人生初めてのアルバイト
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高校生になると、アルバイトが出来る年齢になる。校則では禁止だったが、知ったこっちゃーない。
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人生初めてのバイトは、ガソリンスタンドだった。
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アルバイト初日、緊張しながら休憩室の扉を開けてみると、、、
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「コヤケさん、可哀想だよ。もう、辞めちゃうんだってよ」
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「コヤケさんには、コヤケさんなりの考えがあるんだから。上の考えとは合わないんだろ」
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はて、なんでしょう、この会話とこの空気。泣く女子高生スタッフと、それをなだめるリーゼント風の男。コヤケさんって誰?
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「あのー、今日からアルバイトする青木です。よろしくお願いします」
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二人は、ぼくに軽く会釈をすると、また、さっきのコヤケ騒動の続きにはいった。なんか、居心地わるーい。
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あー、コヤケさんって面接の時の店長ね。あれ、辞めちゃうの?まぁ、いいけど。
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思い出したようにリーゼントが話しかけてきて
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そのカレンダーにはスタッフ全ての誕生日が書き込まれていて、〇〇が欲しい!なんてメモ書きまでついている。
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ぼく、まだみんなの事まるで知らないんですけど。今月誕生日のお会いした事もないこのミヤナガさんの為にお金払う訳?ナンかなー。
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時間になるとまずは社員の人に接客の基本と、ガソリンの入れ方を教わった。これが軽油ね、これがレギュラーね、これがスーパーゼアスね。なんだスーパーゼアスって?よっしゃ、バンバン入れるぜ!!
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「っしゃらしゃいませー↗!!」ってね。
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すると、さっきの社員さんが近づいてきて
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「あー、そうそう来月から、ここリニューアルオープンするから、そのキャンペーンを君にはやってもらいたいんだよね」
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「はぁ、、きゃんぺーん?」
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「じゃあ、コレね。一軒一軒配って。ちゃんとインターホン押して、会って渡してね」
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そう言われてドサッと渡されたチラシの束。
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ガソリン入れたらboxティッシュ5箱プレゼント!と書いてあるこのチラシ。配るの?おれが?ピンポンして?
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ガソリンを入れる前からチラシ配りに転属される。なんで?まぁ、なんだかよくわかんないけど、しょうがないピンポンしてみるか。
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ピンポーン。
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「はーい」
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「あのー、ガソリンスタンドのキャンペーンでチチ、チラ、チラシを配っているんですよ」
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「はぁ?」
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「で、この紙、会って渡せって、、」
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「今、食事中なんでポストに入れておいて下さい」
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一件目惨敗。
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そんな感じで何件か回って惨敗を重ねているうちに、、、なんだこの感情?身体の中から沸き立つコレ。そうだ、わかった。コレだ!!
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やってられるかー!!!あほかー!!!
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なんで、ガソリンスタンドに入ったのにNHKの集金みたいな事やらされているんだよ!!
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あーあ、駄目だコリャ。かといって捨てる訳にも行かないしなー、倫理的に。そうだ。ピンポンしなければいいんだ。ポストに入れるだけにしよう。
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そうやって仕事内容を変更すると、まぁまぁ楽しくなった。
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でもガソリン入れたいな。だって、それやりたくてガソリンスタンドに来たんだもの、、、。
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そんな事を考えながら16歳の青年はポストにチラシを投函し続けた。