Vol.17《地方議員研究会「公共施設マネジメント講座」受講記録》平成26年10月
【はじめに】
10月6日~8日に厚生常任委員会の視察を行った。視察目的は、公立病院及び公立老人介護施設の民間委譲、保育園と学童保育の一体運営の先進地視察である(小職ホームページ拙稿「平成26年度厚生常任委員会政務活動報告書」に詳しい)。
対馬市は、6町合併後10年間が経過し、今年度から合併特例により交付されていた合併算定替えによる割増し交付税が逓減されていく。また、人口減少と高齢化は益々加速している。現在、対馬を含む国境離島に特化した特別措置法『国境離島新法(仮称)』の制定に向けた活動を活発に展開しているところで、年明けの臨時国会で新法が国会に上程される予定であるとは言え、厳しい財政状況がそれだけで解決できるわけではない。
視察の帰路、延泊して10月9日に標記講座を2コマ受講した。テーマは、午前中が『失敗しない公共施設マネジメント』、午後からは『「拡充」から「縮充」へ機能ベースの施設再編成』で、講師は元横浜市役所職員で東洋大学客員教授の南学氏であった。受講概要を対馬市に当てはめたものを以下の通り報告する。
【受講概要(対馬市投影版)】
1.現在の固定資産台帳の整備促進
公会計改革に伴う複式会計移行には、公有財産の詳細な把握が求められます。合併後10年を過ぎたのだから普通財産はある程度総務部で一括把握していることと思いたい。また、行政財産についても各担当部署に任せではなく総務部で一括把握を行う必要がある。
2.各公共施設運営形態の今後の方向性を早期策定
老朽化したインフラ、公共施設の更新あるいは撤去するための財源は確保されておらず、昨今これらは地方財政の「時限爆弾」とも呼ばれている。戦後一貫して、社会資本の形成、福祉等のサービス『拡充』が図られてきたが、人口減少、緊縮財政という状況下において多くの老朽化したインフラ、公共施設の更新あるいは撤去を行うにあたっては、単なる縮小・縮減ではなく、いわゆる『縮充』を図らねばならない。対馬市は、外郭団体評価調書を毎年見直し、直営施設を指定管理または民間委譲を進めようとしている。更には新たな総合計画の策定に着手しているが、従来型の総合計画は『拡充』を基本とするもので、『縮充』を基本に進めるには不向きどころか足枷となりかねない。10年スパンの総合計画は、今や現職が再出馬する際のマニフェストづくりの足しになる程度の価値しかないとも言われている。総合計画策定に多額の予算をつぎ込むのであれば、固定資産台帳の早期整備費用に回し、『縮充』に向けた計画に着手しながら今すぐにできるところから『縮充』を実行すべきである。
『縮充』の中心課題は、財源の確保と住民の合意を得ることだ。総務省は今年度から施行された『除却債』の活用を推奨しているが、交付税措置が担保されるかどうか不透明な状況であり、軽々には活用すべきではない。もう一方の住民の合意を得るには、現在の対馬市のように情報開示が疎かな状態では極めて覚束ない。
3.法定点検業務契約の現状と、今後の施設の保守管理費用削減
香川県まんのう町は、200以上もある法定点検業務契約を一括して民間に委託することで、経費を2割以上も削減している。また、最近は、焼却場やし尿処理施設等の大型プラントのメンテナンス費用が適正であるかどうかを試算する部署が多くの大手プラントメーカーに設置されている。設置メーカーの言い値となりかねないメンテナンス費用の削減にも積極的に取り組む必要がある。専門的知識や技術を要することは専門家に思い切ったアウトソーシングを行う方が、リスク回避も可能な上、効率的かつ経済的である場合が多い。
4.指定管理契約業者等の契約先との責任分担の明確化
公共施設における費用負担の明確化、特に事故責任分担の明確化は喫緊の課題である。昨今は、自治体への賠償責任に留まらず、保守点検担当職員にまで、直接刑事責任が課せられる判例が多くなっている。職員の身分を守る上でも、早急に取り組む必要がある。
5.多発する大規模災害に備えた学校施設の避難所機能の強化
地震や津波だけではなく、この数年「異常気象」が状態化し、毎年のように大規模災害が起こる可能性が高まっている。新たな避難所設置は財政上厳しいことを鑑みれば、学校施設等を災害時の避難所として活用できるように洋式トイレやシャワー、更衣室等の設備を整備する必要がある。学校施設はセキュリティにも配慮する必要性から年々閉鎖空間化しているが、山形県の小学校に町立図書館を併設した例もあり、施設の有効利用の観点から、セキュリティに十分配慮し、学校施設を避難所としての機能を充実させる必要がある。
【おわりに】
以上のことを早急に進めるためには、行政に任せておいては手遅れとなる。議会に〈行財政改革特別委員会〉の設置を提言する。