職人技にしびれた日 487
久しぶりの車の前が見えなくなるような大雨の中、今日も高速道路を走っていた。
暗くなり始めた道を走っていたら、左車線の前方辺りがなにやらピカピカ点滅している。いつもなら赤色灯がビカビカしていて、それは大体道路公団さんの車だったりするのだけど、それが今回は赤と青のランプが点滅している…
「…アメリカみたいじゃないの」
なんて、数少ない海外のイメージを当てはめてみるも、何が行われているのかわからない。
ジリジリと近づいていると、赤と青の点滅ランプは白いトラックの頭でピカピカしている。
「ん?公団でも警察車両でもない?」と思い、その前を走る大きなトラックに目を凝らす。
以前見たような大きな鋼材の運搬中?
新幹線の車両もこんな感じで運ばれるんだったっけ?
ロケットとかも運ばれたりするんだっけ…?
なんて、次々と大きくなる妄想を膨らませながら横並びになる。
チラッと点滅ランプのトラックの運転席側のドアを見ると「レッカー」の文字。
「あ、レッカーしてるんだ」なんて簡単に頭で理解したところで、不思議なのは「前のでっかいトラックを?」である。
船の台船みたいに後ろから押すシステムの車はないはずだし…なんて思いながら点滅ランプのトラックを追い越すと前のトラックが近づいて見える。
よくよく見ると、2段式のキャリアカーっていうの?トレーラーっていうの?車を何台も一度に運ぶ大きな車、それが走っているのだ。
なるほど、車の中身が判明しても…それと「レッカー」が繋がらない。
わたしの中で「?」が点滅していたら、運転しながら旦那さんがいうのだ
「これをレッカーしてるんやん!」と。
「?これをレッカー?」なんてちょっとよくわからず眺めていると、ジリジリ前方の方が見えてくる…と「あぁ!」…思わず声が出た。
そう、車を何台も積んだトラックを、中の車たちを積んだままレッカーしている大きなトラックがいたのだ。
後ろから見てもわからなかったのは、そのレッカーされている車満載のトラックがユラユラ横揺れしたりしていなかったからだったとわかった時に「ふわぁぁ」と感嘆した。
あんな何台もの車を乗せた不安定で大きなものを、横揺れもさせずにレッカーできるなんて…これぞ職人技、これぞ専門の人だからこそできる人助け!である。
わたしも高速道路でパンクを直してもらった記憶が蘇ったけれど、本当にかっこよかったし、手際の良さたるや言葉にならないくらいだったし、何より助けてもらったことに本当に感謝だった。
そんなことを考えていたら、今日病院内を案内してくれた「気だるそうな」看護師さんだって言い方を変えれば「冷静」「落ち着いてる」ってことなんだよな…なんて自分が勝手に当てがっていた「形容詞」が変わってくる。
そりゃ、救急対応の看護師さんが何か起きるたびにキャーキャー怖がってたら、舞い上がってたら、仕事にならないよね…人当たりが第一のお仕事なわけでもないんだし…そもそもそれって、こっちが勝手に「期待」してるだけだもんな…。
そんなところでプロとして仕事する人のありように、想像力の欠けた素人(わたし)が第一印象でつけた形容詞を思い返していまさらだけど恥ずかしくなる。
こうして、普段目にする機会のない仕事を見ると、こういうたくさんの人たちの働きのおかげでこの世界が循環している、呼吸している、生き続けてるんだなぁ…と改めてしみじみ理解する。
「で、自分は何の足しになっているんだっけ?」
そんな問いは、今日はやめとこう…なんて思いながら、ジンジンする足を無心で揉む夜だった。