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No.77【最終版(3/8)令和4年3月定例市議会一般質問原稿】

おはようございます。会派自公・協働9番議員の脇本啓喜です。
まず、冒頭に12月の一般質問時の発言で訂正をさせて頂きます。「対馬市の予算の内、一部を3地域に補助金ではなく交付金として配分してはどうか、市民協働を普及させるための『必要経費だ』」と申し上げましたが、『必要経費』ではなく『将来のための投資』と訂正させて頂きます。今回の一般質問も、『将来のための投資』として、2項目一般質問致します。

《人口減少対応(特に社会減抑制)について》

対馬市のラフ

まず、〔パネル①〕1980年から2030年(推計)までの対馬市の総人口と年齢階級別人口推移をご覧ください。1980年に50,810人いた総人口は、2030年には21,815人と50年間でほぼ現在の総人口と同等の約29,000人減少します。また、青で示した年少人口(0~14歳)、オレンジで示した生産年齢人口(15~64歳)、シルバーで示した老年人口(65歳以上)の年齢層別人口の推移から以下のことが読み取れます。年少人口の実数•占率は著しく減少•低下しています。生産年齢人口も実数•占率が一貫して減少•低下しています。一方で老年人口は、2020年頃まで実数•占率が一貫して増加•上昇していますが、2025年から実数が減少に転じます。また、ちょうどその頃生産年齢人口を老年人口が上回る逆転現象が生じます。

対馬市の移動数

パネル②ーa~c〕 a.対馬市、b.五島市、c.兵庫県明石市の年齢階級別純移動数をご覧ください。
a.対馬市は、赤で示した年少人口(0~14歳)、青で示した生産年齢人口(15~64歳)、緑で示した老年人口(65歳以上)どの年齢階級でも10年間転出超過が続いています。

五島の移動数


b.五島市は、2015年から転出超過数が縮減に転じ、ついに2019年から転入超過を果たし、移住者の定着率も高いと報じられています。

兵庫県明石市の移動数(増えている)

c.兵庫県明石市は、〔パネル③明石市の子育て施策一覧〕もあわせてご覧ください。現市長となって以来、福祉、特にいくつかの日本で初めての子育て支援事業を手がける等の充実を図り、年少人口及び生産年齢人口が大幅に転入超過となっています。メディアでも話題になっていますので、ご存知の方も多いかと思います。

人口の増減は出生数と死亡数の差による自然増(減)と、人口移動、すなわち流入数と流出数の差による社会増(減)とに分類されます。これからとりあげる若者回復率で見ているのは「社会増(減)」です。多くの地方都市では、10代の多くが進学等のため故郷を離れ都市部に移り住む「転出超過」となります。そして、総人口で見ても都市部への流出は続いている転出超過状態でした。
ところが、コロナ禍が大きく影響してか、東京一極集中に異変が生じています。

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〔パネル④データで読む地域再生(2022.2.19日経記事)〕をご覧ください。31道県で子育て世代(30~40歳代)の流入が超過するゲームチェンジが起きています。九州でも同様のゲームチェンジは見られ、2021年は長崎県を除く7県で転入超過となっています。

1.若者回復率の改善について
若年層が一旦島外に出るのはある程度やむを得ないと思います。島外には大学もあり、就職先の選択肢も多く、様々な社会経験を積む機会に恵まれるため、旅立つメリットも大きく、ましてや島に残れと無理強いすることは、日本国憲法で保障されている権利『居住移転の自由』『職業選択の自由』を侵すことになります。これからは、対馬に戻りたくなるような仕組みを作るべきで、例えば、「子育てをするなら対馬に移り住みたい」と思える制度を確立させて円滑に運用することで、島外から配偶者や子どもと共にUターン、Iターンしようと思えるきっかけを作ってはどうでしょうか。

(1)若者回復率を重要指標とし、指標改善に取り組んではどうか
若者回復率とは、「10歳代の転出超過数に対して20歳代の転入超過数が占める割合」と定義されます。簡単に言うと、進学で地元を離れた子供たちが、就職や結婚を機会に故郷に帰ってきてくれたかどうかを表す指標です。
〔パネル⑤対馬市の若者回復率〕をご覧ください。
先ほど定義で述べた理由の通り、多くの自治体で10代は転出超過となり、20代は転入超過となります。しかし、対馬市では20代でさえ転出超過となっています。
特に、女性の転出超過が大きな課題と言えます。はっきり言って異常事態です。
対馬に残ることを無理強いしても、残りたいと思える島づくりをしない限りこの状況は変えることができないでしょう。では、どうすればそのような島を作れるでしょう。
支援策を練るとしても、ない袖は振れません。限られた予算で持続可能な島とするためには、戦後石炭や鉄鋼産業に傾斜生産方式を適用して高度経済成長の礎としたように、人材確保のための環境整備に予算を傾斜配分できるよう市民の納得感を醸成すべきだと思います。

対馬で持続的に生活する、特に対馬市の課題解決につながる仕事に就くには、島外で知識や技能を身につけなければならないケースも多くあります。
対馬の子供は、自分がどんな職業に就きたいかよりも、いずれ帰って生活するためにはどういうキャリアを経た方が良いかを考えている人は少なくないでしょう。

地域密着型学習を通じて、対馬市で人手不足が顕著で特に資格等を要する職業を希望する生徒を発掘して、他の進学目的より手厚い支援を検討できないでしょうか。働きながら資格を取得することは非常に困難です。さらに、対馬では未だに家事や育児や介護を主に担う女性は男性以上に困難です。先ずは、成り手不足改善に向けて、県や病院企業団が設けている就学支援制度で対象とならない費用、例えば転出の際の引っ越し費用支援、島内でのインターンシップ受講者及び受け入れ先への支援等の拡充を検討してはどうでしょうか。市長の所見を求めます。

(2)移住者の定着率改善ための受け皿整備について検討できないか
例えば、対馬市においても病床等に空きがあるのに、主に医療•介護従事者の成り手不足と低い職業定着率が原因で慢性的な人手不足となり入院入所が困難な状況に陥っています。近年、国がそれらの職種従事者の処遇改善の支援を実施しています。対馬市独自で更に賃金上乗せ支援を実施してはどうでしょうか。ところで、昨年6月定例市議会一般質問にて、対馬市において女性が男性と同等の給与を得られたり同様に昇進できる職種が少ないことについて触れました。対馬市において合計特殊出生率対象年齢人口の男女比率は約12対10と圧倒的に男性の割合が高く、歪な男女比となっています。女性向きの職業と捉えることは性差別の助長とも言えますが、現状を鑑みれば当該事業従事者を支援を手厚くする意義は高いと思います。市長の所見を求めます。

2.雇用対策について
先程明石市の充実した子育て支援策とその素晴らしい成果をご紹介致しました。しかし、対馬市がその施策を実践しても同様の成果は得られないでしょう。

それは、明石市と対馬市の地政学上の環境が大きく異なるからです。明石市は通勤圏内に神戸市等の雇用の場があることに対し、対馬市では対馬市内に雇用の場を用意しなくては、移住者を増やすことは難しいと考えられます。

昨今、リモートワークやワーケーションといった職場と住拠点が遠隔でも可能な働き方が話題となっていますが、対馬市における脆弱な高速通信回線整備状況や、他の自治体も同様の取り組みに尽力していらっしゃることを考慮すれば多くは望めません。

また、企業誘致も先日の会派代表質問に市長が答弁したように、対馬市には輸送コスト等の大きなハンディキャップがあります。それではどうすれば良いのか。そこで、次に取り上げる雇用拡充施策の充実を提案します。

私は対馬市の現状の産業を再構築して雇用を拡充することに力を注ぐべきだと考えます。唯一、成功する可能性がある企業誘致はESG投資の対象となる事業でしょうが、今回は時間の都合上省きます。

地元産業の再構築と兼業推進の充実を図るため、以下の2つを提案します。


(1)小規模M&A等事業継承マッチング支援事業推進が必要だと思うが対馬市として支援できないか

この件では、地元税理士事務所や対馬市商工会、㈱十八親和銀行、㈱日本M&Aセンターに資料提供等大変お世話になりました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。また、対馬グローカル大学のWEB講義も参考にさせていただきました。


《廃業を回避するM&Aの積極的活動支援展開の意義について》
さて、M&Aとは、企業の合併買収のことですが、
M&Aに関しては、30年以上前にヒットした映画ウォール街のような乗っ取りのイメージが、未だに特に地方ではついて回っています。

しかし、ここで提案したいことは、中小零細企業の廃業をM&Aを活用し、廃業しようとしている事業主、譲渡先、地域の「三方よし」を実現するイメージです。

対馬市でM&Aを推進しようと思う理由は以下の通りです。

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〔パネルA.単なる廃業増加はもったいない〕をご覧ください。

単に廃業してしまうと以下のような逸失利益が考えられます。
①現事業主には、〈事業譲渡の利益が生じない〉
②事業承継者に引き継がれる資産が埋もれたままとなる
③雇用を守ることが最も地域貢献となる

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パネルB.全国の経営者および企業の実態調査結果〕をご覧ください。

対馬市のM&Aをめぐる実態を調査しようとしたのですが、残念ながら適当な資料がありませんでしたので、㈱日本M&Aセンター社提供資料に沿って、日本国内における中堅•中小企業M&A増加の背景について触れます。

多くのデータから、経営者の高齢化が進行中であることが読み取れます。経営者が若い場合や、経営者の交代があった企業の方が高業績であり、社長の年齢と企業の業績は逆相関が見られます。後継者不在率は悪化しており、2020年休廃業•解散企業件数は、倒産件数の約6.4倍です。しかし、廃業企業の内6割以上が黒字で、将来業績不振を抱えていない企業も3割以上あります。経営者の在任期間が長いほど親族への承継割合が高くなりますが、かつては全体で9割を占めていました。親族内承継が最近では親族外承継が3分の1を占めています。ただ東京都内の経営者ですら、約半数の経営者がM&Aについて「よくわからない」と回答しており、まだ認知度が低いようです。

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〔パネルC.M&Aを巡る企業の全国的実態調査結果〕

M&Aに関する経営者の相談相手は、顧問の公認会計士•税理士が〈59.1%〉と最も高く、取引金融機関が〈42.3%〉と高い。これに対して民間のM&A仲介業者は〈17.4%〉まだ低い水準で、商工会•商工会議所は〈9.1%〉と意外に低いようです。

M&Aを実施した企業の満足度は高く、約7割の企業がその結果に肯定的です。

地元税理士事務所や商工会で対馬市内の事業承継をめぐる現状をお聞かせいただきました。地元企業に密着している税理士や商工会を中心に、市役所及び労働関連出先官庁の連携によるM&Aマッチングとその後の経営支援が期待されています。

何よりもデータの収集と整理が覚束なくては始まりません。先ずは、対馬市におけるM&Aのニーズを早急に調査してはどうでしょうか。市長の答弁を求めます。

(2)対馬づくり事業協同組合支援の今後の展開について答弁を求める
この件につきましては、海士町役場、総務省自治行政局地域政策課、そして対馬地域づくり事業協同組合理事長にご教示賜りました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

私は、特定地域づくり事業協同組合を一昨年の市議補選の選挙広報でも取り上げて参りました。働き手にとっては、事業のリスク分散、ひいてはワークシェアが普及できれば、子育て世帯が働きやすい労働環境の提供も推進され、少子高齢化対策に多大な貢献が期待出来ると思われます。雇用主にとっては閑散期の人件費削減と繁忙期の人材確保。一次産業の担い手不足解消。6次産業化の構築等が期待されています。離島では流通コストがネックとなり企業誘致は厳しい上、そもそも、古から対馬は半農半漁等複数の業で生計を立てて来た歴史的背景があります。また、昨今は、多くの企業で副業が可能となりつつあります。通告していた対馬づくり事業協同組合の現状と将来像については、今議会の施政方針や行政報告等で市長より詳細な説明がございましたので、答弁は割愛してもらって結構です。

次に、前項で医療•介護従事者の経済的支援について質問しましたが、ここで職場環境の改善についても質問致します。
前述したように、当該事業従事者の定着率の改善は、経済的支援以外に職場環境の改善が喫緊の課題です。育児や介護と向き合う時期の離職が多くみられます。それは、夜勤等の対応が困難であること等でしょうが、そもそも従事者不足が根底にあると考えられます。フルタイムは困難でも、可能な時間帯に働ける環境を整えることでそれをカバーできないでしょうか。

対馬づくり事業協同組合には、そのニーズに応えることが期待できます。また、ギグワークでも可能でしょう。ギグワークは「単発の仕事を受ける働き方」を意味します。ギグワークの代表的例が、ウーバーイーツの配達員です。継続した雇用契約がないので、働く時間や場所などの自由度が非常に高い働き方と言えます。市場が小さい離島においては、経営が成り立たないという理由で放置されいるニーズが多くあります。その担い手の一つとしてシルバー人材センターも思い当たります。近年、対馬市は社協に委託して2名の再雇用市役所職員がシルバー人材センター事業の充実に当たり一定の成果を上げていることは評価できると思います。しかし、高齢のため困難な案件もあると思われます。ギグワーカーは、シルバー人材センターで賄えないニーズや、特定地域づくり事業協同組合社員よりも柔軟に対応できるメリットを活かしたニーズに応えることが可能です。

民間人材派遣会社と提携し、多様な働き方の選択肢を増やすことで、元々の在住者も移住者も生活の糧を得られる環境を整備することが持続可能な島への一助となると思われます。市長の所見を求めます。

3.中高年まで婚活支援対象年齢を引き上げることについて
婚活といえば少子化対策と考えがちですが、孤立孤独対策、介護人材不足の緩和、寡婦寡夫となった際の配偶者側の親戚や友人からの支援が期待できる等、本人のみならず社会的負担軽減にもつながる有意義な施策となるのではないかと考えられます。市長の見解を求めます。


【1.若者回復率  再質問】
明石市の子育て支援策で、特筆すべき事業は〔パネル⑥養育費たて替え制度〕だと思います。簡単に言うと、取り決めた養育費を離婚の相手方が未払いとなっている場合、市が立て替えて養育費支払い義務者から取り立てる制度です。実際は、市が支払い義務者に勤務先の毎月の給与を差し押さえる旨通達することで、職場に知られたくないとの思いからか、ほとんどの者が支払うそうで、市役所の督促負担はそれほどないようです。
大半のシングルマザーは養育費の未払いに苦しんでいるとのデータは多く、対馬市でも当該事業の実施に向けて検討してはどうでしょうか。

【2.雇用拡充  再質問】
[割愛]
M&Aに関しては、乗っ取りといった負のイメージが、未だに強いと申し上げました。しかし、メルカリ等を利用した「せどり」と同様とは申しませんが、一旦M&Aした会社を更に価値を上げて転売することについてはむしろ肯定的に解してもよいのではないかと私は思います。実は、現在M&A市場は買い手が多い売り手市場です。買い手の多くは、M&Aを複数手がけた企業です。それは、ある意味M&Aの成功例が多いこと、端的に言えば儲かる手法だと認識されているということでしょう。狭い島内だけでなく、島外にも目を向けて、M&Aのマッチングとその後の支援に対馬市も加わることを、再度提案します。市長の所見を再度求めます。

 先月、九州の地域密着型事業先進事例RKBの2つのテレビ番組を視聴しました。行政が地元企業を支援する際は、収益アップももちろん大切ですが、本来の使命(目的)である、貨幣的価値以外での地元社会への還元価値にも思いを馳せる重要性を改めて感じました。

椎葉村の鈴木組は、チョウザメ養殖のみならず独学でキャビア生産を学び自社生産化し収益拡大し、6次産業化の先進事例として知られています。同社の後継者が、地場産品ねむらせ豆腐という唯一の生産企業が廃業のため片付け中に、たまたま通りかかりその場で事業承継を申し出たそうです。生産企業やねむらせ豆腐のフアン消費者から大変感謝されていました。地場産品販売所のヒット商品、あるいは地元の食文化を守るという大きな意義もあるM&Aとなっているようでした。
[割愛終わり]

【シングルマザー支援に求められる施策とは⁉️】
《1.様々な支援制度の認知度の向上と、申請への心理的ハードルを下げる取組み》

対馬市でも、世界的な取組みである一人親世帯への物質的支援事業であるハッピーバスケット事業(もちろん物資をお届けする際に様子を伺う等の精神的支援も並行して実施)を、社協が中心となって展開されています。昨日も、事業協力ボランティアの方から、現場の声をお聞かせ頂きました。

今困っているのだから、今必要な物資をお届けすることは大事な事業です。ただ、その事業があることを知らなかったり、申請を躊躇っているシングルマザーも多くいらっしゃると、事業に関わる方から聞き及んでいます。

《2.経済的自立を支援する取組み》
新聞記事のような、労働スキルの習熟と、仕事の斡旋により、経済的自立を支援する取組みを、行政も開拓し支援することが求められていると思います。
地方ではよく、仕事が無いとの嘆きが聞かれます。確かに仕事の絶対数も相対数値も少ない・低いのは事実でしょう。しかし、私は量の問題よりも、質のアンバランス解消が重要ではないかと感じています。つまり、仕事はあってもその仕事を熟せるスキル不足が原因で労働受給のマッチングが成立しないことを、解決することが重要だと言うことです。このことについて市長の所見を再度求めます。

[脚注]
ギグワーク
ウーバーイーツはできて一般人(非免許業者)は本来のウーバーつまり配車事業はできない。安全を確保したうえで合法的に言わば白タクができる特区を申請してはどうか?

限られた時間で多くのやらなくてはならない課題がある中、何を課題と選択し、どういうコンセプトで課題解決に取り組むか、即ちイシューの設定がまずもって重要です。更に。良いイシューとはスタンスが明確かつ行動の変化をもたらす常識を否定しているもので、良いイシューを特定するには一次情報の収集が重要です。

今までの常識に囚われた手法では、課題解決は覚束ないでしょう。これまでと違うコンセプトで課題解決策を検討することが求められると感じています。

成果を上げるとは、目標達成ではなく目的の達成であることを常に念頭において、議員活動に努めて参ります。

👇㈱日本M&Aセンターインタビュー記事


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