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「命を考える文化を一緒に作りたい」 イラストレーターnorycoさんに聞く 『死生観光トランプ』を通して 表現したかったこと
こんにちは!多くのご支援、本当にありがとうございます。
さて、『死生観光トランプ』は、世界各国の死生観や弔いの作法がをイラストとキャッチコピーで紹介したトランプです。全国各地のお坊さんや仏教を愛する14人の方々にイラストを描いていただきました。そこで、イラストを描いてくださった方に、『死生観光トランプ』を描いてみた感想や気づいたことなどについてお聞きしました。
今回はブラジル・サンパウロ在住のnoryco(のりこ)さんにお聞きします。聞き手はワカゾーの藤井一葉(ふじいかずは)、書き手は同じくワカゾーの藤井智子(ふじいともこ)です。
ーーnorycoさんってブラジルに住んでらっしゃるんですか!?
そうなんです(笑)。ブラジルに住んでもう14年になります。縁あってお坊さんの主人と結婚して、縁あって主人の布教活動でブラジルに渡りました。今はサンパウロにあるお寺の近くに住んでいます。
ーーブラジルに14年ですか。長いですね。ちなみに、普段はどんな生活をされていらっしゃるんですか?
12月にサンパウロに越してきたばかりなんですけど、お寺と家がくっついていています。だから、新型コロナウイルスのパンデミック以前は毎朝お参りしたりしていました。今は、家で水彩画を描いて、欲しい方がネットで購入できるサイトへ投稿したりしていますね。
ーー水彩画はどんなもの描かれるんですね。確か以前に日本で、絵本も出版されてましたよね?
そうなんです。『青い鳥がなくとき』という絵本を出版させていただきました。
また次の絵本を描いていてネットで世界中の方が購入できるようにしたい!って思っています。ちなみに、水彩画では猫をよく描いてます。
絵本は文章もつくので、物語では仏教、特に浄土真宗のことに絡めて書いています。絵も物語を書くように仏教に絡めたものを描いていきたいのですが、なかなか一筋縄にはいきませんね(笑)。
(norycoさんの描かれるねこたち)
ーーnorycoさん自身、仏教に関わる機会は多いですか?
そうですね。主人が浄土真宗本願寺派の僧侶で、仏教のお話を人前ですることが多いこともあり⋯⋯主人からいろいろ、相談されますね。「楽しめる布教はどんなものか?」とか。それに、ブラジルにもお寺があって、沢山メンバー(門徒/檀家)がいらっしゃるので、いろんな方ともお話しします。
ーー楽しめる布教ですか!いつも仏教の話をしてくれる方が隣にいるのはうらやましい気もします。仏教をはじめ、イラストや文章など多方面に携わってらっしゃるnorycoさんですが、今回死生観光トランプを描かれていかがでしたか。
面白かったです!世界って面白いって思いました。生まれるところが違うと生き方、死に方が全く違うってすごいことじゃないですか?
ブラジル・ロンドリーナにいた頃、知り合いに言われたんです。「日本は死んだら身体を燃やしちゃうでしょ?私はそんなの嫌。」って。それをおっしゃった方は、日本生まれなんですが、長い間ブラジルに住んでいるから、感覚はブラジルでスタンダードな土葬のようにご遺体を地下に埋めていくのが感覚として普通なんですよね。
ーーそうなんですか。生まれた国や育った地域で全く感覚が変わってくるんですね。
(ブラジルの仏教寺院)
昔、夫が体験したことなんですけど、ご遺体がある墓場の場所をもう一度、空けなくちゃならないことがあって、開けたら⋯⋯そこには⋯⋯ものすごい数のゴキブリがいたみたいなんです。
ーーえぇ!!
でも、ゴキブリがいても、お経を続けなきゃダメでしょ。だから、沢山ゴキブリが自分の服にのぼってきてもそのままお経をあげたって聞きました。だから以前に、火葬が嫌って言ってた方に「私は虫だらけになる方が嫌!!」って言ったこともありましたね(笑)
ーー火か虫⋯⋯。
そう(笑)。そうしたら私たちの話を聞いた人が「やだわ。もう死んでるからわからないわよ」って(笑)。同じブラジルでも、いろんな感覚をもっています。
私の生まれは日本ですが、私も小さい頃からブラジルで育っていたらまた違った感覚をもっていたのかもしれないなぁと思います。
あと、トランプを描く際のいただいた事前資料に「葬儀の成功」って言葉が出てきて、葬儀の成功ってなんだ!?ってなりました。葬儀に成功や失敗があるんだって(笑)。
ーー確かに⋯⋯成功と失敗基準の詳細は気になりますよね。今回のトランプは様々な国の、様々な時代のことをイラストにしてくださいましたがご苦労はありませんでしたか?
アイディアはすぐに出てきました。あと、描きながら、写真じゃなくてイラストっていうのがいいなぁって思いました。
私たちって死ぬのは、なんだか、いつも他人事じゃないですか。でも、近くにありすぎるとつい逃げちゃう。目をそらしちゃうというか。だからリアルすぎず、身近に感じられるイラストがいいなって思いました。
ーー確かにリアルすぎると逃げちゃいたくなりますね。今回、新型コロナウイルスの影響もあってか、死がよりリアルに迫ってきたり、弔いの形も変わっていく気がするんですが、そんな変化はブラジルでもありますか?
そうですね。日本だと、参列者はごく身近な方に限られると思うのですが、ブラジルだと、ちょっと朝一緒にカフェを飲んでいた、とか、月一回BARで顔を合わせていた、みたいな方も参列されるんですね。なので、地元で顔が売れている人だと1000人や、それ以上、ということもあるそうです。
また、服装に関してもブラジルでは、黒い服を着て参列する習慣がないので、仕事から飛んできた!と、作業着の方や、好きな色だから、と真っ赤なTシャツの方も多いです。
真っ黒な列で、しんみり笑っちゃいけない、というお葬式ではなく、近くに座った人やその辺にいる人とわいわい話し、亡くなった方の思い出や笑い話で盛り上がっていることも多いですね。
ただ、今はブラジルは葬儀ができないんです。お別れは身内だけになってますね。
ーーそれはすごい人数ですね!
新型コロナウイルス以前から、ブラジルの葬送も変化してきていて、今までなかった葬儀会館が教会の横にできたりしています。また、火葬の間に生演奏とか、みんなでお別れをした後に鳩をたくさん飛ばしたりとか、すごいセレモニーみたいな感じになってきている部分もあるみたいですね。
(ブラジルのお寺の様子)
ーーブラジルの葬送も色々な変化があるんですね。norycoさん自身、今回トランプのテーマが「死」ということで戸惑ったりは全くされなかったんですか。
そうですね、そういうテーマをもらえたのはうれしかったです。うれしいっていうと語弊があるかもしれませんが。
普段、私たちは「人が死ぬ」とか「殺される」とか映画なんかでよく目にしたり、聞いたりしますよね。重いテーマなはずなのに、なんだか本質は何も伝わってない気がするんです。
ーー本質ですか?
なんていうかな。「死ねや」とか「殺す」とか軽く言える時代はなんか、違うなぁと思うんです。それを言う本人は、本当に死ぬってことを知ってるのかな?感じたことがあるのかな?って。軽く扱いすぎている気がするんです。
勿論、触れるなってことではなくて、取り扱うなら、もっと本当は一人ひとりの体感として、すでに死についての考え方や恐怖とかあるんじゃないのって。
今はなんだか、まるでずっと視聴者みたいな、自分には起こらないことになっている感じがしています。生と死は、切っても切り離せないことって知ってるくせに、なんだか遠くに置きがちな気がするんです。
ーー死に対して、ずっと視聴者ですか⋯⋯。
実は昨年、主人が病気が発覚して、死ぬかもしれないってことがありました。怖くて、怖くて、冷静にはなれない自分に気づいたんです。それまでは、自分は大丈夫だって思ってたんです。慌てない!と。
でも実際は毎日、顔面蒼白でした。自分の死については考えるけど、大事な人の死は考えられていなかった。まさか、自分が、「自分の命をあげるから。主人を助けて!」って考えちゃうなんて思ってもみなかったです。
ーーご主人ともお話されたりしたんですか?
そうですね。どうしたらいいのか不安になって、主人に聞いたら、主人は「その時がきたらそうなるんよ。縁でそうなるんだ」って言ってさらっと。本人はケロっとしていたんです(苦笑)。
ーーそういった現実を目の当たりにしたnorycoさんだからこそ紡がれる言葉があるんだなぁと、改めて感じました。最後に死生観光トランプを応援くださった方や、このインタビューを読んでいる方へメッセージあればお願いします!
現代は、死に限らず、あまりみんなが一つのことに対して、深く踏み込まずに、流されているように感じています。命が消費されちゃう時代の様な気がするんです。
そうならないように、今一度、生まれてきこととか、埋葬されるって一体どういうことなのか、そうしたくてもできない人にどうしたらいいかとか、改めて考えるきっかけになったらこれ以上にうれしいことはありません!!
ーーnorycoさんありがとうございました!norycoさんの作品は下記のページからもみていただけるので是非ご覧ください。かわいい猫ちゃんのイラストにすごく癒されますよ。
noryco(のりこ)
1980年、 愛媛県に生まれる。2006年、縁あってお坊さんの奥さんになり、布教しに行く旦那様とブラジルへ渡る。2017年、単身帰国、初の絵本を刊行。その後、再びブラジルへ。2018年、日伯(ポルトガル語)英語の絵本発売に向けて活動中。現在、野外バザーなどに参加し、お寺の手伝いも。
▷WEBページ
▷twitter noryco@catanoryneco
▷instagram
聞き手:藤井一葉
書き手:藤井智子