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オランダ+日本二拠点味噌屋起業した私が思う女性起業家にとってのワーク・ライフ・バランス③


「そんなんじゃ結婚できないよな。」
「へぇ、女性はラッキーだな。」
「このままだと行き遅れるぞ。」
「タイムリミットも迫ってきてるんだし。」
「やっぱり子供を産むのが女の幸せよ。」
「Did you come here to find a husband?」
(ここに来たのは結婚相手を見つける目的?)
オランダで初老のオランダ人男性に道で突然言われて、かなり色々な意味でびっくりした一言です(笑)

男女問わず、身近な人、そうでない人に限らず、
私が20代半ばから現在にかけて、何度が言われてきた言葉です。
平成27年(2015年)8月に女性活躍推進法(正式名称は女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)が国会で成立しました。
もう10年近く前の事。
法的な部分があるが故に、見える形として、
日本でも女性の働きやすさや、結婚や出産後もスムーズなキャリアの継続と両立が進んでいる様に感じる事もあると思います。
実際はどうなんでしょうか?
表面だけではなく、もっと奥底にある個人の価値観や、
それらが集約された社会の「当たり前の感覚」というものは
今日、明日で変わるものではないと思います。

かなり前からポロポロと目にする「〇〇様」と言う表現。

「お一人様」
「妊婦様」
「子持ち様」
「不妊様」
「非子持ち様」

女性活躍推進法成立からこの10年間の間に、
会社(あくまでざっくりですが)の仕組み自体は、
法の助けもあって、変わってきた(変わらざるえなかった)と思います。
しかし、会社、社会というのは日々変化する人間の集合体であり、
生き物です。
電源の様に、スイッチ一つで全てが
白黒決まるハッキリしたものではありません。
「○○様」と言う、一見すると丁寧だけど、
うっすら皮肉さが香る表現が広がっているのは、
「自分にしわ寄せがきて、なんだか損をしている気がする。」という
一人ひとりの不満が湧き出てきたからだと思います。
人の心の変化と、社会の仕組みの変化のスピードの中にあるギャップが、
私たち一人ひとりに期待される「優しさ」だけでカバーできなくなっているのでしょう。

様々な方からの私の「プライベート」に関する助言は、
20代半ば頃から突如「結婚、妊娠、出産」に関するものが強くなりました。
その幾つかは、上に書いたものです。
助言が増えるだけではなく、周り友人達の環境も変化してきました。
先ず25歳手前で小規模の「結婚」波が来る。
これは単なる予兆でしかない。
30歳手前は本格的な「結婚」波になる。
そして波に付け加えて、周囲からの「いつするの?」「このままじゃまずいよ。」「みんなしているわよ。」という水しぶきが飛んでくる。
35歳手前で小さな「結婚」波が来る。
それど同時に大きな「妊娠・出産」の波が反対側からくる。
40歳を過ぎると、もう波はおろか、水しぶきすら飛んで来なくなる。
周囲が静かになる。
周囲が静かになると同時に
自分の内なる何かが騒がしくなる様に感じました。
今まで周囲の雑音で聞こえなかったこの静かな音。
同時に女性としての体の生殖機能のリミットが近づいている事を、
自分の日々の体の変化から感じる事が増えました。

「産める。というオプションがある中でのあえて産まない。
ではなくて、本当に産めなくなる日が迫ってきてるんだ。」

高校2年生の夏休み、
我が家に友人たちが泊まりに来た事がありました。
私は女子高校だったので友人はみんな女の子です。
田舎なので、大してする事もなく(笑)、
なんとなく一人ひとり将来のライフプランを考えてみようよ!という
流れになりました。
当時は当たり前の様にスマホで動画撮影!とはいかなかったのですが、
私がよく使用していた8ミリビデオに各自プランを発表しながら
録画しました(今でもこの時のフィルムは残っています)。
17歳の私が描くライフプランの中に、
結婚も出産も存在していませんでした。
みんなのライフプランには当然の如く、その二つが存在していました。

「結婚?しないよ。苗字変えるのも嫌だし、
一生彼氏・彼女(パートナー)で良い。」
「子供?いらないよ。寂しかったら犬を飼うから。」
それが私の答えでした。

私は20代後半から30前半、
父と母を約2年の間に立て続けにで亡くしました。
そう、それは結婚と出産の波がひっきりなしに一番押し寄せる時。
周囲の結婚、出産というどちらかといえば、ハッピーな出来事の波の中、
その数年間で私が直面した事は、
ロンドンでの勤め先の会社の倒産と突然の解雇、
父の病院への付き添いと介護、相続(2回)、葬儀(2回)、裁判、お墓。
そして海外でのコネゼロからの単身事業の立ち上げ。
知らず知らずの間に、人生の経験値が上がった気がしていました(笑)。
あまりの様々な変化に
「安定なんで単なる幻想で、そもそもないもの。」
「自分しか頼れるものはいない!」
「人生は明日突然終わるかもしれない。」と強く感じるようになりました。

「ゼロからの起業」「起業の成功法」「女性起業家のあり方」
多分この様な本はある程度の数見つける事ができるのかもしれません。
ただ「女性起業家と妊娠・出産」「起業が先?結婚が先?出産が先?」などの本は少ないのだろうと思います。
私がイギリスの大学でマーケティングを専攻していた時、
クラスメートも教授も女性の割合の方が男性より若干多かった気がします。
でもその授業の中で学ぶ内容は男女同じででした。
男女限らず、授業の中で数時間でも自分のキャリアプランとライフプランを話し合う時間があっても良いのかな?と今の私は思います。
起業家にとって、自分のプライベートと仕事は切り離せないものです。
それは自分が事業という名の船の船長であるから。
船長の役目は船に乗る全ての人の命を預かり、責任を持つ事。
船が航海し続ける限り、船長は逃げ出すわけにはいきません。
ただ、どのタイミングで、
どの港で休みを取るかはあらかじめ計画の出来ることです。
その時描く未来の形と、実際の形が違くても、
一度立ち止まり、航海の流れを思い描く機会があるだけで、
将来の長期的な航海と目の前の大海原を超えていくには
役に立つ気がします。
船長にとってのメリットは、
「航海のプランを自ら決定し、時には変更し、実行できる事」です。
そして船長は航海の計画だけでなく、
船の中での過ごしやすさや、船員全員の働きやすさも追求し続け、
それによってたとえ嵐が来ても共に乗り越え、
追い風が来たときは共に高く帆を上げて、共に遠く早く進む事ができ、
結果的に早く目標の港に到着する事ができます。
船長は船員一人ひとりの「優しさ」や「能力」に
単に期待するだけではなく、
長く、危険な航海を継続していく為には、
働きやすいシフト作りや設備の充実まもちろん、
何より「幸せな船員達」こそが遠回りな様で、実は一番確実で早く、
質の高い生産性のアップにつながる事を常に、
忘れないようにしなければならない。と私は思います。


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