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EP22.【關矢光佑#17】

地元が期待する野球小僧
独自のワールドで關矢旋風を巻き起こす

戦いあぐねた優勝シーズン

入ってきた時には僕が一番下だったっす。”

大学卒業後は草野球を嗜んでいた關矢。
はじめのうちは現役さながらのパフォーマンスで他を圧倒していたものの、プレー頻度は週に一回。
必然ながら衰えを感じ始めていた。

「始めた頃は(現役)上がりたてだからバンバン抑えるんすよ、勝手に。でもそれも期間経ってきたらどんどん衰えてきて、どんどん打たれるんすよ。それが悔しくって、上回ろうって思いました。」

負けず嫌いな性格が、野球好きの衝動を駆り立てた。

2022年の冬。
本格的に野球と向き合うことを決意してからはジムにも通い、新天地での活躍を胸に誓う。

年が明け、シーズンも始まりを告げた4月下旬。
シーズン途中に受けたテストを経て、生まれ育った地元で活動する和歌山ウェイブスへと入団した關矢。

しかし空いたブランクの溝はそう簡単には埋められなかった。

「(入って最初の方は)しんどかったですね。1イニング放ったら1失点するし、四球も毎回出すし。試合に出て抑えられるビジョンが見えなかったです。」

一時7.50まで引き上がった防御率。
最終的には3.29まで巻き返したものの、投げたイニングも13 2/3回に甘んじていた。

「ブランクっていうか、ボール触ってなかったから、悔しいとかはあんまなくて。ただ単に自分の力がなかったんだなって思ってました。」

実家(農家)の繁忙期も過ぎた夏の始まり。
授かり続けた無形の教えがようやく芽となり生まれはじめた。

「(シーズンも)最後になればなるほど“やばい、これ悔い残るわ”みたいな。場面場面のことを考えれば良いとこで投げさせてもらってたんで。最後の最後で川原(前監督)さんに教えてもらってきたことができるようになってきました。」

自分の伸び代と可能性に心躍りはじめた反面、信頼を置く恩師の辞任に先への不安が拭えずにいた。

「川原さん辞めるって言ったんで、僕も一回辞めますって言ったんですけど…。シーズン終わって3日間くらい話してました。これからのこと考えたら絶対悔い残るぞみたいな。僕に対して100あるうちのどのレベルで教えてくれてましたか?って聞いたら、まだ10も教えてないわーって言われましたね(笑)。」

頼りにするのは大量のメモと、縋りたくなる一辺倒な語り口調。
不安が残る独り立ちへの挑戦が、新たに幕を上げることとなる。

芽生えたチーム力と年長意識

ウィークポイントを指摘し続けてくれた川原前監督。
160km/h投手を送り出した西村新監督。

弱みの克服強みの研磨に胸が高鳴るのは当然のこと。

「川原さんの教えが原点ていうか、基礎っていうんかな。悪くなったらここにいったら良いっていうのがあって。プラスアルファ、西村さんが来て化学変化が起きるんじゃないかって楽しみがありました。」

今年6月には自己最速の144km/hを計測した關矢。
今シーズンはここまで(9月18日現在)19試合・61 1/3回に登板し、終盤大事な試合での先発起用が目立ってきた。

「川原さんにはダメなポイントをいくつも言われてて。それを一個でも二個でも出さなければ(球速は)出るだろうなって思ってたらほんとに(144)出たんで。夏ぐらいにやっと噛み合ってきましたね。」

今シーズンも中盤戦のこと。
球速こそ伸びてきたものの、辛苦の時期を過ごしていた關矢。
そこでもやはり原点に立ち返り、自分の武器磨きに費やす時間を増やしてきた。

「144出した時は6月で梅の時期真っ只中だったんで、寝てなかったし気持ちに余裕もなかったです。けど自分の武器は何なんだろうって考えた時に、昔から言われてきたのがフォームの割にピュって来るまっすぐ。じゃあそれを磨こうって思いました。」

体の強さとフォームの洗練度ゆえにできる芸当。
さらには自分の強みのみならず、置かれている立場をわきまえている。

「最近になって西村さんの考えがわかってきたんで。先発だからこそ、責任もってやらなきゃいけないっていうのが芽生えてきました。自分が試合作らなきゃいけないって。」

平野と同じく投手陣最年長
今の和歌山ウェイブスを支える2本柱の一角は、先頭に立って戦う勇姿を演じている。

「前半はちょっと迷惑かけたけど、だからこそ今取り返そうって。僕が投げて抑えることによってチームが勝つじゃないですか。チームが勝った方が周りの選手が喜ぶしなって思って。だからあと何試合先発できるかわかんないけど、(目標は)一個でも多く勝つこと。」

人思いな一面を兼ね備えた田辺っ子。
生まれ育った馴染みある土地は皆が活躍を待ち望んでいる。

地元の期待を大いに背負い、無我夢中に自分の道を走り抜ける。

梅と居酒屋と、時々野球

大学4年生の春。
リーグ戦終了とともに学生野球を引退した關矢。

それまで暮らした大阪の部屋を明け渡し、地元に帰ってきたのちは実家の家業に明け暮れた。

昼を畑で梅を拾い。
夜は居酒屋で酒を運ぶ。

“どうせ野球はしたくなるから”

そう思い大学卒業後も企業への就職は考えず、融通の利く親元で働くことを決意。
卒業後もダブルワーク+週末野球の日々は続いた。

案の定草野球とはまるで違った野球をしているのだから面白い。
最初から辞めるなよって話。

そんなユニークに富んだ性格の持ち主。
確かにマウンドでの自己表現は観ていてとても清々しい。

感情むき出しなプレースタイルに心動かされる人は数多い。

伝達する彼の喜怒哀楽は一目で虜になること間違いない。

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