プライベート・ビーチ (後編)
翌週、ぼくと妻とM子とMっちゃんの4人は「京急久里浜駅」のホームに降り立った。
夏らしい天気で、遠くには大きな入道雲がもくもくと見えた。
歩いて行くのは大変だったので、今回はタクシーで行くことにした。
「燈明○海岸までお願いします」
今回の海水浴はぼくがホスト役だからね。しっかりエスコートしなくては。タクシーは滑らかに動きだし、あっと言う間に目的地に到着した。
「あー、4、5人は先客いるね。でもあの岩場の方だったら全然人いないし、アッチにしよう。にしても穴場だよねー、海すごい澄んでるし」
得意気に説明する。M子とMっちゃんもまんざらでもないような表情だ。
「なんか、砂浜に小屋あるけど、高床式になってんだね。お洒落だね」
ぼくらは砂浜から一段上がった、林の中の遊歩道を歩く事にした。
ぼくとMっちゃんはテンションも上がり先をスタスタと急いで進んだ。
「あ、荷物2人に持たせたままだ」
と慌てて引き返すと、妻とM子がビールや氷などが入った袋を持ちながら姿を現した。すると、妻が近づいてきて耳元でこう言った。
「M子のやつ、いつもは(えーんM子、重い荷物持てないー)とか言ってるくせにさっき林道で荷物をヒョイと担いで、窪地をジャンプで飛び越えていったよ。あいつー、猫かぶってやがった」
ま、まぁ、そういう事あるよね。
目的地に着き、ぼくらは水着に着換え、海水浴を多いに楽しんだ。
岩場だったが、他に人もいないし、まるでプライベートビーチじゃん。
「ね、ね、凄い海綺麗で人もいないっていったでしょ」
ぼくは得意気に話しかける。
派手な色のビキニを着て岩場に寝そべるM子を眺めながらMっちゃんと
「うーん、夏だぜ」
遊び疲れて少し寝てしまった。そろそろ日も落ちてきたし、帰ろうか。あれ、来た道が、、、
海になってる。
潮が満ちたんだ。そういえば、来る時に見かけた高床式の小屋はあのあたりまで水位があがるって事、、、?ヤヴァい!!!
「おぉーい、起きろ!道がなくなるぞ!!」
寝ぼけまなこの3人を起こし、荷物をまとめて慌てて帰りを急いだ。砂浜は完全に潮が満ち水面に覆われていた。膝上まで水に浸かりながら、ジャブジャブ歩いて帰路を急ぐ。
歩いている間にも徐々に水位は上がり到着する頃にはももまで水位が上がっていた。
いやはや、なんとも潮の満ち引きが強い場所なんだね。驚いたよ。まぁ、遊歩道まででれば大丈夫だったろうけど。満ちるとあの場所は完全に海に覆われちゃうんだね。
ホストにもわからない事はあるわな。兎に角、街に戻って酒でも飲みなおそうや。
商店街の小さな居酒屋に入り、カウンターで先程のトラブルの話で盛り上がっていると、店主が一言
「お客さん達、クビキリで遊んでたの?あそこ、潮の満ち引きが激しいから地元の人もあまり行かない場所だよ」
「へぇ、そうなんですか、確かに他に人もいなかったし。、、、え、、クビキリってなんですか?」
.
.
.
「ああ、昔はあそこ処刑上だったんですよ。だから地元ではクビキリって呼ばれてるんです。石碑あったでしょ」
「、、、、クビキリ、、、首切り、、、!?」
なんか、酒が、、、若干、、不味くなったんですけど。おぉーい!塩もってこーい!!!撒いとけ撒いとけ!!
後日、ネットで調べると
伝承では、罪人が処刑されていくたびに、その罪人の断末魔の叫び声と、罪人の家族たちの泣き叫ぶ声、あるいは見物人の騒ぐ声が、いつもは波の音しか聞こえないであろう対岸の鴨居までも聞こえた、という話が残されています。
「、、、罪と罰か」
にしたって、M子!!なんちゅうとこで派手なビキニ着て寝そべってたんだよー!!!
終わり
ちなみに燈○堂海岸は実際には穴場的スポットとして、BBQやダイビングスポットとしてとても人気のあるビーチですので、悪しからず
『金は天下の周り者』そうです、サポートして頂けたらアナタにそのサポートは還ってくるでしょう、おそらく。さぁ、怖れずポチッとな。 ありがとうございます。