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ホントは何がいいんだっけ? 616
4年ほど前から猫と暮らし始めるまで、わたしは動物と暮らすという経験がなかった。
もちろん、うちの周りには野良猫とか野良犬とかわんさかいたし、田舎だから色々姿を見かける動物もいたけれど、その姿で種類の識別がつくってことと、その個体のニーズがわかるってことは当たり前だけど全然別の話だった。
わたしが猫と暮らし始める数年前、関西で猫カフェを営んでいた友人のお店を訪ねたことがあった。
彼女は3匹の猫と一緒に暮らしていて、住居とお店は同じ建物の上と下だった。
お店とお家がつながっているから、猫たちはその空間を自由に移動していて、お客さんとの関係もあってかいわゆる人馴れしている子達だったと思う。
人に馴れているってことと、人が好きとか得意ってことはどうやら違うらしい…ということはその時知ったのだけど。
よくSNSなんかで見る、猫カフェでお客さんの膝や肩に乗ってくる人懐っこい猫の姿。
あれ、猫と暮らすと自分にも起きるんじゃないか…なんて勝手に期待していたんだけど…残念ながらうちでは起こらなかった。
以前、その友人のお宅に泊めてもらった時のこと。
彼女共々同じ部屋で数人で雑魚寝したのだけど、その準備をしていた時友人が「さぁて、今日は誰の足元に行くんだろうねー」なんてニヤリと笑っていた。
その時のわたしは「慣れもあるだろうから、もちろん彼女の足元だろう」と思っていたのだけど、フタを開けてみれば…わたしの足元で猫が丸くなって眠り、気づけば夜が明けていた。
彼女は「その時、一番癒す必要がある人のところに行くんだよ」なんてことをポロッと言っていたけれど…えぇ、一番だったかどうかは知らないけれど、その時のわたしは確かにひよひよしていたし、つまり猫の狙いのない温かさとズシっとくる重みに癒されたのは確かだった。
そんな猫とのお付き合い大先輩の彼女は、いつも猫が近くにやって来る度に「え?そんなに強く?」とこちらが驚くほどの強さというか勢いで、尻尾の付け根をパシパシポコポコと叩いていた。
猫初心者のわたしは「え…そんなに叩いて大丈夫なん?」とおののきながらも、猫との付き合い=仲良し度ってこんなとこから測れるってこと?なんてことも学んだのだった。
そんなモデルもいたからか、うちに猫がやって来た時からそれなりにお尻ポコポコはしていたのだけど、ある時ハタと思ったのだ。
「人間はこれが好きでしょ?って思ってるけど、ほんまなん?」と。
「この子は本当はどんな風になでて欲しいって思ってるんだろう?」と。
そう、この猫の本当の好みというかニーズはなんだ?と思ってから、強弱から早さから色々試してみたのだけど…
本当に彼は素直で、好みのなで方じゃなければあっという間にヌルッとその手をくぐり抜け別のところへ行ってくれる。
つまり、とてもわかりやすかったのだ。
結果としては…我が家の猫は本当にやさしいタッチが好みらしい、ということが判明したのだけど(注:わたし調べ)…他の子がどうなのかはわからない。
そう、わからないのだ。
それっておそらく全員違うのだ、きっと。
そして毎日違うのだ、きっと。
そして「人間ってこうなんでしょ?」「女の人ってこうなんでしょ?」「40代ってこうなんでしょ?」って数限りない勝手な思い込みを恐ろしい範囲に広げているとも思わず採用して生きているんだ、きっと。
そんなこんなで、今日も今日とて彼をなでる時には「今の彼は何をご所望だろう?」に集中している。
ビンゴの時には甘い顔をして振り返ってくれて正解を伝えてくれる。
かわいすぎてこっちが溶けそうになる。
そして、わたし達も「自分ってこう」なんてざっくり思ってるけれど、見逃していたり、知らない間に変わっていたり…案外油断ならないもんだと思っている。
だから毎日自分に聞いてみるのもいいかもしれない
「で、今日は何がいいんだっけ?」なんて。