見出し画像

インフラツーリズムの魅力          【第1弾_鴨川ドボク歩き】

 こんにちは、若手パワーアップ小委員会のUです。

 このシリーズでは、「土木」の魅力をインフラツーリズムを通じて紹介していきます。
 「インフラツーリズム」とは、ダム、橋、港、歴史的な施設等のインフラ施設を観光して楽しむことを指します。

 第1弾となる今回は、「京都 鴨川ドボク巡り」をご紹介します。
 9月12日から16日にかけて京都にて土木学会全国大会が開催され、それに合わせて開催されたこのインフラツーリズム企画(詳細はこちら)に参加してきました。案内人は、京都大学教授の高橋良和先生です。

 突然ですが、皆さんは普段の生活で「土木」を感じることはありますでしょうか?
 私たちの身の回りは「土木」に囲まれており、それを再発見し愉しむことができるのが知識ある大人の嗜みです。
 このインフラツーリズムでは、京都の町を歩きながら鴨川・橋梁・マンホール・道路標識・電柱など身近な土木について知って楽しむことができました。
 インフラツーリズムを通じて学んだことをいくつかご紹介します。

1.まっすぐになれなかった今出川通り

 京都は碁盤目のように東西南北へ幹線道路が整備されていますが、もちろん昔から整備されていた訳ではありません。今出川通りは、京都御所の北側を東西にはしる幹線道路です。昭和4年の地図(図1)では今出川通りの姿はありませんが、昭和28年の地図(図2)では今出川通りが完成しています。この道路を真っ直ぐ建設するために、鴨川の東側では住宅地の中を横断して建設されたことが地図から見て取れます。たくさんの住民が立ち退きに協力してくれたのでしょう。 

図1-昭和4年地図
図2-昭和28年地図

ただ、よく見るとわざわざ住宅地の中を通ったのに、少しだけカーブができているところが存在しませんか!(写真1)
 カーブの北側には内閣総理大臣にもなった西園寺公望さんの別邸があり、それを避けるかたちで道路が建設されたとう噂も。噂を信じた住民は怒り心頭で新聞沙汰にもなったそうです。
 何気ない道路のカーブにもドラマが存在するのですね。

写真1-今出川通り


2.景観にこだわった河合橋

 京阪電車出町柳駅付近は、「賀茂川」と「高野川」が合流して「鴨川」となる場所であり、付近は鴨川デルタと呼ばれて多くの人に親しまれているエリアです。その高野川に架かる河合橋は、2022年3月に歩道拡幅工事が完了したそうです。河合橋の歩道部の構造は、下流側の加茂大橋とデザインを合わせるためにブラケット構造としてます。
(ブラケット:壁等に取り付けて突出部を支える横材のこと)

写真2-河合橋
写真3-加茂大橋

 河合橋のブラケット構造をよく見てみると、造りが違うことに気づきませんか(写真4)?ブラケットと橋本体の桁との接続が軽微な箇所が存在します。もちろん、これは手抜き工事ではありません。ブラケットが1/3の数でも歩道の構造として成立するにもかかわらず、敢えてブラケットの数を増やしているそうです。増やした分のブラケットは、いわば「飾り」なのでブラケットが落ちないように橋桁に固定しているだけです。
 ひと手間加えて周囲との景観調和を図るところに、技術者のこだわりを感じます。

写真4-河合橋拡大


3.大原口道標のもうひとつの使い方

 写真5は「大原口道標」と呼ばれる古い石造りの道標です。京都につながる街道の代表的な出入口の総称を「京の七口」と呼び、この大原口も鯖街道につながる代表的な口だそうです。写真の道標は1868年に建てられました。
 道標の下部を見ると1本線と矢印のようなものが刻まれています。どのような意味があるのでしょう。(写真6)

写真5-大原口道標
写真6-大原口道標下部

 土木技術者が京都で思い浮かべる事柄の1つに「琵琶湖疎水」があります。琵琶湖の湖水を京都まで流す水路であり、日本で初めて走った電車は琵琶湖疎水の水力発電所より電力が供給されました。
 大原口道標の1本線と矢印は、この琵琶湖疎水を建設するために使用した高さ基準点が残っているのです!
 私Uは建設会社に勤めていることもあり、測量の基準点には慣れ親しんでおりました。100年以上前の基準点の存在・工事の痕跡に触れることができ興奮しました。

おわりに

 今回は私Uの主観で印象に残った事柄を3つだけ紹介しましたが、他にも発見があり内容の濃いインフラツーリズムでした。案内してくださった高橋先生、ありがとうございました。

 今後もインフラツーリズムの魅力をお伝えしていきます。お楽しみに。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?