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かすかな香り  543

神戸でも雪が降ったと友人のインスタで知った本日。

午後から畑にいたのだけど、西の空には天使の梯子がかかっていた。
劇的な空はそれはそれで美しいのだけど…「ということはお天気も怪しくなる?」なんて思っていたら、夕方には瀬戸内でも冬らしくしぐれてきた。

風も強いし冷たいんだけど「冬だからね」だし、それはそれで「らしくて」いいと思っている。
いつからだか、天気予報のコーナーでは夏が始まれば「この暑さいつまで続きますか?」冬が始まれば「この寒さ、いつまで?」なんて予報士さんに尋ね始めるようになって、その度に「いや、始まったばっかりやん」なんて突っ込んでしまう。

今時の進路指導もおんなじように感じていて、入学したと思ったら「次の(進路の)こと考えろ」っていうの、賢さや合理性の象徴みたいに当たり前になってるけど…それやって「今」をどのくらい味わって没頭できてるんだろう?なんて考えてしまう。
思ったより人間は「器用」になってるのかもしれないけどさ…。


さておき、そんなしぐれ始める前には橙を収穫していた。
そう、お正月飾りでお馴染みのアレ、ポン酢やマーマーレードの常連さんのアレです。

橙は皮に含まれる油の刺激が特に強いから、絞って使う時には腹巻きラインをグルッと一周皮をむいてから上下にカットして使うと口が痺れなくていいんだけど、そんなだからか枝から切り離している時でも、コンテナに移す時に橙同士がぶつかりあった時でもふわっと橙の香りがしてうれしくなる。

そう、柑橘に慣れているわたしでも「いい香り」って毎回思う。
小さな頃はいろんな理由で苦手だった柑橘も、この香りだけはずっと「いい香り」だった。
みかんにはみかんなりの、八朔には八朔なりの食べる時以外に香る香りがあって、そっちの方が「いい香り」ってうれしくなることが実は多いかもしれない。
直接果実から香る香りよりもかすかなのにね。


そう思うと、自然の中にいると何かしらの香りを鼻はキャッチしているよね、と気づく。
土の香り、草の香り…そう、花の季節じゃなくたって、何かに鼻を近づけなくたってその場所の香りがある。

アロマオイルやお香みたいに自然をギュッと集めた洗練された香りも素晴らしいのだけど、こういう名前のつかない、でもかすかに「ある」香りに触れられることも実は幸せなんだと思っている。

名前がつかないからなかなか説明や共有がしづらかったりするんだけど、こういうことのカケラを分かり合える人に出会えたりすると、それもまた幸せ。

小さかったり、かすかだったりするけれど、幸せはそこらじゅうに散りばめられているってことを思い出した日だったのでした。





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