様々な方が意見をいえる形で取り組むのは進めにくさもあるとは思う反面、しっかり地域の方々とのリレーションが組めるのは大きなメリットですね。運営については町からの指定管理制度で現在運営されているとのこと。

活動理念も団体名も小学校時代のを活用

いたるところに地域の方々の想いが見えるのですが、さきほどの管理運営団体「うましき里きらら協議会」と施設名称「うましき里きららの楽校」に使われている「うましく」と「きらら」の2つの言葉は旧白男川小学校の校歌の歌詞の中にも入っており、それほど地域を現す言葉とのこと。
そしてきららの楽校が活動理念としている「やさしく」「かしこく」「たくましく」の3つのワードについては小学校時代に使われていたのをそのまま活用し、新しい意味を込めて使っているようです。こうした細かい小学校時代の継承は、地方創生としての廃校リノベーションにとっては重要なことだと感じます。

興味を持った点・類似点

そんなきららの楽校での興味を持ったり東神楽大学と似ているなという点としては下記のとおりです。

田園風景の中にある廃校活用

鹿児島県の中でもお米の産地の1つ、さつま町。その田んぼが広がる真ん中にきららの楽校があります。下の写真のように窓からは綺麗な田園風景と青空、山が見えます。東神楽大学も同じように田園風景と山とが見渡せますのでとても親近感がわきましたが、建物の向きや配置の結果、教室や廊下からの景色としてはきららの楽校の方が美しさが上でしたね。

目の前には田んぼが広がる

横向きかつ窓が多い校舎は入りやすさが違う

校舎の中からの田園風景と合わせて羨ましい!と感じたのが入り口部分。きららの楽校は左右に伸びた校舎の真ん中に玄関があります。そして窓が多く低い位置にある為外から1F部分のカフェやフリースペース、入口の様子が見やすいです。入った所も広く開放感があるので来客者にとっては入りやすいですね。東神楽大学は校舎縦長の前面に入口があり奥に伸びていき、かつ入口が下駄箱と職員室しか見えず中の様子が分かりにくい構造なのでもうこれは羨ましいの一言ですね。

横長の校舎
校舎入口のシール
校舎入ってすぐの解放感があるスペース

完璧な避難所機能

小学校時代に避難所に指定されていることから今も避難所としての機能を有しているのですが、小学校時代は体育館が避難所で空調も無くフローリング、トイレ和式と贅沢は言えないですがいい環境とも言えない状態だったそうですが、改装にあたり1Fに多目的トイレを設置したりしてカフェ・フリースペース・畳の部屋が避難場所として活用できるようになっている為、以前より快適な避難所になっているようです。鹿児島は台風が多いので避難所稼働もそこそこあるようなのでこれも地域にとってはいい効果だなと思います。

畳部屋
カフェスペース

柔軟かつパターンを分けた宿泊施設

町の考えとしての合宿施設利用ということで最大54名分の宿泊施設がありますが、ドミトリー・ツインとさらに長期滞在スペースという区分があり、色々な想定に分かれて作られてました。聞くと、小中学生の九州圏内の合宿が多いようなので大部屋で子どもたち、先生たちは別の部屋というような区分がしっかりできるように考えられているみたいです。

きららの楽校のHPより抜粋
ドミトリー
ドミトリーワイド


ツイン
シャワーは全部で10個近くありました
洗面台

東神楽大学は22名なのでやはり30名とかまでキャパを用意してかつ先生用の部屋とかも設けれれば合宿とかもいいですね。といっても近くに合宿の練習施設があるわけではないのでそこはネックなのですが。

東神楽大学にも行かせそうなこと

視察を経て東神楽大学にも行かせそうなことを3つ考えてみました

1.カフェの複合活用での運用

きららの楽校のカフェは
・カフェ(土・日)
・弁当製造販売(水・金)
・団体宿泊客用の食事(10名以上予約時)
と3毛作展開をしているとのこと
これはいい!と思いました。1つの形で使うのだけではなく色々な形で使う仕組み。東神楽大学でも団体利用での食事提供は過去していますが、弁当製造販売はしていませんでした。きららの楽校ではその運用が地元の女性グループが担っているとのことで、別の団体が定期的に活用していくのはとてもいいですね。役場とか市街地のワーカーから注文を取って配達もしているとのことで、東神楽大学でも弁当製造販売を定期的にしてくれる団体と連携して夏なら地元農産物をうちで仕入ているので活用してもらったりしていけると面白いなと思いました。

2.合宿・企業研修の地元利用

今回、目から鱗の1つが合宿や企業研修利用者が思った以上に地元だったこと。地元と言っても町内ではないですが県内や圏域内と割と近距離が多く使われているみたいで、東神楽大学では空港が近いこともあり東京企業などを中心に狙っていましたが、旭川市の企業団体にもアクションを起こしていくことで利用者増につながる可能性があることを気づきました。

3.フリースペースの設け方

1Fの真ん中が巨大な本棚に漫画をはじめ様々な書籍があるのを中心としてフリースペースとなっていて自由に出入りできます。仕切りも無くそのままカフェと隣接をしていて窓も多い為とても広々と解放感があるスペースが生まれていてます。東神楽大学ではフリースペースは廊下に少し椅子が置いてあるぐらいで広くは用意ができていないので、利用者の想定はしなくてはいけませんがあるといいなとは感じました。ただやはり間口と構造が解放感があるスペースが作れる場所が無いのでそこは試行錯誤しなくてはいけませんね。

フリースペースと書棚


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