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konami_kise
【読書録】『日本の都市誕生の謎』
今回読了したのは、
『“地形と気象”で解く! 日本の都市誕生の謎』
著:竹村公太郎
著者は、長年国土交通省に勤められた経歴を持つ在野の歴史研究者。
この本は、日本史上の重要都市の成り立ちを、河川インフラの専門家の視点から見直す内容となっている。
なぜ、そこに都ができたのか?
歴史をみると、「日本の中心地」は移動し続けてきた。
古くは平城京の「奈良」、平安京の「京都」、平清盛は「福原」への遷都を計画し、源頼朝は「鎌倉」に居を構えた。
徳川家康は「駿府」を終の住処とし、家康の意思を引き継いだ徳川幕府は「江戸」を一大都市に育て上げた。
だが、「その土地に都市が作られた」という史実を知っていても、「なぜその土地が選ばれたのか」「なぜ中心地が移動したのか」という理由が語られることは少ないように思う。
それらの疑問を、インフラの面から解き明かしていくのが、この本だ。
人間の営みを支えるもの
著者は、文明社会を3層に分けて説明している。
上層が、産業・経済・政治・教育・生活など、私たちが普段目にする人間の営み全般。
中層が、身の安全・食料・資源・情報など、社会のシンフラと言われる分野。
下層が、地形・気象など自然との関わりとなっている。
逆から見ると、まず下層の地形や気象が前提にあり、下層に合わせて中層の社会インフラが整備される。
インフラが十分に整って、初めて上層の社会活動が行えるのだ。
人間の営みは、地形・気象やインフラが欠ければ成立しない。
それは、下層・中層に変化があれば、上層の活動も変化を迫られるということでもある。
奈良から江戸まで、日本の中心地の変遷を地形・インフラの視点から見ていくと、「なぜそこに都市ができたのか」「なぜ中心地が移動したのか」の理由がくっきり見えてくる。
歴史や都市の成り立ち、インフラについて興味がある方にオススメの一冊です。