緋色の飲み物
.
.
老紳士がグラスをスプーンで軽く叩くとキンキンと音が鳴り響き、数十人の群衆が視線を老紳士に向けた。
.
. 「皆様、本日は寒い中お集まり頂いて真に光栄です。ひとつ皆様にお知らせしなくてはならない事があります。実は先程皆様が飲まれたワインに猛毒を仕込んでおきました。30分程経てば、ここにいる方々全てが悶え苦しみながらゆっくりと死ぬ事になるでしょう。」
.
.
それを聞いた婦人は卒倒し、男は罵声をあげて老紳士に飛び掛かったが、屈強なボディーガードに抑え込まれた。椅子をなぎ倒す者やどうせ死ぬならと裸になって女性に襲いかかろうとする者、てんやわんやの大混乱の30分が過ぎた頃、老紳士は立ち上がりおもむろにこう言った。
.
. 「先程の話はデタラメです。どうです?滅多に味わえない経験ではありませんか?恐怖、これが今夜最初のオードブルです。ようこそ''感情レストラン''へ」
.
.
いいなと思ったら応援しよう!
『金は天下の周り者』そうです、サポートして頂けたらアナタにそのサポートは還ってくるでしょう、おそらく。さぁ、怖れずポチッとな。
ありがとうございます。