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EP21.【藤本伊吹#22】

深沈とした16歳
大胆不敵な異端のルーキー

現役高校生が挑む異例の道

“全部自分が悪かった。自分のせいだったと思います。”

2024年2月に新設球団である“姫路イーグレッターズ”に入団。
しかし初めて経験した“大人”たちとの野球は想像とかけ離れた場所にあり、2ヶ月も持たずに退団した。

「(大人って)最初は結構きっちりしてるイメージだったんですけど、意外とそうでもなくて。野球があんまり楽しくなかったのもあったかもしれないですけど、なんか嫌やなって。」

2023年、入学と同時に体験に行った高校の野球部は即座に辞め、その年の夏休み明けには学校も退学。
再び燃えた闘志を胸に、本気で目指した独立リーグでの野球も入団して2ヶ月ほどであっさりと退団。

“野球なんかもうええわ”

もう戻ることはないと思っていたグランド
それでもプロ野球選手への夢はそう簡単に途切れなかった。

「“まだやりたいな”って未練があって。選択肢は独立しかなかったです。せっかく通信の高校に通ってたんで、やるなら本気でやろうって。それで兄貴(藤本颯太・現くふうハヤテベンチャーズ静岡)から勧められて和歌山のテストを受けました。」

再び立ち上がることを決めたものの、心に残った蟠り。
思春期真っ只中の現役高校生は葛藤の毎日を過ごしていた。

「和歌山に入るときは正直不安な気持ちもありました。学校とかも辞めてばっかで、辞めぐせがついてたんで。どうせすぐ辞めるんだろうなって、続けていく自信がなかったです。」

しかし短所と長所は表裏一体
彼が持ち合わせる行動力は16歳の域を超えている。

「自分を変えたいなって思いました。やらんかったら何も始まらんなぁと思って。入らなわからんなと思って(入団を)決めました。」

残されていたのは茨の道。
自ら課したハードルは、自己成長への大きな財産だった。

野生味溢れる未完の大器

7月に和歌山ウェイブスへと入団してからはや2ヶ月。
シーズン終了を目前とし、自身の変化を実感している。

「和歌山来てからここでやるしかないなって思いました。もう逃げるのもダサいし、逃げることからやめようって。そしたら勝手に直りました。正直今なら(姫路に戻ったとしても)続けていける自信はあります。」

実家からも遠く離れ、初めて過ごす寮生活は練習するしか許されない。
また、意図せず今年のメンバーには異例の16歳がもう1人いる。

「貫太(橘)が先輩たちの片付けとか替わってて。最初何でやってんの?って思ってたけど、貫太(橘)がやってるから自分もやらないとなって思い始めました。(年上メンバーには)気はめっちゃ遣いますけどそれが社会勉強になってます。」

トントン拍子に成り上がってきた野球人生。
己の内面と向かい合い、思案する時間も自ずと増した。

「イップスになる人とか、めっちゃ考えすぎたらなるって言うじゃないですか。それで考えずに思いっきりやろうって思ってるんですけど、最近それで全然上達してる気がしないんで。」

不器用なほどまで常に全力。
今までは目一杯体を動かすことでしか自分を表現できなかった。

「正直ちっちゃいって言われますけど、思ったより飛距離も飛ばせますし。あんまり力を抜けないっていうか、何も考えず思いっきり気持ちよく振ってるし、ずっと思いっきり投げたいタイプです。」

尖る原石はまだまだ荒い
他の野手陣とも遜色ない、内野からの送球は力強さが光っている。

最年少も相まって、本音を読み取りにくい様子が垣間見える。
しかし見た目のサイズには収まりきらない、それは大きなロマンを胸に描いている。

「ホームランめっちゃ打ちたいです。ホームランバッターって魅力じゃないですか。三振も多いですけど、打席立ったらみんな期待するし。」

独立リーグ入籍後、出場した試合は姫路在籍時のOP戦のみ。
和歌山へ来てから現在(9月14日時点)までも公式戦出場までには至っていない。
それでも声高らかに語った理想は“ホームランバッター”。

さらに壮大なスケールを追い求める青二才は、自分のブランドを見つめ直す。

若いってほんま魅力やなって思います。なんかもっと早く大人になりたいなとか、早く自由になりたいなって思ってたんですけど、野球するには若い方がいいなって思います。」

夢にときめくお年頃。
物怖じしない不動の心と、フレッシュな威勢を織り交ぜて。
野球界の革命児へと高校生が突き進む。

無邪気にハニカム16歳

良く言えば大人びている。
あえて悪く言う必要はないだろう。

それでも蓋を開けてみると、高校生のあどけなさが浮き彫りになる。

noteのサムネ撮影シーン。
笑った表情が上手く作れず、つい“無”になってしまうことに苦戦した。

「上手く笑えないです(笑)。」

そうやって吐いたセリフと共に、こぼす笑顔は格段に良い。
カメラ慣れしていないのもあるだろうが、人前に気恥ずかしさを感じる性分もあるのだろう。

同い年なこともあり、橘ともよく行動を共にしている様子。
2人が並ぶと高校球児感が拭えない。

ぜひ球場にご来場した際には、橘とセットで堪能してほしい。

そこに映る光景では、大人たちに揉み込まれ、歯を食いしばりながらも奮闘する未来のホープが躍動していることだろう。

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