“無住集落”に誕生した奇跡の完全無農薬農園【福井県おおい町を発掘!】
前回に引き続き、おおい町の中でも合併前の旧名田庄村エリアを中心に、特に最奥地である名田庄納田終の発掘を行っていきます!
みなさんは無住集落という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
その名の通り、人が住んでいない集落を指します。
つまり、かつては人が住んでいたけど家だけが残っているような場所です。
今回訪れた場所は、無住集落のはずなのに、たくさんの人がその場所で活動し、営みが行なわれていました。
人が住んでいないはずの場所で人を見つけたら、そりゃもう何かを発掘できるはず!
ということで、人が住んでいない場所で人に突撃する、体当たり発掘調査に出発です!
無住集落で発見!立派な茅葺屋根のお家【かやぶき民家『集楽庵』】
ここ名田庄納田終は、旧名田庄村の中でも最も奥地にあり、京都府との境に近い場所にあるのですが、中でも『老左近』という集落は無住集落となっているようです。
が、何やら若者たちが集まって活動している姿が見えたので、「第一村人発見!」と言わんばかりに車から降りて話しかけてみることに。
「ごめんくださーい!
ここで何されているんですかー?」
「今、大学の授業中なんですよ。」
なんとまさかの授業中!!!
福井県立大学の細井公富先生が受け持っている『地域活性化演習』という授業の一環でここを訪れていたそう。
お邪魔してはならないと思いつつ、発掘案件の予感!!!
せっかく話を聞くチャンスなので、大学生たちにあの質問をぶつけてみます!
「この町のオススメ・お気に入りって何ですか?」
・街灯が無いから星がきれいなこと
・福井県立大学から見える小浜湾(小浜市)
・西津の浜(小浜市)
・人が気にかけてくれる所
・GOSHOEN(小浜市)
・伝統が続いている所
・安くて美味しい魚が食べられるところ(小浜市)
・小浜駅の入口がかっこいい(小浜市)
・小浜漁港(小浜市)
・濱の湯(小浜市)
いや、8割小浜!!!!
小浜キャンパスの大学生なので、当然ですが(笑)
次回、小浜の発掘調査のときに訪れてみたいと思います!
大学生の皆さん、ご協力ありがとうございました!
それにしても立派な茅葺屋根のお家です!
せっかくなので、中を見せてもらうことに。
案内してくれたのは、この家の管理をされているNPO法人『森林楽校・森んこ』代表の萩原茂男さん。
この建物は築100年を超えていると伝えられており、20年ほど前までは唯一の集落世帯として高齢者夫婦が住んでいましたが、その後10年程空き家状態でした。
そして2008年に『森んこ』が家主から借り受けて改修工事を行い、現在に至るそうです。
「昔はこの家の屋根裏で蚕が飼われていたんです。
せっかくなので、屋根裏にも上がってみますか?」とご提案いただいたきました。
実は大川隊員は趣味(?)で蚕を育てており、この日も「いつ羽化するか分からないので蚕ちゃん連れてきちゃいましたっ~!」と繭になった蚕を発掘調査に連れて来ていました(笑)
というわけで、ノリノリで蚕の部屋を見学させてもらうことに。
暗い中、率先して屋根裏に昇る大川隊員。
「暗くてよく分かんないけど、何か棚みたいなのが並んでるぞ~!」
(おそらく蚕が飼育されていた蚕棚だと思われます。)
そして、茅葺屋根の裏側もすごい!
職人さんの技が光ります!
茅のいい香りもします!
この屋根は京都の美山町の職人さんが葺いたそう。
茅は1回交換すれば10年以上は持つそうです。
本当に貴重な物を見せて頂きました!
細井先生、県立大学の学生さん、萩原さん、突然の訪問にも関わらず、
発掘調査にご協力いただきありがとうございましたー!!!
かやぶき民家『集楽庵』
福井県大飯郡おおい町名田庄納田終58-5
鹿肉のへしこに鹿肉バーガー!地域問題に食らいつけ!【よざえもんカフェ】
萩原さんから「こっちのカフェも見ていく?」とお誘い頂き、茅葺屋根の古民家のお隣にある『よざえもんカフェ』にも行ってみました。
無住集落とは思えない、きれいでこれまた立派なカフェです!
ここ数年鹿の数が急増しており、農作物の被害が後を絶たないため、少しでもこの問題に関心を持ってもらおうと鹿肉料理を提供しているみたいです。
鹿肉を使った『野鹿バーガー』などを販売しているそうで、鹿肉を使った『へしこ』(米糠をつかった発酵保存食で、福井の伝統料理)作りにも挑戦されています。
ところで萩原さん、「一体何者?」と思い、もう少し詳しくお話を聞いてみることに。
萩原さんは大阪からの移住者で、初めてここを訪れた際、先ほどの茅葺屋根のお家に惚れ込んでしまったことがきっかけで、ここ『老左近』での活動を始めたそうです。
そしてこの無住集落を「夢が充ち、楽しみが集まる里山」にしたいという思いから、2018年に「夢充集楽プロジェクト」を立ち上げ、今では集落すべてを借り切り(!)、京都大学の学生らと里山づくりに挑戦されているんだとか。
このカフェも、萩原さんが最初に訪れたときは倒壊寸前の古民家だったそうで、「何とかしなければ」と修繕に取り掛かり、カフェとして生まれ変わりました。
古民家を買い取るのではなく、敢えて借りている理由は「持ち主の方や、そのご親戚と関わりを持てるから」と素敵なエピソードもお話してくれました。
その他にも、野鹿の滝の整備や市民共同の小水力発電事業など、様々な地域活動をされているそうで、小林局長曰く「森んこは嶺南における、NPO法人の草分け的存在」なんだそうです。
すると.、萩原さんから
「もうここまで来たら、そこにある養鶏場と畑も見ていき!宮本さんっていう変わった農家さんいてはるから!」
と、またもや発掘調査のご提案。
まだまだ発掘は続きます。
よざえもんカフェ
福井県大飯郡おおい町名田庄納田終57-4
※完全予約制
SDGsもびっくり!持続可能な奇跡の完全無農薬農園【宮本自然農園】
先導する萩原さんに言われるがままついて行くと、茂みの中から男性が登場!
(絶対、この方が宮本さん!)
「あの~、養鶏場を見せて頂きたいんですけど...
それはこの近くにあるんですか?」
宮本さん「ああ。いいですよ。こっちです」
再び茂みの中に入っていった宮本さんの後をついて行くと…
宮本さん「ここです」
手作りしたような小さな小屋がありました。
コケコケコケコケ…。
たしかに養鶏場だ!
さらに奥の茂みに進んでいくと…
一見、どこまでが畑でどこからが山なのか境が分かりませんが、よく見ると色んな作物が育てられています!
宮本さんは兵庫県出身で、四国の農業研修所で農業について学び、今は専業農家さんとして、平飼い養鶏と無農薬・鶏ふん堆肥のみの畑作を行っています。
鶏には、くず米や糠、畑の草などを餌として与え、無農薬の畑にはその鶏糞のみを肥料として撒いているそう。
最近、「持続可能でよりよい世界を目指そう!」「SDGs」という言葉をよく耳にしますが、ここで行われている農業は、まさに持続可能性を秘めていると思いませんか?
こういう田舎の僻地にこそ、国際的な問題を解決するヒントが隠されているのかもしれないと思いました。
そして、養鶏場ってニオイが気になったり、無農薬だと周りの畑や田んぼに影響がありそうだったりと、人が住んでいる集落では難しい部分もあるように感じます。
しかしここは無住集落。
人がいないからこそ実現できている、まさに奇跡の農園なのかもしれません。
宮本さん、これまた突然の訪問にも関わらず、丁寧にご案内いただきありがとうございました。
無住集落のはずなのに、そんなことを微塵も感じさせないくらいたくさんの人に出会い、たくさんの発見がありました。
集落すべて借り切っての里山づくりに、完全無農薬の農園。
無住集落なのに…ではなく、無住集落だからこそ!できることがあるんだと知る機会になりました。
勇気を出して学生さんの輪に飛び込んでよかったー!
宮本自然農園
福井県大飯郡おおい町名田庄老左近
~エピローグ~
というわけで、
今日のブログはこれにて終了...
「チャンチャラチャン~♪(有線放送)」
…あれ?
無住集落なのに、17時の有線放送が流れてる?
萩原さん「町の人らが、『無人とは言えまだ集落はあるんやし、こうして色んな人が出入りしてるんやから、有線放送は流さなあかんやろ』って放送用のスピーカーを付けてくれたんやわ」
...泣ける話!!涙
でも、萩原さんの活動を聞いていると、町の人たちからそういう意見が出てくるのもよく分かる気がします。
すると突然、
「ていうかさ...いま夕方の5時じゃん...
なんか…海で夕日見たくない?
…夕日に向かって走り出したくない?」
「...嶺南といえば穏やかな若狭湾とか、海のイメージが強いはずなのに…
なんかオレたち、毎回、山ばっかり行ってるじゃん?…
…いや、山も好きだからいいんだけどさ...
…せっかくここまで来たし、今回のブログの最後...
“海に沈む夕日をバックにした写真”で閉めるのはどうかなと思ってさ…」
と、突如現れた寺井隊長改め、ロマンチスト優介さん。
かつて嶺南に置き忘れた青春を取り戻すため、急遽ハンドルを海の方向へ切って、夕日に向かって車を走らせることに。
旧名田庄村から旧大飯町に抜ける山を越え、谷を越え…
何とか間に合っ...
た?
大島半島に架かる青戸の大橋を望み、穏やかな若狭湾に沈む夕日。
発掘の疲れを夕日が溶かしてくれました。
和田港成海緑地
福井県大飯郡おおい町成海
無住集落で人に出会ったら、魅力発見の予感!
人口が減少している今、老左近のような無住集落は全国各地に存在します。
しかし、ここの集落が他と違うのは、人が住んでいないのに、たくさん人がいるということです。
それは、偶然でも何でもなく、萩原さんという男性の人柄や熱い思いがあるからこそだと、短い時間の滞在でも十分感じ取ることができました。
あの人のためなら何かしたい、力になりたい、そう思わせる熱い人がいる限り、集落というものはどんなに僻地であっても続いていくんだなと思いました。
そして、無住集落に人がいるということは、今回みたいにその場所に魅力があるってことなんですよね。
いきなり無住集落に飛び込むのは難しいかもしれませんが、まずは『よざえもんカフェ』のような、無住集落にあるカフェなどの開かれたスペースを探して行ってみると、何か発見があるかもしれませんよ!